水野恵理氏の個展オープニングへガレーのチョコを持って行った。2008年10月18日土曜日
お昼、姉が母に頼まれていた髪留めの飾り輪ゴムを買って来た。
先日、それまで使っていた輪ゴムが切れて、古い買い置きを代わりに使ったが、母は気に入らない。それで毎朝、姉に買って来るように電話していた。
「一度言えば分かるのに、どうして、何度も念を押すのかしら。」
姉は母に輪ゴムを渡しながら文句を言った。
「最近、ネコ並みに脳が萎縮しているから、一つの事で頭が一杯になるようだよ。」
私が言うと、
「何、私がネコになったって言うの。」
母は文句を言った。
「違う、違う。ネコならバカでも可愛いよ。」
言い返すと、
「本当だ。ネコなら可愛いね。そう言えばお隣のレナちゃん、最近惚けちゃって、呼んでも来なくなった。」
姉は母とネコのことを話し始めた。レナちゃんとは姉の住まい近くのアメリカンショートヘアである。母が元気に姉の所へ遊びに行っていた頃、すでに老ネコだったから、もう、17,8歳にはなる。
母は若い頃から髪を後ろで纏めていたので飾り輪ゴムは必需品だ。
古い写真を見ても、額を隠す髪型をしていたことは一度もない。昭和初期にパーマをかけた写真があるが、それでも額は出している。だから、子供の頃からきゅっと髪を後ろで纏めた大柄の女性を見ると、何となく母を連想した。「男はつらいよ」の団子屋のおばちゃんの車つね(三崎千恵子)もその一人だ。映画では、そのスタイルはすでにレトロになっていたが、昭和30年代では、下町のおばちゃんは纏めた髪に割烹着姿でシャキシャキ働いていた。
--上写真は3年前、母92歳の時東京北社会保険病院の眼科の待合室で撮った。外での写真ばかりで、帽子をかぶっていないのはこれだけだ。下写真は75年前の20歳の母。基本的に今と同じ髪型だが、髪の量が多い。--
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午後4時半、姉に母を頼んで、水野恵理氏の個展オープニングパーティーへ出かけた。先月、彼女は忙しい中、私の個展に来てくれた。始め、出席はできそうになかったが、姉が来てくれて義理が果たせ安堵した。
5時過ぎ有楽町着。通り道の有楽町マリオンの2階にあるガレーのレストランでチョコを買った。ガレーのチョコは以前何度か貰っているが、特別に美味しかった記憶はない。しかし、濃いオレンジ色の包装がお洒落で気に入っている。あの温かい色味は、初秋の夕暮れの銀座にピッタリと似合う。
会場は青木画廊。その隣は有名洋食屋。先日、同じ並びの私の個展に来た友人たちが帰りに食事に寄って、不味いと言っていた。どうやら、ガイドブックのお薦め記事を見て行ったようだ。私も若い頃に一度行っているが、それ以来行っていない。多分、口に合わないのは少数派で、一般の人たちの口にはとても合うのだろう。
2階の会場は客で混雑していた。私が青木画廊に足を運ぶのは母が倒れて以来だ。客にはバロル舎の川畑氏やドイツ文学の天沼氏などの旧知の面々も多く、絵を見る間もなく、紙コップのワインを薦められた。
絵は少女をテーマにしている。このテーマは女性である水野氏には適切な選択だった。
母は帽子に薔薇をつけたがる。散歩道で出会う女性達は帽子の薔薇を見て、「まー素敵。」と賛辞を送る。どうやら女性たちは、老いても少女性を抱き続けるもののようだ。だから、水野恵理氏が内なる少女を描こうとしたのは至極自然に思える。男性が少女を描くと、どんなに清純無垢に描いてもインモラルな世界になってしまう。しかし、女性が描く少女は違う。それは私には絶対に描けない、不思議で魅力的な世界だ。
喧噪の会場ではアルコールで上気した客達に、仄かに毒の香りがする少女たちが冷たい視線を送っていた。先のドイツ文学者天沼春樹氏は作品展の副題に「イノセンスな迷宮」と名付けている。私は「少女の無垢な仮面の奥に迷う」と解し、知的で良い副題だと思った。
水野恵理展 -イノセンスの迷宮-
10月18日(土)〜10月31日(金) 会期中無休 但し26日(日)は休廊
平日/11:00am〜7:00pm 日曜/正午〜6:00pm
青木画廊
東京都銀座3-5-16 島田ビル2階
03-3535-6858
二次会は近所の和風の店で飲んだ。久しぶりに少々羽目を外した私は、帰りの電車でいつも通り自己嫌悪に陥った。
11時半、帰宅すると母は布団を蹴飛ばして寝ていた。布団をかけ直すと「寒い」とつぶやいた。これはヤバい。無理に起こして風邪予防に葛根湯を飲ませ、私もすぐに寝た。
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