敗北的海外進出と空洞化した国内の高齢化、それでも日本は生き残る。09年9月13日
住まい下の新河岸川を空の土砂運搬船がタグボートに曵かれて遡って行く。上流で浚渫をしているようだ。帰りの土砂を山積みにした運搬船は、船端すれすれまで水に沈んで、大波を立てながら下って行く。それは見とれてしまうほどにダイナミックだ。
昨夜のNHKスペシャル「金融危機1年、世界はどう変わったか。」は救いのない現状を描いていた。アメリカが世界の金融センターから、ドルが基軸通貨から一歩後退するのは間違いないようだ。
アメリカの凋落は日本の凋落を意味する。中国など新興国を貿易相手に変えても、求められる低価格製品は日本の不得意分野だ。それでも低価格に適応する他生き残る道はなく、国内に留まれば衰退の道を歩くことになる。この状況では、多くの製造業が核心技術の流出覚悟で中国へ移転し、更に空洞化が進行しそうだ。
それについて、中国進出した金型製造業者の顛末を思い出す。その職人から叩き上げの経営者は独自技術で売り上げを伸ばして来た。しかし、後継者難と昨今の低価格路線について行けず、やむなく中国進出した。老職人は優秀な中国人若者を雇い、金型技術総てを余す所なく教えて一人前にした。
やっと若者が主力になって働いてくれると安堵した矢先、彼は突然会社に出社しなくなった。彼はすぐに目と鼻の先に新工場を作り、安い価格で賓客を次々と奪って行った。
その顛末に対し、経営者の老職人は、「自分の技術が残るからそれでもいい。」と淡々と語っていた。これは特殊な事例ではなく、中国ではありふれたことだ。
伝統的な中国人は儒教の影響で礼儀を重んじていた。しかし、孔孟の思想を旧弊と教え込まれた新中国の若者たちはドライだ。そのような国に進出すれば上記の顛末のような大変なことを抱え込む。中国に進出すれば、5,6年を待たず進出企業の核心技術は流出する。その僅かな期間に、日本企業は生き延びる体力をつけ、更に革新的な技術を開発する他、生き残る道はない。
中国の知的所有権軽視は諸刃の刃だ。発展過程では有効だが、やがて創造性を摘み、自分の足を引っ張ることになる。対して、日本人はたぐい希な適応能力をもっている。個人的に、日本の空洞化を救うのはオタクたちだと思っている。近未来を先取りしているオタクたちの気分の中から、革新的な需要が産み出されそうな予感がする。電気街からアニメへ変身した秋葉原、原宿に溢れる若者たち、それらの活況は日本の希望かもしれない。
NHKスペシャルの後、NHK教育「青春リアル」にチャンルネルを変え最後の10分を見た。番組には認知症の祖父母を介護する健気な孫娘が登場していた。それに至った経緯は見逃したが、母親は、辛くなったら頑張らずにいつでも施設に入れるように言っていた。しかし、孫娘は祖父母の気持ちを尊重し、頑張り続けていた。
彼女に対し、レギュラーメンバーたちは色々とコメントを寄せた。多くは、一人で頑張らず公に頼れ、と言ったものだ。メンバーの看護婦は、介護施設に入れたら可愛そうと考えるのは、施設で働く人達を馬鹿にしている、と強く反発していた。
私の経験では、どんなに立派な施設にいても、老人は家に帰りたがる。それ程に老人にとって家庭は大切なものだ。認知症のMさんも、脳梗塞の後遺症に苦しむIさんも、再発ガンのHさんも、意識がなくなるまで、住み慣れた家に帰りたいと訴えていた。
ヨーロッパの福祉先進国では老人介護は在宅を原則にしている。施設に入るのは特別な設備が必要な病気をかかえている老人だけだ。それが出来るのは、格段にホームヘルパー制度が充実しているからで、我が国では到底無理だ。
施設に老人をまとめて介護するのは次善の措置で、施設が最高の介護の場である訳ではない。その点、看護師の反発はやや本筋を外れていた。私が在宅で母を介護しているのも同じ訳で、それに母が年金無しで、自己負担分が払えない経済的理由が加わる。
最近、よく買い物をするスーパーのレジに新人が立った。健康的で目の大きな可愛い子だ。だから、清算は新人のレジを選ぶ。最近、向こうも私を覚えたようで、昨日はニッコリ私の目を見てお辞儀をしてくれた。深い意味はないが、とても気分がいい。魚コーナーのパートのおねえさんは時間をかけて生きのいい魚を選んでくれる。だから、毎日の買い物はとても楽しい。
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