新人ホームレスの日曜日。09年4月26日
玄関を開くと、雨に洗われた大気の向こうに奥秩父の山塊が青々と見えた。"風光る季節"がピッタリの素晴らしい朝だ。
4日間、病院行きや雨で母の歩行リハビリを休んでいた。赤羽自然観察公園で久しぶりに歩く母を私は車椅子に乗ってゆっくり追った。木が風に揺れ、葉が光る。
私たちを、3,4歳の女の子を連れた若い父親が追い抜いた。
「新緑が気持ちが良いね。」
父親は目を細め、娘に話しかけた。
母は15メートルほど歩いて、「疲れたから止める。」と立ち止まった。「もう少し。」と頑張らせると、更に5メートルほど歩いた。母も自然から元気を貰ったようだ。
炊事棟では、公園手入れボランティアのグループが野草料理の催しをしていた。
「ヨモギや野草がすっかり減ってしまつて。」
顔見知りのボランティアのNさんが、こぼした。
ヨモギや野草は、近所のおばさんたちが、幼い内に抜いて持ち帰るので、激減してしまった。彼女たちに文句を言いたいが、母のリハビリ公園なので、今は目をつぶっている。
写真1。帰り道、緑道公園の桜広場の木漏れ日が美しい。
桐ヶ丘生協に寄り、宇治金アイスを買って緑道公園のベンチで母と食べた。持参した抹茶をかき氷に加えると一段と美味い。
離れたベンチに、30歳半ばの男性がぼんやり座っていた。彼は散歩の行きがけにも、同じベンチにいた。背もたれの後ろに大きな荷物がある。雰囲気から、新人ホームレスのようだ。
「可愛そうね。」
彼の前を通り過ぎてから、母が言った。去年前半まで安定していたのに、今は奈落へ突き落とされた思いだろう。景気の良い頃、無理してでも正社員になっておけば良かった、と後悔しているかもしれない。
しかし、正社員になって神経をすり減らすのも辛い。
大手企業サラリーマンの知人に、高給が羨ましいと言ったことがある。
「サラリーマンの給料は、厭なことの我慢代だよ。」知人は自嘲的に答えていた。
私はサラリーマンの経験はないが、単発の仕事で何度も厭な思いをした。
出版社から受けた仕事で、デザイナーが私以外の絵描きを推薦したことがある。
打ち合わせの後、担当デザイナーはスケジュールを電話すると言ったが、まったく連絡がない。デザイン会社に電話しても会議中で通じない。編集に聞いてもはっきりせず、仕方なくこちらで判断した日に勝手に納品した。それで仕事は無事に成立したが、もし、それが恒常的に続くとしたらかなり辛い。
先の新人ホームレスも、そんな事が厭だったのかもしれない。
赤羽自然観察公園の池。
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