母は「よっこいしょ。」で元気になった。09年2月11日
最近母は、栄養剤のエンシュア・リキッドを嫌がるようになった。飲まないと、急速に体力が低下するので、無理に飲ませている。
母を見ていると、老人を寝たっきりにし、死なせるのは簡単だ。食欲がなければ無理に食べさせず、歩くのが厭なら、寝たままにしておけば良い。もし、そのように母に好きなようにさせていたら、肝臓ガン手術から退院した7年前に、寝たっきりから1年たらずで死んでいた、と思っている。
母の足腰は今年には入ってから急速に弱った。
色々対策を考え、「よっこいしょ。」と声を出すように母に言った。このかけ声は意外に効果がある。今まで、ベットの寝起きは私が手伝っていたが、今は母の肩に軽く手を当て、「ほら、よっこいしょ。」と励ます。すると母は「よっこいしょ。」と自分で何とか起き上がってくれる。食事のテーブルに着く時も、「よっこいしょ。よっこいしょ。」と、一人でゆっくり歩いて行く。
このかけ声は違った効果もある。食事準備で傍にいなくても、母がどの辺りにいて、大丈夫かどうか、かけ声の感じで容易に分かる。更に良いのは、以前は暗い顔で「疲れた。疲れた。」とぼやいていたのが、陽気なかけ声のおかげで表情が明るくなったことだ。
上写真。緑道公園の桜広場の日射し。冬木立の影が美しい。
下写真。散歩帰り、生協で撮った。
静止画では分かりにくいが、昨日の動画の声を聞くと母の老いがよく分かる。去年の個展前までは、大きな声でハキハキ喋っていたのに、施設に2日預けただけで、急に老いてしまった。
老人は、風邪、肺炎、骨折、親族の死、引っ越し等による環境の変化で、急速に老いが進む。母は施設で食事時間以外は一人に放置され、相当のショックでだったようだ。今も、その時のことを思い出すと身の毛がよだつ、と話す。施設に詳しい人によると、母のように通所で馴染んでいない施設でのショートスティは、一見のお客さん扱いで親身に扱われないことが多い、と話していた。
介護施設は理想的な施設もあれば、劣悪な施設もある。見分け方は、良質な施設は順番待ちが長く、すぐに入所できない。しかし、問題の多い施設は、早く入所できるようだ。
知人の父親は脳梗塞の後遺症が重くなり、直ぐに入れる介護施設に入所させた。やはり問題の多い施設で、1ヶ月で認知症が進み、娘の顔も分からなくなった。
その父親とは反対に、施設の規則正しい生活と栄養バランスの良い食事で元気になる老人も多い。
私と同年齢の知人の85歳の母親は、骨折して寝たっきりになった。それから半年後、誤嚥性肺炎で緊急入院し、医師に余命1ヶ月を宣告された。しかし、母親は病院での看護が良過ぎたのか、短期間で元気になってしまい、息子夫婦は困ってしまった。元気になったと言っても、寝たっきり状態は変わらないからだ。
「ヤブ医者のやつ、すぐに死ぬと言っていたのに、"まだまだ長生きされますよ"、と言いやがった。」
知人は筋違いに怒っていた。結局、息子夫婦は母親が入院中の2ヶ月、大いに悩んだ末、すぐに入れる施設を見つけて退院と同時に入所させた。
老人の家庭が劣悪な場合、かなり酷い施設でも元気になるケースが多い。
最近、知人に会うと、「おっかさんは、とても元気になったよ。鮨を持って行ったら、俺よりも多く食いやがった。」と、明るくすっきりした顔で、母親の様子を話していた。
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