戻って来た夏日射しに海を感じる。09年8月16日
御諏訪神社階段下に母を待たせている間、日射しが強いので折りたたみ傘を使わせた。その時は気づかなかったが、写真に坂道を登って行く黒塗りの車が写っていた。原画を拡大してみると、運転手はワイシャツに白手袋。どうやら霊柩車のようだ。
「霊柩車とは、縁起がいいね。」
写真を見せると、母は喜んでいた。何故かは分からないが、霊柩車とすれ違うと良いことが起きると、私たちは信じている。
車とは逆方向、この坂を下って浮間橋を渡り、中山道を横切って荒川土手沿いに真っすぐ行くと戸田斎場。このまま坂を登ると桜並木で、左手に東京北社会保険病院。これは火葬帰りの空車か、病院へ遺体を迎えに行く空車か、どちらかだろう。
最近、昔の宮型霊柩車をまったく見かけなくなった。作っていた職人さんたちは仕事をなくして大変だろう。使わなくなった宮型霊柩車はモンゴル辺りに輸出されている。あちらは同じ仏教のラマ教で、宗教上問題ない。使われなくなった理由は、宮型は霊柩車と一目で分かるので、斎場周辺の住民に配慮してらしい。また、宗派が限定されるのも敬遠される理由の一つだ。
昨日今日は湿度が低く、殆ど汗をかかなかった。カラリとした暑さは心地良い。先日までの湿潤な気候は苦手だ。50を過ぎた辺りから手足の汗が少なくなり、それを補うように胴体の発汗が増した。湿度が高いと、シャツが絞れるほどに汗をかく。対策として、手足にたっぷりと霧吹きをして散歩に出ているが、とても追いつかない。
散歩道で霧吹きの水を補給しようとしたら張り紙がしてあった。「断じて許せぬ。」との張り主の怒りが見えるのが可笑しい。
「蛇口ヲ上ニムケタラ、マタ、モトニモドセ。バカモノヘ。」
この文面と書体はどう見ても老人のものだ。テープでしっかり止めてある様子では、完全主義の性格のようだ。蛇口が上に向いていることを、これほど怒る人は珍しい。世間には色んな人がいる。経緯を推察するに、その人が蛇口を開けたら水が吹き上げ、顔や服が濡れたのだろう。
夏日射しが戻った途端、赤羽自然観察公園は閑散としてきた。今日は日曜なのに、数組の親子連れと、家族バーベキューを見かけただけだった。
しかし、確実に秋は近い。桜並木に枯れ葉が舞い、木漏れ日が増した。いつもより10日ほど早くススキが穂を出し始めた。上京した46年前の東京も、今年のように秋の訪れが早かった。8月半ばを過ぎると、夜は涼しく毛布をかけて寝ていた。9月一杯は泳いでいた郷里宮崎との違いに驚いた。
公園一角にアスファルト張りの広場がある。照り返しが強いその広場を母は好きだ。子供の頃の久留米荘島小学校の運動場に似ていると言う。私は、日南市油津港の揚げ場を思い出す。揚げ場とは岸壁脇のコンクリートの広場で漁船が横付けして魚を荷揚げする場所だ。海と魚と機械油の臭いがして、岸壁に打ち付ける波音が聞こえた。その所為か、広場傍らの民家の向こうに海を感じることがある。この眩しい光に海を感じる感覚は一生抜けそうにない。
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