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2009年7月26日 (日)

最期よければ総て良し。09年7月26日

久しぶりに好天。朝から気温が上がり、母は気怠そうにしていた。

日曜朝、母は起き抜けに週一回の骨粗鬆症治療フォサマックを服用する。この薬は破骨細胞に特異的に作用して骨吸収を強力に抑制する。現在、国際宇宙ステーションに滞在中の若田光一さんもこの薬を服用して、無重力による骨粗鬆症を予防している。服用した薬が食道に逆流すると炎症を起こすので、服用後30分以上は横になってはならない。更に水以外のものを摂ると吸収を著しく悪くする。

それで、朝食はいつもより30分以上遅れた。
朝食に母を呼ぶと、「疲れた。」をぶやきながら、ノロノロとテーブルへ就いた。数年前から食事量は減っているが、このところの暑さで更に減った。必要最小限を叱咤激励しながら食べさせると、母は疲れてしまいベットに横になった。

「疲れたから、今日はこのまま寝ていたい。」
散歩の準備を終え、母を呼びに行くと、消え入りそうな小声で言った。
「寝ていても、疲れは取れない。散歩へ出よう。車椅子で死ねたら本望だろう。」
そう言うと、「そうだね。」と母はソロソロと玄関へ歩いて行った。
病気なら休ませないと急速に悪化する。しかし、母の不調は高齢のせいで、休ませると更に悪化し、寝たっきりになってしまう。

外は風が強い。今日のような乾いた風は霧吹きの効きがよい。熱中症予防に、母の帽子と首筋にたっぷりと霧吹きした。
「冷たくて気持ちが良い。」
向かい風に母は笑顔になった。

住まいに冷房はない。余裕ができても冷房は入れない主義だ。
室温と外気の差がないので、母は猛暑の散歩も何とか耐えられる。
住まいは古い公団で、玄関とベランダが外に面している。このタイプは夜は寒いくらいに風の抜けが良い。住んでいる13階は砂埃もなく蚊もいない。綿埃くらいなら風が外へ吹き飛ばしてくれるので掃除の必要もない。

いつものように、御諏訪神社の階段下へ母の車椅子を止め、折りたたみ日傘を広げていると、青年が声をかけた。
「お手伝いしましょうか。」
青年は母を境内まで連れて行くのを手伝うと言う。丁重にお断りすると、青年は先に階段を上って行った。青年に遅れてお詣りした私が戻って来ると、母が言った。
「さっきの方が通り過ぎたので、お礼を言ったら嬉しそうにしていたよ。」
母が礼を言ってくれて気持ちが軽くなった。若者の善意を断るのはいつも心苦しい。
「無理してでも出かけると、良いことがあるだろう。」
そう言うと、母は深く頷いた。母だけでなく私自身も人の情けが身に染みた。

久しぶりの強い夏日射しだが、緑道公園は両側から樹木が覆い涼しかった。
赤羽自然観察公園は木々の緑が風にきらめきながら揺れていた。木陰の舗道を、母はウグイスカグラからハナイカダまで20メートルほどを歩いた。今日は歩けなくても良いと思っていたので安堵した。

「疲れた。」と、母が力なくつぶやく都度、いよいよ死期が近いかと思ってしまう。しかし、無理に散歩へ連れ出すと生き返る。母にも私にも覚悟ができているので、こんな無理ができる。もし、今日のような眩しい陽光の下、自然に包まれて最期を迎えられるなら最高に素晴らしい人生だ。最期よければ総て良し。

Haha緑道公園。
元気がないので赤い服を着せた。
散歩へ出ると見違えるように明るくなった。

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