寝たっきり老親の介護をする男達を見て、予防医学の大切さを。09年5月30日
散歩の途中、緑道公園の雨に洗われたジューンベリーを食べた。
たわわに実り、少し手を伸せば簡単に摘める。
酸味の少ないブルーベリーのような甘い味。ただ小粒の種が多く、人によってはその口触りを嫌う。
散歩で一緒になったお爺さんは、種が入歯に入って痛いと言っていた。
アメリカではそのまま食べるより、ジャムにするのが一般的。この木だけでバケツ数杯は摘めそうだ。
このところ毎晩、母は寝付くまで何度もブザーで呼んで聞く。
「睡眠薬は飲んだかしら。」
「夕飯は食べたかな。」
「目薬をさし忘れていない。」
どれも大切なことで、私が忘れるはずがない。しかし、説明しても母は納得しない。毎晩の不毛なやり取りは母の睡眠儀式のようなものだ。
昼間の母の頭はしっかりしている。
寝る前に、記憶に確信を持てなくなるのは、睡眠導入剤レンドルミンの作用のようだ。母は10年以上レンドルミンを続け、今は用量2倍の0.5mg服用しないと眠れない。
医師が慎重に肝機能等をチェックしているので2倍量でも心配はない。以前、ハルシオンやドラールなど他の睡眠薬を試したが、幻覚や記憶の欠落が起き、仕方なくレンドルミンに戻った。高齢の母には数年先の副作用より、今の快適さが大切だと思っている。
「親の介護をしている男の人が出ているよ。」
先日、民放を見ていた母が私を呼んだ。
3月、その番組担当者から私に取材打診があった。電話でやり取りしている内に、私のケースは番組意図から外れていると気づき、取材はないと確信した。
「取材が決まりましたら、後日、ご連絡します。」
女性担当者はそう言って電話を切った。取材対象は、担当者の個人ネットワークで選ばれる。私への打診は、関係があった出版社を通じてだった。
番組中、脳梗塞で寝たっきりの老母の世話をしていたのは55歳の独り身男性。彼は介護と仕事が両立出来ず、早期退社して介護に専念していた。しかし、収入が途絶えた生活は厳しく、気の毒な状況だった。マスコミが取り上げる男の介護現場は殆どこのケースだ。
昔、私が母の世話を始めた頃、絶対にこのケースに陥らないように、次の3項目を厳守した。
*寝たっきり防止に、血管系の病気や骨粗鬆症にさせない。
*そのために、食事と運動に気を配り、体重管理と病気早期発見に努める。
*惚け防止に、好奇心を旺盛に、手芸などに専念させる。
3番目は問題なかったが、1,2番については、母は偏食で運動嫌いだったので苦労した。それでも、早め早めに手を打ったおかげで、何とか母は96歳を迎えられそうだ。それができたのは、私が根っからの病気オタクだったからだ。
「正喜だからできたことで、自分たちだったら、かあちゃんは10年前に死んでいた。」
姉兄たちも私を評価している。
しかし、マスコミは違う。不幸な介護現場だけをクローズアップして、それを防いだ成功例には目をつぶる。
「このような気の毒な人たちを、国は放っておいて良いものだろうか。」
この種の番組の締めの言葉だ。
頑張り努力しても、病に倒れる不幸な人はいる。そのような人は行政がきめ細かく救わなければならない。しかし、多くの寝たっきりの人は自助努力で防ぐことができる。もし、公私の努力で、寝たっきりを1割り減らせたら、医療介護予算にゆとりが生まれ、病院は充実し、特養は増え、ヘルパー給与は大幅アップされ、介護に苦しむ人は助けられる。
その合理的な考えに、一部の社会学者や野党政治家は猛反発する。
「それは個人に責任を押し付けるものだ。経緯に関係なく、弱者は救わなければならない。」
その考えは正しい。しかし、病に倒れる経緯が曲解され、結果的に予防医学の弊害になっている。
倒れてからのリハビリや介護より、健康維持への努力の方がはるかに容易で、倒れた本人も介護側も楽なことを知って欲しい。公による教育と手助けは必要だが、健康管理は個人の問題で、個人の自覚がなければ達成できない。
しかし、介護や生活への行政の援助は、自助努力する者に冷たく怠惰な者に厚い。それがもう一方の現実だ。
下写真。赤羽自然観察公園の空き地。自然触れ合い館が作られる予定。母はこの何もない広さが好きだ。雨上がりの水たまりに車椅子を置いて撮った。背景左は豪華な関東財務局官舎。大変丁寧な作りで、大地震にも耐えられそうだ。しかし、木っ端役人たちが生き残っても、日本の役には立ちそうにない。
右手は民間用の簡素な公団住宅。
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