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2010年3月18日 (木)

人の情けが身にしみる。10年3月17日

16日
朝食の後片付けをしていると、突然に水が止まった。先日、水道工事のための断水告知があったのを、すっかり忘れていた。汲み置きの水はないので、ポリタンクを車椅子に積んで下の公園まで水汲みへ出かけた。

「あれ、おばあちゃんは。」
エレベーターの中で会ったおじいさんが聞いた。
「水が止まったので、留守番させています。」
おじいさんは怪訝な顔をした。
「断水だって? 出る時、かみさんは洗濯始めていたぞ。水が止まるのを知らねえな。」
断水を忘れていたのは私だけではなかったようだ。

公園の水飲み場でポリタンクを満タンにして、車椅子に積んで帰った。エレベーターは動いているし、トイレ用は工業用水道なので影響なく、大した作業ではない。

水は確保したが、水道なしだと料理が何となく億劫だ。お昼過ぎ、冷凍中華マンを温め、母と散歩へ出た。公園の日溜まりで中華マンを母に食べさせるととても喜んでいた。その後、赤羽駅前で買い物をして、3時に帰宅した。断水は5時までの予定だったが、帰宅するとすぐに開通した。流しに山積みになっていた食器を洗い、洗濯を済ませた。
もし、東京で大地震が起きれば、13階まで水汲みで日に何度も往復することになる。都会のインフラの脆さを思いがけなく体験した。

17日
散歩へエレベーターに乗っていると、途中、突っ張った風体の若者が乗り込んで来た。
「こんにちは。」
若者は車椅子の母に挨拶した。
「足の悪いおばあちゃんが、一人暮らししているので、訪ねて帰る所です。」
若者は母に話しかけた。
「気候がよくなったから、車椅子で連れ出してあげると喜びますよ。」
母が言うと、「車椅子ならできますね。今度連れ出してあげよう。」と笑顔になった。
若者はおばあちゃんに可愛がられていたようだ。会話を聞きながら、微笑ましくなった。

昼食後は絵を描いて過ごした。
午後4時、母にクスリを飲ませて、夕食までベットに寝かせた。最近母は、長く椅子に腰かけていると浮腫みがひどくなる。

5時前、旧知のY氏が来訪した。
生きて行く上で大切なのは人間関係だ。母に手がかかるようになってから外出が難しくなって人付き合いが悪くなった。だから、氏のように自宅に訪ねてもらうと、とても助かる。

「この才能を埋もれさせてはならない。」
氏は友人と私のホームページの作品画像を見ながら、話していたそうだ。突然の来訪は私の窮状を察してのことだった。思わず、胸の奥がジーンとした。最近、人の情けが身にしみる。

氏と会ったのは阪神大震災の直後の15年前、大阪駅コンコースにあるセルベスギャラリーで個展をした頃だ。氏は被災者救援団体の代表をしていた。私は救援の一助としてチャリティーやTシャツ用に絵を提供し、それで知り合った。再会はそれ以来だ。

会期の合間に神戸を訪ねると、氏は被災地を案内してくれた。
焼け野原に焼けて赤錆たトラックの残骸があった。その瞬間、終戦直後の博多の焼け野原がリアルに蘇った。熱で歪んだ鉄骨。溶けて水飴のように固まっているガラス。それまで忘れていた情景が細部まで目の前に浮かび、以来、震災記念日が来ると思い出すようになった。
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「おじいちゃんのバス停」
ほぼ完成したので、全体の絵に手を入れている。

シーン13

Bus_13

ドングリ山は 霧の中に浮かんでいた
「霧が 晴れる前に むかえにきます」
山ウサギの車掌さんが 言った
ドングリ山に おりると バスは 霧の中へ スーッと 消えた

「お帰りなさい」
家の前で おばあちゃんが 待っていた
「すっかり大きくなって」
おばあちゃんは うれしそうに ボクのほっぺを さわった

Ma_4

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