株が下がると絵も売れない。08年9月20日
昨日、生協浮間診療所で母は定期診察を受けた。医師に母の食が細ったことを相談すると、経腸栄養剤-商品名エンシュア・リキッド-を処方してくれた。これは経管でも使われる液体の栄養剤で、必須栄養がバランスよく配合されて吸収も良い。1mlが1kcalと、カロリー計算も簡単だ。味は色々あったので、コーヒー味にしてもらった。帰宅して早速飲ませると、心なしか元気になったように見えた。
栄養剤の問題点はやや通じが良くなることだ。
今日の散歩から帰宅するとすぐに、母は派手に粗相した。それは訪ねて来ていた姉が帰った直後で、携帯で姉を呼び戻したいくらいの惨状だった。散歩から休む間もなく、母の清浄に掃除洗濯と2時間程かかり、昼食は3時近くになった。原因が栄養剤にあるのか、それとも緩下剤が多過ぎたのかはっきりしない。数日様子をみて、飲み方を工夫しよう。
週に1回、姉が訪ねてくれるのは良いが、延々と身の回りの自慢話を続けるので、母は聞き疲れる。私は母が疲れているかどうか表情ですぐに分かるが、姉には分からないようだ。それで、母は姉をすぐに帰してしまう。しかし、こんなこともあるので、黙って家事をさせておくように、母に言っておいた。
朝日朝刊に、「ニューヨーク、クリスティーズで歌麿の傑作が落札されず。」とあった。一般には見過す程の小さな記事だが、私はとても気になる。これは長く活況を呈していたアメリカの美術品市場が低迷し始める序曲だ。当然、日本美術市場も影響を受ける。昨日、版画の菊池氏に電話した時、彼の知っている画廊で、最近、売れた絵5点がキャンセルされたと話していた。キャンセルは株暴落の影響を受けてのことだ。彼は私が「良い時期に個展をした。」と言った。確かに、私の個展が終わってから間もなく、アメリカの金融界に大異変が起き、株が乱高下し始めた。
私の個展の時、来訪した絵描き仲間の多くが、最近、まったく売れないとぼやいていた。対して、モダンアートは活況と言われているが、こちらも大変危うい。これから天国から地獄を味わうモダンアートの新人作家は多いだろう。
私の個展では、これでは到底食えない値段に設定したが、それでも売れない覚悟が必要だと、業界に詳しい人に言われた。今回、少し売れたのは、安いだけでなく7年ぶりのお祝儀の意味もある。
昨日、個展前に買った絵を引き取りにコレクターのOさんが来た。私はその代金で額を揃えられ、大変助かった。忙しくて個展を見られなかったOさんに、戻って来た絵を見せると、案内状に使った40号の大作を買いたいと言う。この大きさの絵を買ってくれる人は滅多にいないので、とても助かった。これで何とか来年2月まで生活出来そうだ。それだけのゆとりがあれば、次の手を打つことができる。
姉の帰り際にそのことを話すと、「何だ。ずーっと食える訳じゃないの。」と甘いことを言った。今時の絵描きは食うだけで大変なのに、その幸運を姉は理解できないようだ。
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