無縁社会、無縁死、寂しい老後を癒すネット上の仮想空間。10年1月31日
NHKスペシャル「無縁社会〜"無縁死"3万2千人の衝撃〜」
独り身である私として、このテーマは見逃せない。番組で一番印象に残ったのは、死は平等だ、と言うことだった。番組で取り上げられていた孤独死した人も、大政治家も、大金持ちも、死んでしまえば皆同じ無機質のかけらだ。大きく違うのは死に至る過程だ。独り身の老後の辛さは、砂を噛むような孤独な年月と、誰にも看取られずに死と対峙しなければならない不安だ。
始めから確信犯的に野垂れ死にを選んだものは、それなりの覚悟がある。しかし、失業、病苦、伴侶との死別などで、いやおうなく孤独に追いやられた人たちは違う。番組中の、そのような寒々しい孤独は、目を背けたくなるほどに寂しかった。
昔は無縁の人を救うシステムが社会に張り巡らされていた。町内には必ず、おせっかいのおじさんやおばさんがいて、独り者の年寄りが困っていると、何くれと世話してくれた。私が上京した昭和38年でも、そのような雰囲気があり、アパートで片付けものをしていると、近所の小母さんが来て、「お兄ちゃん。困ったことがあったら何でも相談しな。」と、いきなり言われた。私は生意気な若者だったので、せっかく上京したのに、田舎と同じは真っ平と、そのような世話焼きを敬遠していた。
しかし今は、おせっかいをして助けなければならない弱者でも、無関心に放っておかれる。そのような無縁社会に政治も宗教も無力だ。整っているのは、行旅死亡人や孤独死者で利益を稼ぐNPO法人や特殊清掃の業者ばかりだ。
救われなければならないのは死後ではない。遺骨は追悼を込めて、野でも海でもまけば良い。緊急に手を打つべきは孤独な老人だ。しかし、現状では老いの末期は寂しくなって行くばかりだ。
去年春、出版社の営業上の都合で没になったが、ヒット本「おひとりさまの老後」の男編を書いていた。その中で、孤独な老後を和らげるシステムを考えた。それは、会員の分身のアバターが、インターネット上の仮想空間の村で暮らすアイデアだ。
・・・参加した会員は風光明媚な村のアパートや一軒家など好みの住まいで暮らす。村には都会的な繁華街もある。会員のアバターは村を散歩したり、芸術を鑑賞したり、ゲームを楽しんだりする。集会場や飲屋やバーで、会員同士、会話を楽しむこともできる。
村には墓地、寺院、教会、病院もある。そこでは会員の葬儀を始め、心身の悩み相談に、宗教家、カウンセラー、医師が応じてくれる。
生前葬も可能で、本人が自然葬か伝統葬か形式を選び、生前に別れの言葉を述べ、参列者は弔辞を贈る。
劇場、映画館、商店街、画廊、美術館と一般と同じ施設もある。私は絵描きなので、画廊で個展ができる。音楽家はリサイタルを開催したりする。
独り者が苦慮するのは死後のアルバムや日記の扱いだ。いつ死ぬか分からないのに、早々と処分するのは難しい。村では、会員の希望でアルバムや日記などを死後50年ほど住まいに保管できる。故人が希望すれば、会員は故人の住まいを訪ね、アルバムや日記を開いて生前を偲ぶことができる。
このシステムは会員が共同で管理するネット上の巨大な理想郷だ。バーチャルでも、そのような村が今の無縁社会にあったら、孤独死の不安や寂しさを和ませることができる・・・
上、近所の御諏訪神社境内。
下、住まいから遠く見える、戸田橋たもとの第一硝子工場の煙り。
この煙りは、その時の気分で様々に見える。最近は、何となく火葬場の煙りに見えてしまう。
午前中、姉が訪ねて来た。
母の調子はどうだ、と聞くので、「問題だらけだ。でも、生活の厳しさと比べたら、介護はへみたいに簡単だ。」と答えた。70近い姉は昔離婚して財産も年金もなく、頼れる相手ではない。それでも、話せば少しだけ気分が楽になる。
最近母は、何か思いつくとすぐに呼びつける。台所で片付けものをしていても、寝ていても、仕事をしていても、トイレに入っていてもおかまいなしだ。大事なことなら、呼びつけてもかまわないが、たいていは「今日は何日」「死んだ 姉の名前は何たったけ」と言った、どうでもよいことだ。母が呼びつけるのは、今直ぐ聞かないと、何を聞こうとしていたか忘れてしまうからだ。
今朝は6時前に起こされた。昨夜は3時近くまで絵を描いていて頭が冴えて寝付けず、4時ころやっと寝付いた。2時間睡眠では、さすがに辛い。外は暗く、早い時間と母は分かっているのに起こすのは、退屈で寂しいからだ。母の気持ちは分かっているが、
「相手のことを考えな。」と、ついつい強く言ってしまう
出来た人なら、笑顔で大らかに「まあ良い良い」と受け流すだろう。しかし、私にはできない。強く言うことで 母の頭の老いが止まる効果があるからだ。しかし、そうは言っても自分が許せないし釈然としない。母はやがて死ぬ。その時、後悔しそうな気がしてならない。介護もまた、不条理で矛盾に満ちている。
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