時間は様々なものを変化させながら過ぎて行く。09年10月5日
相変わらず、母は夕暮れから壊れ始める。日中は正常だが、夜は夕食を食べたことも忘れる。体力も日に日に低下して来た。今年の夏前に銀座へ連れて行ったことが、遠い昔に思えるほどだ。
去年の夏も、極端に体力が落ちたが秋には回復していた。今年はその反発がない。いよいよ、終末が近いかもしれない。
深夜様子を見に行って、布団をかけ直していると母は目覚めた。
「苦労ばかりかけて、ごめんね。」
母は感謝の言葉をかけた。少し寝たことで脳に回っていた毒素が解毒されたのかもしれない。母は正常なら優しい性格だ。しかし、壊れ始めると無理難題を言う別人に変わる。
一昨夜の午前3時前、母の呼ぶ声で目覚めた。慌てて寝室に行くと、母はベット脇に転んでいた。傍らのポータブルトイレを使おうとして、倒れたようだ。すぐに私が駆けつけたので倒れていた時間は短い。どこも打ったところはなく無傷で安堵した。しかし、同じことは繰り返され、いつか取り返しのつかないことになりそうだ。
翌朝、母の頭が正常な内に、夜はトイレに立たずに、使い捨てのリハビリパンツで済ませるように頼んだ。これは辛い説得だ。深夜担当がいる施設なら、ブザーで介助を呼べるが、私一人では無理だ。それらの事情を話したが、母は受け入れ難い様子だった。しかし、何とか受け入れてもらった。
昨日の夕暮れ。玄関前から新河岸川上流。
鞆の浦(とものうら)の裁判は、歴史的観景を保護するように判決が出た。判決に関連して、テレビに鞆の浦の映像が流れた。古い石垣の堤防。石造りの常夜灯。狭い入り組んだ町並み。昔、眺めたことがあるような懐かしい風景だ。私が子供の頃まで、そのような港町は全国各地にあった。私が4,5歳の頃、母に手を引かれ、そのような港町を歩いた記憶がある。石垣の堤防に澄み切った波がポチャポチャと打ち寄せていたのをはっきりと覚えている。映像を眺めながら、母が逝った後、鞆の浦に旅してみたいと思った。
海を埋め立て橋を架ければ観光客が増えると思うのは、地方の考えだ。私自身田舎育ちなので、その考え方がよく分かる。地方に住んでいると、近代的な建造物が美しく、伝統的なものは古くさく見える。しかし、都会人は違う。都会に暮らしていると、何も手を加えない自然や、伝統的な建物や施設に魅力を感じるようになる。もし、海が埋めたてられて駐車場になり、橋が架けられていたら、年間150万の観光客は激減するだろう。
八ッ場ダムでの観光客誘致への期待も同じだ。ダム湖に物珍しさで観光客がやって来るのは建設後4,5年で、あとは閑古鳥が鳴き始める。ダム湖が美しいのは満水時だけで、少し水位が下がると湖畔の崩落した山腹が露になり醜い風景に変わる。しかし、手を加えない渓谷なら、いつまでも観光客を集めることができる。
今回、地元首長たちが、ダム完成図を掲げてそれで観光客が集まり地元が潤うと力説していたが、絵に描いた餅に見えた。一部報道によると、ダム建設中止反対の彼らの裏で官僚、族議員、ゼネコンが暗躍し完成度7割などと虚偽のデータを流しているようだ。
鞆の浦では、住人たちが救急車が入らない古い町並みで暮らす辛さを訴えていた。しかし、救急隊が民間だったら、古い町並みでも工夫して仕事をこなす。たとえば、運送や引っ越し業者など、狭い道や階段だらけの古い町でも、小型運搬機などで対応している。
このような思考の硬直化は、新政権の予算見直しへの抵抗にも多々見られる。たとえば、電子黒板予算削減への現場教師の反発では、確かに、電子黒板があれば子供は楽しく勉強する。しかし、それがなければ教育が出来ない、と言う程の機器ではない。しかも、最新機器を子供たちが楽しむのは始めだけで、すぐに古びて次のハイテク機器を求めそうだ。
我々はテレビもないローテク時代に育ったが、今の子供たちより学力も創意力も優れていた。これは現場の創意工夫の足りなさだ。報道では、小学校教師が破損した人体模型と送風機を前に買い替えてくれないと授業が進められないと訴えていた。見た所、人体模型は新品同様に修理出来る程度の破損だ。送風機も簡単に治せる故障に思えた。
このケースでは、教師が壊れた人体模型をどうすれば良いか、子供たちに提示したらどうだろう。子供たちは修復方法の様々なアイデアを出すはずだ。どうせ捨てるものなら、子供たちに自由にポンドや紙粘土で補修させ、絵の具を塗って修復させるのも良い。多分、教材に使えるくらいに修復できるはずだ。今の子供に欠けているのは、ものを大切にする心だ。生活能力と創意工夫を育てるために、壊れた人体模型は利用できる。今回の現場の要求は、駄々っ子が新しい玩具を欲しがっているようで、子供たちの未来を託すのに不安を感じた。
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