NHKスペシャル「沸騰都市のそれから」に強欲のコラボを見た。09年3月29日
「沸騰都市のそれから」は見応えがあったが、同時に虚しさを覚えた。
失業者が溢れるロンドン風景は、20年前の日本のバブル崩壊後を彷彿させた。にもかかわらず、恐慌を招いた張本人の投資家たちはまったく懲りていない。今も彼らは世の中の幸せなど意に介せず、ひたすら己の利益追求に励んでいる。その象徴として、シンガポールとドバイの強欲がコラボし、新たなバブルを狙おうとしている姿には嫌悪感を覚えた。
「シンガポールは東アジアの資金の流れのハブになり、ドバイはオイルマネーのハブになる。両国が手を携えれば、世界の資金の流れを一手に牛耳ることができる。」
シンガポールから来た投資家は、ドバイの乾いた大地で完成前に廃墟化し始めた巨大ビル群を前に語っていた。
物流ならハブの存在は大きいが、数字が移動するだけの資金の流れにハブが本当に必要だろうか。私はネット上にハブ機能を持った仮想現実の空間があれば、十分に機能を果たすと考える。もし間違っていなかったら、近未来のある日、ドバイもシンガポールも廃墟観光名所になっているかもしれない。
登場した投資家たちは、危機を招いた責任を人ごとのように話し、被害者意識に固まっていた。
対して、イスラム教義に裏付けされた、イスタンブールの服飾メーカーの堅実さには清々しさを覚えた。生産供給は実需に応えるようにあり、実需は堅実な生活から生まれる。その当たり前のことが近代経済学では否定され続けた。イスラム分派のテロや、極端な教義に凝り固まった側面は拒否するが、生産を伴わずに、金が金を生むシステムを否定するイスラム教義はとても正しいかもしれない。
前回、貧困から逞しく縫製工場を起業したダッカの若い経営者が再登場した。今年になって、彼は工場を2倍に拡大しようとしていた。今も旺盛に続く受注はバブル崩壊前の契約によるもので、実需に反映したものではない。しかし、彼にはその現実が理解できない。拡大させた生産力は、世界から受注をかき集めれば対処できると考えている。他を凌駕する技術があれば拡大路線は理解できるが、武器は低賃金だけだ。傷を大きくする前に止めろ、との先輩経営者の忠告に彼は耳を貸さず、そのまま走り出していた。日本なら、小学生でも現状把握ができるのに、ダッカには情報が浸透していない。番組では金だけでなく、情報格差も見せつけられた。
絵描きとしては、出だしのロンドン、クリスティーズのオークションで絵画が落札されない光景が目に焼き付いている。作品はモダンアートだったが、バブル期に我が世の春を謳歌していたモダンアート作家たちの惨状を思うと胸が痛んだ。私は元々売れない具象作家なので、好不況共に関係ないが・・・
今回の恐慌の原因は、実体経済の裏付けがないままに金が金を生む資金運用にある。しかし、投資家たちは今回の事態は単なる運用失敗程度に考えている。そんな投資家や馬鹿な経済学者に、今必要なのは道徳と人生哲学のようだ。もし、その反省がないままに景気が回復すれば、来年の今頃は実需を無視した石油食料等の資源高騰が再燃し、世界の底辺はいつまでも貧しさから離脱できないだろう。
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自然公園で1年ぶりに知人に会った。会わなかった間に、母と同じ歳の母親を1月に亡くしたと彼女は話した。母と比べるとずっと元気だったのに、人の命運は分からない。死への経緯を話す知人の表情に疲労が滲んでいた。
母の体調は不思議なほどに落ち着いている。しかし、母も知人の母親のように、ある日突然に弱りはじめて衰弱死するのだろう。
写真1。
桜並木。満開にはほど遠いが、春の光が美しい。
写真2。
東京北社会保険病院下の公園の花見。芝生には十分なゆとりがあり、何処でも好きな所で花見が出来る。
先行きは分からないが、とにかく絵を描いている。あてもなく働いているのは正直言って辛い。しかし、春の爽やかな光の中を散歩していると、そんな毎日を忘れさせてくれる。
風は冷たいが、桜は二分咲きになった。クスの若葉はキラキラと輝き、柳の新緑は目が覚める程に清々しい。先行きは暗くても、今の一瞬に幸せを感じられるならそれで良い、と思えて来る。
今日も、公園には近隣の老人施設が老人たちを引率して花見に来ていた。
先日は母が去年3日間だけショートスティした施設から来ていた。引率の職員は老人達をあちこち連れ回し、集合写真を撮り、あっという間に帰って行った。施設は入所者に花見を楽しませるためではなく、家族へ見せる証拠写真を撮りに来たようだ。公園の写真を見せられた家族は、多分、思いやりのある良い施設だと思い込むだろう。
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