最後に命運を決めるのは心がけだ。09年10月27日
「今日は死ぬかもしれない。」
今朝も母はいつもと同じことを言った。
起き抜けは疲労強く足取りが悪い。しかし、洗顔、歯磨きと、いつもの習慣をこなして行く内にやや回復した。
朝食後、「今朝、死ぬと言ったこと覚えている。」と聞くと、
「今朝のことくらい覚えている。」と、母はムッとした。
散歩へ玄関前に出ると、台風一過の素晴らしい快晴が広がり、一夜で雪に覆われた富士が見えた。風に冷たさはなく日射しは暑いくらいだ。御諏訪神社脇の急坂を、車椅子を押し上げると汗をかいてしまった。
緑道公園で、死ぬと言ったことを母に聞くと、まだしっかりと覚えていた。先日までは、この辺りで完全に忘れていた。睡眠導入剤のレンドルミンを半錠に減らした効果で、頭がしっかりしたようだ。
散歩道で知っている人に会うと、母は明るく元気に挨拶した。ワンコに会うと弾けるように笑顔になった。この様子では、今日は死にそうにない。
2番目写真は赤羽自然観察公園。
3番目は紫式部。
4番目は赤羽自然観察公園の駐輪場の柵に巻き付いた山ブドウ。干ブドウ状に少ししなびたのがとても甘い。
老人達は風が苦手だ。好天に関わらず、公園に常連は殆どいなかった。代わりに、近隣三つの幼稚園の園児たちが、大勢お昼を食べに来ていた。
可愛い保母さんたちが芝生にシートを広げると、子供たちは行儀良く座って、弁当を広げた。
「今度、弁当持って来て、ここで食べたいね。」
母は羨ましそうに食事風景を見ていた。
私たちの頃はシートではなくムシロを敷いた。ムシロは稲藁を織ったものだ。厚みがあり柔らかくて暖かく、地面に敷くと、私たちはゴロゴロ転がってはしゃいだ。しかし、今のシートは薄く、地面の凹凸を拾ってゴツゴツして痛い。それで今の子供たちは行儀が良いのかもしれない。
帰り、旧知のSさんと会った。彼女は末期の肺がんで抗がん剤治療をしている。顔色は極めて悪かったが、「抗がん剤治療が終われば、また、元気になりますよ。」と慰めた。
彼女は母と明るく昔話をしていた。彼女の明るさは信仰のおかげだ。最後に人の命運を決めるのは、心がけのようだ。
そう言えば、体力は日に日に低下しているのに、最近母は明るくなった。「今日は死ぬかもしれない。」と言うのも、現状を受け入れてしまったからかもしれない。
頭がしっかりして来て、夜、無意味に呼びつける回数が減って、安堵している。
しかし、先程はテレビのリモコンがないと呼びつけた。
「はい、リモコン。」と孫の手を渡すと、母はしきりに竹の柄を押しながら、「壊れている。」とつぶやいた。本当に孫の手をリモコンと思っているようだ。
それで、「孫の手と間違えた。」とリモコンを渡すと、母はやっと気づき「意地悪ばっかりして。」と笑った。
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