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2009年7月17日 (金)

大雪山遭難におけるグループ登山の問題点。09年7月17日

昔はよく山登りをした。小さい頃から走るのが好きで自然に心肺が強くなり、3日行程を1日で踏破するような強行登山をしていた。

グループ登山はしなかった。単独行の理由は、グループ登山では一番体力の弱いメンバーに合わせなければならないからだ。更に、メンバーそれぞれが仕事などの事情を抱えているので、登山計画の途中変更が許されない。その点、単独行なら、天候や自分の体調に従って予定を自在に変えられた。

大雪山系で、昨日から今朝にかけて60代男女10人が遭難死した。原因は上記のグループ登山の問題点とほぼ一致する。体力の落ちたメンバーをサポートするためにグループは分散し、安全策が不十分になった。引率のガイドは登山中止をすべき事態なのに、帰りの飛行機等、旅程全体に影響するので登山中止ができなかった。今回の遭難はグループ登山の問題点を含んでいる。旅行会社が一般から募集したメンバーで、同程度体力のメンバーを揃えられなかったことも危険を招いた。

高山で雨に下着まで濡れ強風に晒されると、体力低下は厳冬期より厳しい。粉雪なら下着まで濡らすことはないが、雨に濡れて冷えると力が萎え、たちまち歩けなくなる。それは高性能の雨具で防げたが、遭難者全員は簡易雨具で下着まで濡らし、乾いた服と着替えた形跡もなかった。それは企画者が着替えの入った荷を目的地に先に送ってしまっていたからだ。

もし、個人装備が完全だったら、全員命を落とさずに済んだ。この遭難は、メンバーが企画者に頼り過ぎたことも大きな一因だ。極限状態では、自分の命は自分で守るほかないと銘記すべきだ。

悪天候の場合、即刻引き返すか、非難小屋に避難するか、簡易テントに潜り込み、乾いた衣服に着替え、天候回復を待つのが正しい対処だ。それでも前進しなければならない場合は、どんなに苦しくても休まずグイグイ歩き続けて体温低下を避けるべきだ。早足で歩き続ければ身体の発熱で寒さに耐えられる。今回も、そのように無事踏破した登山者は多くいた。ベテランガイド1人が亡くなっていたが、弱ったメンバーに付き添って動かなかったために体力低下を招いたのだろう。

今回の遭難で、大雪山系に中高年が列をなして押し寄せている現状に驚いた。昔の北海道の山はベテランと大学山岳部の世界だった。

遭難を聞きながら、1970年の今頃、福岡大ワンゲル部パーティーがヒグマに襲撃された事件を思い出した。福岡大パーティー5人は日高山系の芽室岳(1754m)からペテガリ岳(1736m)縦走中に若いヒグマに襲われて3人が死んだ。たまたま現場に居合わせた他大山岳部メンバーに友人がいて、体験した凄惨な事件を詳細に聞いた。

その時、事件現場カムイエクウチカウシ山(1979m)の沢筋には時間差があるが、福岡大以外に鳥取大、北海学園大、友人が属していた九州の医科歯科大の4パーティーがいた。

友人のパーティーもヒグマに遭遇した。
逃げて行く途中、彼は間近に迫ったヒグマの獣臭を後年まで明瞭に覚えていた。その時、ヒグマの目がレモンくらいに大きく見えた、と話していたが、それほどに恐怖が強かったのだろう。彼は今も、パンダを見ても恐怖が蘇ると話していた。

友人たちは命からがら、北海学園大のキャンプに辿り着いた。友人たちはヒグマに慣れている地元パーティーに出会い安堵した。しかし、北海学園大パーティーはヒグマ遭遇を聞くと青ざめ、キャンプ地で釣り上げていた大量のイワナをヒグマが近寄るからと沢へ捨てた。それを見て、友人達は事態の深刻さに恐怖が増した。

その夜、2パーティーは合流し大きな焚き火をして過ごした。しかし、ヒグマは恐れることなく現われ、テントの食品を漁った。大声で威嚇して追い払おうとしたが効果なく、焚き火も平気だった。翌朝、友人たちは命からがら下山した。

ヒグマはその直後に凶暴化し、福岡大を襲うことになる
少し遅れて入山した福岡大はカムイエクウチカウシ山(1979m)登頂にこだわり留まっていた。その僅かな時間差が生死を分けた。更に悪いことに、福岡大パーティーはヒグマが奪った食品を取り戻していた。人から奪った食品でも、ヒグマにしてみれば自分で得た獲物だ。ヒグマは自分の獲物を奪われたと襲い始めた。

そから2日間に5人はバラバラに散り、内3人が殺された。
ヒグマは人を食べようと襲った訳ではない。味をしめていた、殺された学生の胃袋に残っていたインスタントラーメンなどが目的だった。

事件直後、地元猟友会が凶暴なヒグマを射殺してみると、貧弱な4歳のメスだった。それでも、焚き火にも威嚇の物音にもまったく動ぜず、20人程の若者たちを恐怖で震え上がらせた。

始めにヒグマに遭遇した時、ロッククライミングが得意な友人は岩場に登って逃れた。しかし、ヒグマは垂直に近い岩場を軽々と登って彼に追って来た。貧弱なメスヒグマでも、その破壊力と運動能力はとてつもなく猛々しい。もし、襲撃したのが大型のオスヒグマであったら、前腕の力は牛馬の首を一撃で折ってしまうほどに凄まじい。

今なら熊撃退に有効な唐辛子チンキスプレーがある。
昔の狩猟民のアイヌは大木を間にして丸太で戦ったが、現代人には絶対に無理な防御方法だ。

昨日の遭難地大雪山も、ヒグマの濃密な棲息域だ。
昔、ハイヒール姿の女性観光客がのんびり散策する遊歩道傍らの茂みに、親子連れのヒグマが潜んでいる映像を見たことがある。大部分のヒグマはそのように息をひそめて人を避けている。

しかし、人の持ち込んだ食品を知ったヒグマは、大胆に人に近づくようになる。福岡大パーティーを襲ったヒグマも、登山者の持ち込んだ食品に味をしめ事件を招いた。

今回の大雪山の遭難報道を聞きながら、次にヒグマ襲撃がなければ良いのだが、と危惧した。野生動物が人を襲う原因は常に人間側のルール違反にある。

Koji小次郎くん。
お腹を撫でろと熱い舗道の上にゴロンとなった。
写っている靴は車椅子の母のつま先。

彼は日本犬とセパードのミックスで、両方の優れた素質を受け継いでいる。
先日、主人のKさんが外出のためトレーナーに散歩を任せた時、彼は頑として動こうとしない。
「今日は、トレーナーのお姉さんと散歩をしなさい。」と、Kさんが出がけに言い聞かせなかったことが原因だ。彼は日本犬の頑固さで、絶対に動こうとしない。
困り果てたトレーナーから事情を聞いて、Kさんは携帯を小次郎君の耳にあててもらった。
「言うことを聞いて、散歩させてもらいなさい。」
Kさんが話しかけると、彼は素直に散歩へ従った。
その話を聞きながら、私の母より小次郎くんの方が利口だと思った。

Ma_3

Ma_4

Ma_5

Goof

Mas

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