華やかな世界の嘘っぽさが堪え難くなった。09年9月5日
3日夜、版画家の菊池氏に電話をした。2日まで銀座でお嬢さんが3人展をしていたのに、うかがえなかった詫びの電話だ。彼は11月に銀座でガラス絵展をする。彼はその打ち合わせのついでに、お嬢さんの3人展を見た。それから画廊巡りをしていると、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで「銀座界隈隈ガヤガヤ青春ショー〜言い出しっぺ横尾忠則〜灘本唯人・宇野亜喜良・和田誠・横尾忠則4人展」のオープニングで、外の歩道まで客が溢れ大変な盛況だった、と彼は話していた。
--4人の中で作家らしい活躍をしているのは横尾忠則だけだ。他の3人は彼の引き立て役と言ったところか。60年代の元気を懐古するには良い展覧会だ。
彼はオープニングパーティーに加わり、画家らしく作家4人の様子を生き生きと描写してくれた。画廊のオープニングは原則誰でも参加出来る。ただし、慣れないと雰囲気に呑まれ、居心地が悪い。
母の介護がない頃なら、話しを聞きながら私もオープニングに行ってみたいと思っただろう。しかし、今の私はそのような華やかさから興味が失せた。
とは言え、この手のパーティーは可愛い子が多い。参加して、ビール片手にバカ話をするのは楽しい。しかし、そのような場特有の嘘っぽさが堪え難くなった。今の私は、赤羽自然観察公園の椎の木陰で、涼風にあたりながら休息している方が向いている。
昔、教育テレビでアメリカの国民的画家オキーフを取り上げていた。彼女は花一輪を大画面に官能的に描くことで名を成した。彼女は夫と死別した後、サンタフェ郊外の砂漠で絵を描きながら98歳の生涯を終えた。
ニューヨークでは毎日何処かで上記のようなにぎやかなパーティーが繰り広げられている。彼女はそのような虚飾の街が突然に厭になったようだ。今、サンタフェ郊外の荒野に隠遁した彼女の気持ちがよく分かるようになった。
菊池氏はガラス絵展を11月にするか、来年3月にするか迷っていた。彼の考えは3月の方が準備にゆとりができて上手く行きそうだと言う。私は画廊に任せて11月にすることを薦めた。
「3月まで延ばしても、のんびりするだけで作品が充実する訳ではない。俺たちに残された創作の時間はとても短い。画廊が11月と言うならそれに従い、強引に良いものを作るべきだ。」
私は自分に言い聞かせるように言った。あと10年経てば共に70代半ば。それから先は命の保証すらない。
f-132 風の音。今は、自然の中に一人でいるのが心地良くなった。
朝、母を起こしに行くと、横になったまま起き上がろうとしない。
「今日は体調がとても悪くて、起き上がれない。・・・長いこと本当に世話をかけ、すまなかったね。」
母は過去形で、まるでこれから死ぬようにしんみりと言った。
「1年前から毎朝同じことを言っているよ。ウダウダ言わず、さっさと起きな。」
私は母の肩に手を回し、ぐいっと起こした。本人は忘れているが、昨日もその前も、同じことを言っていた。もし、本当に死にそうなら、声をかけても反応しない。このように、朝、悲観的になるのは老人性欝の典型的な症状だ。気にせず、いつものように濡れタオルと水無しシャンプーで頭を洗い、顔を洗わせ、目薬をさし、朝食を摂る頃にはいつもの母に戻った。
散歩の準備をしている間、母にクルミを渡した。赤羽自然観察公園で拾った鬼グルミだ。これを3個ずつ、両手に持たせてカチカチさせる。それだけで、母の指先がしっかりして、手紙の字の歪みが直ってきた。服の着脱や頭の働きも良くなった。しかし、時々クルミをなくしてしまうので、昨日、散歩帰りに駅前に出て、入手しようとしたが、大きな果物屋にも売っていなかった。昔はありふれた食品だったのに、今は中国等でむき身にして出荷するので、殻付きはなくなったようだ。
ヤマボウシの実。大きさは25mmほど。ミズキ科 ヤマボウシ属の落葉高木。初夏に4枚花弁の白い清楚な花を咲かせる。花の姿が昔の帽子に似ていたのでその名がついた。
散歩コースのビル影で元気よく成長している。ライチのような皮をむくと、熟し柿に似たトロリとした甘い果肉に丸い小ぶりの種が一個。持ち主は放置して、落ちるに任せているので、時折摘んで楽しんでいる。
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