暑くなり、ケフィアヨーグルトは魔法鍋で発酵させている。09年5月20日
夕食で、自家製ケフィアヨーグルトを食べるのが長年の習慣で、今のヨーグルトは20年前、カナダ人から貰ったコーカサス原産の種菌を使ったものを維持している。方法は、最後に150ml程を食べ残し、それを新しい牛乳1000mlに加えて24時間発酵させる。
今日、その残すべき大切な種をうっかり食べてしまった。
20年間、大切に作り続けたヨーグルトは我が家特有の味に変化し、新しい種菌での再現は難しい。しかも、その予備種菌そのもののストックが無い。新しい種菌を取り寄せるまで市販の不味いプレーンヨーグルトで我慢する他ないかと、落胆しながら冷蔵庫を開けると、母の朝食用に取り分けて置いたケフィアヨーグルトがあった。量は100mlと少ないが十分に発酵できる。習慣で無意識に取り分けておいたのが良かった。これで一安心である。
ケフイアヨーグルトは室温20度でも発酵する低温タイプなので、大変使いやすい。
ケフィア菌は多種の乳酸菌集合体に酵母菌が混じった大変丈夫な菌だ。温度条件によっては酵母菌が乳糖を発酵させて炭酸ガスが発生し、すが空いてシュワーとした不思議な炭酸味になる。
低温タイプなので夏場の温度管理は注意が必要だ。時たま温度が上がり過ぎて発酵が早まり、表面が凸凹に固まって乳精が分離することがある。匂いに悪臭がなく、ヨーグルトの甘い香りがするなら食べても問題はない。トルコ辺りでは、わざと分離するまで発酵させて、チーズ状に分離した固形分を食べている。その味は濃厚で私は大好きだ。乳清にも有用な栄養分が多く含まれているので、無駄なく飲んでいる。
発酵し過ぎの時は乳精表面の皮膜だけを薄くすくって捨て、元気に発酵している中心部分を選んで種菌として使い回す。更に、元気な新しい種菌を少し加えることもあるが、そうしなくても問題なく発酵する。
専門家によると乳酸菌と腐敗菌は同じ仲間だ。その仲間の中で食物を美味しく変えるものを、乳酸菌・酵母菌・納豆菌などと呼び、不味く変えるものを腐敗菌と呼んでいる。
腐敗菌と食中毒菌はまったく違う。食中毒菌が増えても見かけは腐敗しているように見えない。食中毒菌は死に至らせるような強力な毒素を出して食中毒を起こすが、腐敗菌はそのような毒素は作らない。
腐敗菌はとても強い菌で、食中毒菌の繁殖を抑える働きがある。だから、悪臭はなって、見るからに腐っていても食中毒菌は含まれていない。
世間には腐ったものを食べても平気だと豪語する者がいるが、それは毒素が含まれていないからで当然のことだ。ただし、腐っていたら口が曲がる程に不味く、とても試す気にはなれないが・・・
種菌は、以前は赤羽や池袋のチーズコーナーで簡単に手に入ったが、最近は売っていないことが多い。それで一度だけ、インターネットで取り寄せた。しかし、1回分300円と高く、それっきり止めた。種菌は短い期間なら常温で保管できるが、原則、冷蔵庫に保管して置いたが良い。
夏場に、時折追加する種菌はケフィア生菌サプリメントのカプセル中身を代用する。これは6カプセルほどで十分で、費用は60円と格安。生きたケフィアと酵母菌が交ざっていて、ヨーグルト用種菌と同様に美味く仕上がる。ただし、常温保管しておいたカプセルは増殖力が弱っているので、冷蔵保管してある新鮮な種菌を求めて使うのが確実だ。私の経験では、1年近く常温保管したカプセルの種菌では上手く発酵しなかった。
もし、正式なヨーグルト用のケフィアの種菌が手に入った場合、説明書に1スティックを1回毎に使用とある。しかし、温度管理をきちんとすれば使い回しても劣化することはない。我が家のヨーグルトは20年間、食べ残した150mlを種菌に使い回している。それでも、とても美味く仕上がる。
ヨーグルトはぬかみそと同じで、長く使い続けると周りの環境の乳酸菌が加わって、その家特有の味に変化する。ちなみにコーカサスなどの本場には、自然の木の枝で牛乳をかき混ぜ、自然の乳酸菌を利用してヨーグルトを作る方法がある。その仕組みは、地中に普通にいる乳酸菌を蟻が体につけてその木の枝へ運び、その菌を人が利用するのである。同様に、日本の地中にも特有の乳酸菌が無数にいて、それが我が家のヨーグルトに加わって特有の味になった。
先にも書いたが、難しいのは夏の温度管理だ。気温が高いと発酵が進み過ぎ、雑菌が繁殖することがある。私は夏場は、魔法鍋に保冷剤と一緒に仕込み、適温の20度辺りを保つ。もう一つの方法は、12時間ほどで十分に発酵するので、そこで冷蔵庫へ入れて発酵を止めると良い。
発酵が進むと表面が凸凹に固まり、透明な乳精が分離する。その場合、表面の皮膜には稀に、雑菌が繁殖して味が悪くなっている場合があるので、皮膜だけ薄くすくって捨てる。温度管理が正しいと、絹ごし豆腐みたいに滑らかな表面のヨーグルトが出来る。その形状のヨーグルトは甘い香りがして実に美味い。
写真は美味くできたヨーグルト。スプーンのすくった跡が崩れていない。
ヨーグルトが発酵する間は、絶対にかき混ぜたり揺らしてはならない。かき混ぜると固まらなくなる。それを守っても固まらない時は牛乳の質に問題がある。
私の経験では、大手乳業メーカーの牛乳にそのようなものが多い。もしかすると、原料を何かで水増し加工しているのかもしれない。むしろ、安い中小メーカーの牛乳の方が美味しいヨーグルトができる。どのメーカーでも、成分無調整の表示があったら問題なく固まる。種ヨーグルトの量が多すぎても固まらないので、種ヨーグルトの量は牛乳の2割以下にとどめる。
ヨーグルト用のケフィア種菌説明書には、牛乳は加熱し冷まして使えとある。しかし、TV番組でブルガリア人がパック牛乳をそのまま使っているのを見てから、私も過熱せずにそのまま使うようになった。結果は、加熱して冷ました牛乳より、パック牛乳そのままの方が断然美味しくできた。日本のパック牛乳の殺菌基準は厳しく、加熱する必要はなかった。乳酸菌自体、自然界では強い菌で、他の雑菌の繁殖を抑える。
ちなみに、フランスのナチュラルチーズは生乳を使う。以前、フランスで食中毒事件があり、過熱して使う製法へ変えるように食品衛生法が変えられた。しかし、生乳に微量に含まれている様々な菌が死滅して、伝統的な味が失われた。その後、製造業者の猛抗議を受け、厳重な品質管理のもとに生乳の使用が認められた。さすがに食の国である。市販品のパック牛乳を過熱せずに醗酵させたヨーグルが美味しいのも同じような理由があるのかもしれない。
使用する容器は乾燥させて使う。もし濡れていたら、必ず乾いたキッチンタオルなどで拭いて乾燥させる。それで雑菌の混入を防ぎ上手く発酵する。しかし、手術道具を滅菌するような厳重な措置は必要ない。乳酸菌は条件が揃えば頑強な菌で、僅かな雑菌などは簡単に駆逐してしまう。
手作りにこだわるのは安いだけでなく、抜群に美味しいからだ。時たま、評判の市販高級品を食べてみるが、どれもがっかりするくらい不味い。
以前、知人が長野の料理研究家が作った評判のケフィアヨーグルトを土産にくれたことがある。早速、食べてみると、赤ちゃんのヘドみたいにドロリとして糸を引き、すえた悪臭があって不味かった。
「帰りの電車で、温度を上げ過ぎたのだろう」
知人に言うと、向こうで食べたのもその味で、念のため保冷パックに入れて来たと言う。知人は有名料理研究家の名に幻惑されたようだ。
手作りケフィアヨーグルトに技術は不要だ。温度管理と清潔さを守れば、誰でも簡単に美味くできる。参考に・・・ヨーグルトを紙ナフキンで包んで液体の乳清を自然に滴らせて落として、緩い固形分だけにしたものは大変美味しい。乳清はホエーとも呼ばれ、良質のタンパク質を含んでいるので無駄無く飲用にしている。
夏場、魔法鍋にセットしたところ。鍋との間に保冷剤を適量入れる。
中の焼けこげがある蓋付きステンレス容器にケフィアヨーグルトは仕込んである。焼けこげは毎回、ガス火で軽く加熱乾燥させているいるので、長年のうちに付いた。魔法鍋、ステンレス容器共に25年前から使っているが、どこも痛んでいない。床においた内蓋上の小さなものは温度計。
室温12度の低温でも大変美味しく醗酵する。低温熟成の酒があるがそれと同じかもしれない。ただし、24時間では不十分で、35時間くらい必要だ。早く醗酵させたい時は種菌を多めの2割程に増やすと良い。私は冬場は、牛乳をぬるく温め、ヨーグルト容器の回りに30度程のぬるま湯を入れて発酵させている。
反対に暑い夏場は早く醗酵するので、12時間程で冷蔵庫に入れ醗酵を抑える。目安は絹ごし豆腐のような滑らかさだ。
--魔法鍋とは、
寸胴のオールステンレス製の魔法瓶構造の保温調理鍋のことだ。使い方は、内鍋に具材と出汁を入れて加熱し、それを保温容器へ戻して放置すると煮上がる。これは、長時間弱火で煮るシチューなどに向いている。火を使うのは過熱時だけで、仕込んだまま寝れば朝には完成している。これは一人暮らしには、とても安全で省エネの優れた鍋だ。私の鍋は発売と同時に買ったが、今も問題なく使える。
両親の出身、北九州の正月料理にガメ煮がある。これは里芋等が煮崩れするので、火の加減が面倒だ。しかし、この鍋を使うと、まつたく素材を煮崩さずに柔らかく煮上げることができる。
96歳の母は副食を残すようになった。不足する蛋白質は手作りケフィアヨーグルトで補っている。母はヨーグルトに乳酸菌製剤のラックビーをかけて食べる。ラックビーはほの甘い白い顆粒で、ヨーグルトの邪魔にはならない。
「ラックビーの色が変だよ。」
夕食を食べていた母が呼んだ。見ると、ラックビーではなく葛根湯がかかっている。間違えないように離して置いておいたのに、デザインの違う葛根湯を手にしてしまったようだ。
「なんで、こんな簡単なことを間違える。」
一応、強く言ったが、母はまったく気にしていない。たとえ気にしてくれても、ネコ並みにすぐに忘れてしまう。もっとも、この物忘れの良さが、母を明るくしている。もし、母の立場で頭がしっかりしていたら、生きているのが厭になるだろう。
葛根湯をトッピングしたヨーグルトは、新型インフルエンザ予防に食べてもらった。袋に残った半分は私が飲んだ。
今日は東京北社会保険病院眼科へ、母の定期診察に行った。新型インフルエンザの影響で、ものものしい雰囲気かと思ったが、いつもと変わらず、マスクをしている人も殆どいない。違いは、玄関脇に緊急用の受診テントが建っていたくらいだ。
不要不急の患者が病院を敬遠したせいか、待合室はいつもより空いていた。おかげて、待ち時間なしで母は受診できた。
帰りは駅高架下のアルカードでお昼用の買い物をした。スーパーも空いている。それでも用心して、母を外で待たせ、買い物を短時間で済ませて帰った。
今日、いよいよ東京でも、女子高生の発症が確認された。
新型の発症は高校生が多い。大阪の高校生の場合、家で激しく咳をしていたのに、看病していた母親は発症せず、敬遠していた妹が発症した。米国発表では、年長者の持つ免疫が新型にも有効らしい。
無理さえしなければ、大人は新型を怖がることはない。引いたと思ったら、さっさと休むことだ。
GDPが戦後最悪とのニュース。相変わらず、マスコミはマイナス思考で恐怖をあおるばかり。1〜3月の最悪期を何故年率に換算して、悪く発表する必要があるのか理解できない。世間は馬鹿なマスコミに教えてもらわなくても、景気の悪化も回復も肌で感じ、冷静に対処している。現に、株価は昨日今日と続伸した。
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