年賀状欠礼の葉書が毎日届く。09年12月5日
今年の秋は黄色系が美しい。
金曜の日没前、環八の並木が夕日を受けて輝いていた。
12月に入ってから、年賀状欠礼の葉書が5枚来た。亡くなった身内は、いずれも80代半ばから90代前半まで。比べて、母は長命だとつくづく感じる。
せっかちだった母は老いて、やっと年相応にのんびりして来た。
先月までは、私がどんなに夜更かししても、朝7時にブザーで起こしていた。それが、先週あたりから、寝過ごすままにしていてくれる。おかげで、身体が少し楽になった。
さほど効果の見られない母の服用薬を減らしている。体内の薬物処理能力が弱り、副作用が出やすくなっているからだ。それで、母の頭は少しだけしっかりして来た。
しかし、惚けたことはよく言う。
先日、ポータブルトイレを使わせた後、母は使用済みのトイレットペーパーを手渡した。
「ちょっと濡れているだけだから、取っといてくれんの。」
まだ使えるから乾かして鼻をかむ、と久留米弁で言った。
「汚れの多少じゃない。使ったら汚れていなくても捨てな。」
私は、可笑しさを我慢しながら、すぐに捨てさせた。
老人介護をしていると、要点以外は極めて大雑把になる。
総てを完璧にしようとすると、ストレスが溜まり、挫折してしまう。
昨日の番組で細菌学者が面白いことを言っていた。
テーマは地面に落ちた食べ物は食べられるかだ。学者によると、地面の細菌の99.7%は人には無害で、土の着いた食べ物を食べて、腹を壊すことは殆どないらしい。むしろ、そのような雑多な菌を口にすることで、免疫力が刺激され、アレルギー反応の少ない健康体に育つと言う。
今、身の回りは抗菌グッズだらけだ。無菌に近い状態で子供たちが育っているために、抵抗力が弱まりアレルギー症に罹りやすくなっている、と学者は話していた。
我々が育った昭和20年代は、今ほど衛生的ではなかった。賞味期限表示の習慣はなく、高級店は別として、普通の店頭の饅頭など、カビが生えていない限り売っていた。古いものを食べ、時には腹を壊すことがあったが、痛んでいるのを分からずに食べる方がドジとされていた。そのように育ったせいか、若い世代より消化器は丈夫で、腹を壊すことは殆どない。
傍らのテレビで元芸大学長で日本画家の平山郁夫の美術番組を再放送している。先日、彼が脳梗塞で死去した追悼だろう。
彼は芸術家と言うより、やり手の経営者や政治家に近い。素直に逆らわなければ大変面倒見の良い人だった。真偽は分からないが、彼に学んだ日本画家の知人が、彼の好きな色を使うと高い評価を与えてくれたと話していた。もし、その色を使わないと嫌われ、評価が低くなるらしい。
彼が板橋に住んでいた頃、師の前田青邨に「優れた画家は鎌倉に住むべき。」と言われたと彼はテレビで話していた。「そう言われた翌日に鎌倉に引っ越した。」本人が得々と話していたのが印象に残っている。彼は人間関係を重視する人で、芸術至上主義ではない。彼の作品に物足りなさを感じるのは、その生き方から来ているのだろう。
画家は、死んで値が上がる者と値が下がる者がいる。平山郁夫は後者だと思っている。
母方の遠縁に、戦前の洋画家福岡出身の中村研一がいる。帝展審査員や芸術院会員を歴任した権威側の画家だったが、今は知る人は殆どいない。
権威側の画家は実力以上に評価されがちで、死ねば評価が下がるのは当然だろう。
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人の運は意外に平等に明暗が振り当てられる。
勝ちと思っていたのが負けで、負けと思っていたのが勝ちだったりする。
それは、人が一人で生きられないからかもしれない。
どんなに強運の成功者でも誰かの助けを必要とする。往々にして助ける側は敗者で、その時、人生の勝ち負けは意味をなくす。
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