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2008年9月30日 (火)

おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。08年9月30日

池袋三越が店を閉じるようだ。池袋へ行けばその前や横を通るが、商品揃えが私の好みとまったく違うので入ることはない。それでも、あの包装紙を好む年寄りが多いので、贈答品を買いに入ることは希にある。
母が元気な頃は、頼まれて医師への謝礼の商品券を三越で買った。商品券は地味な茶封筒に入れて、母の診察の後、そっと手渡した。大病院のベテラン医師は当然のように受け取っていたが、安月給の若手医師は本当に喜んで受け取っていた。
今、母がかかっている赤羽の病院は、何処も謝礼ごときで治療内容が変わったりしない。もっとも、謝礼の効果があったとしても、余命がほんの少し伸びるだけのことだ。老人の健康維持は家族の世話が一番で、医師の関わりは小さい。

それにしても、天下の大三越が次々と店を閉めるとは隔世の感がある。
飛ぶ鳥を落す勢いだった欧米の大銀行や証券会社が次々と潰れているのも驚きだ。国際協調して大胆に公費を注入しているが、一説では、これは世界危機の始まりに過ぎないらしい。
私的には、肩で風切っていた金融マンやトレーダーたちが凋落するのに同情しない。
それらは、平家物語冒頭を思い出させる。
--祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。--
人の世は、千年経ても変わらないようだ。

しかし、危機が自分たちの生活に影響するとなると不安が募る。
先日訪ねた六本木の画廊主は、近くに六本木ヒルズなど業界人が多く住んでいるので、高い絵が良く売れる、と元気が良かった。その時は危機が表面化する寸前で、今行けば悪い話しを聞かされるかもしれない。
個展で売れた絵の代金を10月半ばに振り込むと、画廊から通知が届いた。どんぶり勘定が多く、何ヶ月後に貰えるのか皆目分からない業界にあって、今回の画廊は実にきちんとしている。

母の体調の落ち方が変化した。以前は階段状にガクリと落ちて、そのまま水平飛行を続けてくれた。今は、緩やかに毎日落ちて行く。頭は医師が驚く程しっかりしていたのに、今は日に何度も、「今日は何日。何曜日。目薬はさしたかしら。睡眠薬は飲んだかしら。」と繰り返す。ズボンも私の手伝いがないとはけない。ベットでは掛け布団を自分でかけられない。それで手伝うと、母は更に弱る悪循環だ。
「自分のことは自分で。」と、強く言えば頑張るかもしれない。しかし今は、歳のままに弱らせても良い、と思っている。

今日の散歩の時、母はふいに、
「いろいろ世話してくれて、本当にありがとう。あの世に行ったら、何かしてあげるよ。」と言った。
「死んだらすぐに宝くじ買うから、番号抽選の矢のコースを変えて、3億円当てて欲しいよ。」と答えると、「それは良いね。でも、閻魔さんに叱られないかな。」と、母は笑った。
本人も内心、ゴールが近いと感じているようだ。それが半年先なのか、数年先なのか見当はつかないが、私は静かに逝ってくれることを願っている。

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