ショートスティを終えた母は無気力に惚けていた。08年9月3日
9月2日
午前中、母がショートスティしている施設へ行った。新河岸川沿いの蒸し暑い道は工場が多く殺風景で、雑多な臭気に滅入る。
母の部屋へ入ると、母は電気も付けず暗い顔で寝ていた。ポータブルトイレの臭気も気になる。我が家ではすぐに始末するが、施設では人手が足りないようだ。
「散歩へ行こう」と誘うが、無気力に「疲れた。」を繰り返す。肌はかさつき、声はかすれて消え入りそうだ。たった2日の間に快活さが消え、別人のように見える。
「寝てばかりいると、一気に寝たっきりになるよ。」と、強く言うと、母は渋々起き上がった。
車椅子で施設を出て川沿いの遊歩道を行くと、母は暑さに疲れた様子。無理はさせられないので、近くの親水公園で休んだが、回りは工場に囲まれ風もなく更に蒸し暑い。すぐに母を施設に戻して、母の弱り具合を案じながら帰宅した。
午後2時に個展会場に行った。初日と違い来客は少ない。
退屈していると若い外国人のアベックが入って来た。「ファンタスティク。ビューティフル。」と褒めるので、貰い物の栗落雁を二人にやった。国を聞くとコロンビアと言う。落雁が美味しいと言っているのは分かるが、他は皆目分からない。困っていると、次に入って来たお客さんが二人の会話に何となく頷いているように見える。「できますか。」と聞くと、彼は直ぐに次々と通訳してくれた。それによると二人は歌舞伎座の帰りで何となく入ったようだ。女の子は20そこそこでとても可愛い。
コロンビア人アベックは私に握手を求めて、嬉しそうに帰って行った。
「自分は長くスペインに赴任していました。懐かしいスペイン語が聞こえたので思わず入ってしまいました。」と、通訳してくれた彼は話した。絵はまったく売れる気配はないが、そのような非日常的な出来事が起きるので銀座は楽しい。
終わり頃、現代美術の評論家が来た。
「現代美術ばかり見ていますので、貴方の作品にはホッとします。」と褒めて帰った。初日も美術評論家が来て褒めて帰った。画廊のKさんに名刺を見せると「有名な方ですよ。」と言っていた。褒め言葉は嬉しいが、実利に繋がりそうにないのが辛い。
9月3日
午前中、母を施設から連れて帰った。
母はすっかり気力を無くし、昼食は食べたくないと言う。それを叱咤激励して食べさせると、少し元気になった。
施設の食事の栄養構成は完璧だが、母の好みに合わず、それで食欲を無くしたようだ。今回、介護施設の限界を見せつけられた思いだ。もし、会期中、母をショートスティさせていたら、一気に寝たっきりになっていたかもしれない。と言っても、今回の施設は劣悪ではなく、どちらかと言うと、評判の良い方だ。しかし、随所に人手不足の弊害が多い。
昼食後、家を出て午後2時に会場に着いた。夕食介助には母と親しいヘルパーのSさんが来ることになっているので安心だ。会場には姉が来ていた。来客は他にいないのでしばらく、母の具合を話した。
姉が帰った後、劇団七曜日時代の女優さんが来た。今は結婚して二人の子持ちだが、容姿は昔と変わらず可愛い。彼女と昔話をしていると客が増え、何とか後半は間が持てた。
終わり頃、イラストと絵をやっているTさんたちと、版画家の菊池氏繋がりのSさんが来たので、4人でビールを飲んだ。銀座で飲むのは久しぶりで、のんびり遊んでいた昔を、ふいに想い出した。
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