不景気は悪い面だけでなく良い面もある。09年12月22日
寒さが少し緩んだ。車椅子の母は湯たんぽ無しで散歩へ出た。
桜並木終わりの路地奥を見ると、小次郎君が日溜まりに寝そべって、近所の人と遊んでいた。彼は母の鈴の音に気づき、起き上がってこちらを見た。
近づくと、母におやつをねだった。最近、彼は副腎皮質ホルモン服用の影響で食欲が亢進し、食事制限を受けている。しかし、母経由なら特別に少しだけジャーキーを貰える。彼はそれをよく知っていて、飼い主のKさんにお手をしたり、地面のリードを拾ったり、思いつく限りのお愛想をして、ジャーキーをせしめた。
駅前の区役所出張所に車椅子の母を置き、銀行で生活費を下ろした。引き返す時、宝くじ売り場が目に入った。今年最後の運試しにスクラッチを1000円分買ったが、総て外れだった。
「最後まで金運なしか。」
落胆しながら、悪い分、来年は幸運が訪れる、と思うことにした。
クリスマスは無視している。お供えは3日前から飾ってある。松飾りも飾りたいが、それは思いとどまった。帰路、下ろした金で数の子と黒豆を買った。今日は冬至。明日から日に日に昼間が長くなる。
最近、赤羽自然観察公園へ行くと喪失感を覚える。
手入れが行き過ぎ、野草は芝生のように刈られた。日本の在来種のホタルブクロ、野百合各種、野生のナデシコ、と背丈のある野草は壊滅した。ノブドウ、三つ葉アケビ、スイカズラ、昼顔、などのつる性植物は総て根元から切られた。先月は自然木の殆どがバッサリと剪定され、寒々しい風景に変わった。
公園は幾つかのボランティアによって運営管理されている。
公園には、自然が保護された地域と里山として管理手入れする地域がある。しかし、一部ボランティアが手入れを拡大解釈し、自分の好みで手を入れ始めた。
抗議すれば、母の大切なリハビリの場が争いの場になる。母が生きている間は見ざる聞かざるに徹することにした。
先日、散歩帰りに都営桐ヶ丘団地を抜けた。
団地は都の予算削減の影響で老朽化が目立つ。写真のような錆の浮き出たガードレールは都内では珍しい。しかし、路傍に野草が茂り、赤羽自然観察公園より植物相が豊かで安堵する。皮肉にも、都の財政難が自然を豊かに保護している。
貧乏には明暗二面性がある。生活苦は暗い面だが、貧しい者同士、助け合う優しさは明るい面だ。豊かな自然も貧しさに伴う。貧しかった昔は、日本全国、豊かな自然に覆われていた。海岸線は広い白砂青松と、豊かな磯が続いていた。
今は、ダム建設で川砂の海岸線への流出が止まり、痩せた砂浜はテトラポットで埋め尽くされた。貧しさと豊かさ、どちらが良いかの問題ではなく、政治家に知恵が足りなさ過ぎた結果だ。
昨夜、「TVタックル」を見た。自民側の議員とジャーナリストは、大不況に苦しむ国民救済より現政権の引きずり落しに熱心で深く失望した。
私見だが、鳩山首相の母親からの金の貰い方や皇室の神格化より、今の日本には大不況からの脱出が重要だと思っている。
その後、チャンネルを代えたテレビ東京「カンブリア宮殿 2009」は「TVタックル」より前向きだった。登場は、スズキ会長兼社長鈴木修氏、オーケー社長飯田勧氏、メガネ21専務平本清氏。
その中、利益は社内留保せず、総て社員に分配する平本氏の経営思想は感動した。彼の考えでは、利益を総て分配すれば、社員は豊かになり経営危機でも給与カットに耐えてくれる。だから、社内留保と同じように経営は安定する。この考えは設備投資や研究費が必要な製造業には向かないが、革命的な経営思想だ。今後の展開が気になった。
「今までのように、頑張れば何とかなる時代ではない。二三年耐えれば明かりが見える、と安易に考えず、景気の二番底を覚悟したがいい。」
実力者鈴木会長の言葉はずしんと胸に響いた。これからは頑張りだけでは生き残れない、卓越した知恵が必要な時代に変化したようだ。
深夜、床に入ってから、「世界のドキュメンタリー・ヒットラーの台頭」を見た。
第一次世界大戦から20年。世界恐慌に襲われたドイツでヒットラーが台頭して行く様を、デジタル技術でカラー化した映像がリアルに映し出していた。不景気の中、ヒットラーの登場に歓喜するドイツ国民と、鳩山政権に強力な指導力を待望する今の日本の気分が似ていると思った。今の先進国は、同じことが起きないシステムになっている。しかし、強力な政治に明暗二面性があるのは間違いない。
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