2009年日本ノーベル賞なしは、日本特有のお人好しの所為か。09年10月7日
ノーベル物理学賞と医学生理学賞は米国籍6人に決まり、共に日本人は外れた。医学生理学賞の米国のエリザベス・ブラックバーン,キャロル・グライダー,ジャック・ショスタック3氏についてはロシアが猛然と噛み付いている。それによると、今回の受賞対象、染色体のテロメア構造の解明は、ソ連時代の1971年にアレクセイ・オロブニコフが理論を発表済みで、今回の米国3氏はそれを実証したにすぎないようだ。今までの他の受賞例を考えても、ロシアの主張は正当に思える。米国3氏については、日本人学者も共同研究をしていたが、3人枠から押し出されてしまった。
ノーベル賞受賞は米国優遇で、日本や東欧は不利と言われている。殊に、ロシアのソ連時代は、西側に敵対していたので埋もれてしまった受賞対象者は多い。
日本の場合は更に特殊で、選考システム上受賞者は少なくなる傾向にある。システムでは、選考委員会は事前に世界各国に推薦人の学者を選んで候補者の推挙を依頼する。そして、推挙された候補者から受賞者を決める。しかし、日本の学者は何故か優秀な研究者を知っていても推挙しない。選考委員会が再考を求めるほどに極端に少ない。理由はさまざまだが、根底に派閥や嫉妬があると考えられている。殊に医学界にその傾向が強いようだ。そのような偏狭さを捨てなければ、日本の不利はこれからも続きそうだ。
今年の物理学賞は、光ファイバーのチャールズ・カオ、CCD開発のウィラード・ボイル,ジョージ・スミスと、情けないくらい小粒だった。本来、実業寄りの研究は物理学賞の対象ではなかったが、IT産業に力を入れていた米国のごり押しで受賞対象に加えられた。
光ファイバーの中国系米英国籍のチャールズ・カオの受賞については、この程度で取れるのか、と疑問符がつく。彼の理論の根幹は元々は東北大の西澤潤一氏が基礎研究していたアイデアで、彼はそのヒントを共同研究していた西澤氏から得て、米国で論文発表したローカルなものだ。仮にカオが同じアイデアを持っていたと主張しても、開発経緯を考えると先発である根拠は弱い。このような結果を招いたのは日本人の権利意識の低さによるものだ。
西澤氏が基本を発案し、カオが実用化の道を開いた、が本当の所だ。その関係は、下村脩氏がクラゲから緑色蛍光タンパク質(GFP)を発見し、それを中国系米国人ロジャー・Y・チェンが実用化したのと似ている。周知の通り、下村・チェン両氏は2008年ノーベル化学賞を受賞した。
西澤氏の場合は基本だけでなく実用化へ大きく踏み込んでいて、単独で受賞するだけの価値があった。
光通信の実用化については、西澤潤一氏は光通信システムの総て、半導体レーザー、光ファイバー、受光素子を考案し世界に認められ、光通信の父と言われて来た。しかし、ノーベル賞の権威は大きく、これからは光ファイバーの発明者は中国人だと中国は主張するだろう。
光ファイバーの草創期、米コーニング社と住友電工の間で基本特許と製造特許が激しく争われた。日本人の特性として、余程相手に非がない限り争わない。日本側が争ったのは正当性に確信があったからだ。常々の米国の強引なやり口を思うと、住友電工の主張は信用できる。
当時、私は関連記事を熱心に目を通していた。その過程で、西澤氏が早い段階で光ファイバーの基本特許を出願していることを知った。
その特許明細書は基本要素はきちんと押さえてあったが、いかにも低予算の素人ぽい下手な図面だった。その素人ぽさが災いし、加えて審査官にその先進性がまったく理解出来なかったために、出願条件不備として不受理になった。
不受理でも彼が基礎研究で先んじていたことの法的な証明になる。もし彼が米国人なら、それを根拠に先願権を主張したはずだ。その権利意識の弱さがノーベル賞を逃した遠因かもしれない。
特許における不受理は拒否ではない。一般的な不受理とは基本から意味が違う。案件があまりにも先進的だと審査官が理解出来ず100%不受理になる。たとえば仮に、アインシュタインが相対性理論を出願したとすれば、当時の物理学水準では200%受理されない。
そのように、不受理は特許庁が説明を求めているだけで、猶予期間内に再度修正出願すれば、出願日に遡って受理される。猶予期間を過ぎても、同様の出願が後で他からなされた時、裁判を起こして後発を拒否できる。
昔、私は発明に熱中して、数百の特許や実用新案を出願した。その中には不受理もあったが、係争が起きたら修正出願すれば良いと、そのまま放っておいた。西澤氏も同じように考えて放っておいたようだ。その辺り、天才にありがちな、大発明に対するこだわりのなさを感じる。
日米特許紛争の顛末は住友電工の不可解な敗訴で終わり、莫大な賠償金を支払わせられ、米国から撤退させられた。今回のカオのノーベル賞受賞には、その特許紛争絡みの米国の汚い圧力を感じる。カオを肯定することで米国の権利の正当性を守れたのだろう。
光ファイバーの基本理論は、戦前、ドイツと日本で研究されている。それを発展させる形で、西澤潤一氏は光ファイバーの内部の屈折率を中心から外側へ変化させることで、光は漏れることなくどこまでも進むと考えた。西澤氏がチャールズ・カオに65年に会った時、その考えを話した。それから1年後にチャールズ・カオは素材をガラスにすれば実現可能との論文を発表した。
その頃、西澤氏は光通信システムの基本理論に熱中し、光ファイバーの素材をガラスかプラスチックにするか、などの枝葉の研究を後回しにしていた。それも今回の受賞を逃した最大の理由だ。ノーベル賞は基礎が優先されるのが原則だ。基礎を無視して、製造論の枝葉が受賞とは審査過程に大きな疑問が残る。
かように日本人はアイデアに対して無防備で無欲だ。欧米、中国、韓国の研究者が自分のアイデア、あるいは盗用したアイデアを主張し守る姿勢は実に強欲で巧みだ。西澤氏は取材に対し穏やかにカオの受賞を讃えていたが、真相を知る周辺の者たちは無念だっただろう。そして、西澤氏が受賞しないことをほくそ笑んでいる勢力が国内にいるのも、もう一つの事実だ。
彼は他にも多くの歴史的業績を成している。これからもノーベル賞に最も近い候補者だが、将来も受賞がないとすれば、受賞させたくない勢力が国内外にいるのだろう。ノーベル賞は公平ではなく、ロシアの抗議で分かるように国際政治の圧力や学者同士の勢力争いの影響を受けやすいものだ。
日本人のお人好しは国際的な企業競争にも当てはまる。韓国のサムソンが、日本企業からザル水のように漏れ出た技術をただ同然で手に入れ、巨大企業に成長したのは周知の事実だ。しかも、盗用した技術から派生したパテントで、次々と日本企業を敵対的に訴えているから始末に負えない。その背景には、戦前の日帝支配に対する怨念があるのだろう。今はそれに中国が加わり、更に知的所有権の損失は増大するばかりだ。日本は国を挙げて正当な権利は堂々と戦い守って欲しい。
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今、トヨタのハイブリット技術が米国企業から訴えられている。トヨタ側は問題なく退けられる、と言っているが、パテント・トロールに蚕食され続けている他企業のように安易に和解金を支払ってほしくない。
先日、NHKでパテント・トロールを特集していた。それによるとパテント・トロールとは、ヒット中の商品に使われているパテントの類似品のクズを買い集め、提訴する集団のことだ。彼らのやり口は巧みで、米国の保守的な地方の裁判所に訴え、愛国心の強い陪審員制度を利用して有利に訴訟を進める。訴えられた企業は正当と分かっていても、長期の裁判に嫌気がさし和解金に応じてしまう。殊に英語の法律用語と海外訴訟に不慣れな日本企業が鴨にされがちだ。そのように、パテント・トロールと投資家たちは悪質な訴訟で巨額の利益をあげている。これは産業の発展を妨げる新手の金融商品と考えたが良い。
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秋には御諏訪神社境内のカヤの神木が大量に緑色の実を落す。その果肉を除き、種を重曹溶液に2週間漬けてアク抜きをする。それから天日干しをして、煎って食べる。殻が焦げるくらい煎ったものが、香ばしくて美味しい。味は品の良い落花生に、食感はビスタチオナッツに似て、心地良い歯切れだ。美味くないと思っている人が多いが、それは焦がし方が足りないせいだと思う。
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