NHK「命をめぐる対話"暗闇の世界"で生きられますか」の辿る先は基本的人権侵害だった。10年3月21日
NHKスペシャルで取り上げられたTLS(閉じ込め 症候群)は、意識は明瞭なのに、総ての筋肉が力を失い、話すことも目を動かすこともできず、呼吸筋も弱るので呼吸装置に頼ることになる。
絶望的な状態で暗闇の生き地獄に閉じ込められているのは、表現を職業にしている私には恐怖の世界だ。
番組からTLS患者の苦しみは十分過ぎるほど伝わった。しかし、番組の方向性は釈然としなかった。ノンフィクション作家柳田邦男氏は真摯に対応していたが大きな限界があった。人間の本性を避けた克己力や倫理観の生真面目さだけでは患者は救えない。
日本国憲法第13条・基本的人権に幸福を追求する権利がある。
番組では、患者は家族愛で支えられていると言っていたが綺麗ごと過ぎる。
付き添ってくれる家族のいない患者への配慮がない。
番組に引き続き、テレ朝・日曜洋画劇場「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」を見た。この番組の流れは実に示唆に富んでいる。
極悪非道の海賊バルボッサ一味はアステカの呪いにより、死ぬことも、快楽を味わうこともできない。そして、一匹狼の海賊ジャック・スパロウは死を恐れず、自由に戦い快楽を享受していた。
映画を見ながら思ったことは、TLS患者が望むのは、死を恐れず快楽の中で死ぬことではないだろうか。私は幸せに死ぬことも基本的人権に含まれていると思っている。
生真面目な人権論者たちから袋だたきにあいそうだが、敢えて言う。
TLS患者にアルコールとヒロポンとヘロインを注射して、泡風呂でベテラン・ファッションヘルス嬢の大サービスを健康保険で提供して欲しい。幸いにも、患者の触覚だけは健在だ。患者たちが快楽を味わうことができれば、苦痛のあまり呼吸装置を外してくれと訴えたりはしない。
現代医学は、患者に生き地獄を味合わせている。これは医師の事なかれ主義による責任回避に思える。誰でも幸福を追求する権利があり、この医療行為は明らかに基本的人権を侵害している。
患者たちに苦行僧のような克己力や倫理観を求めるのは間違っている。不幸にして病に倒れているだけで、普通に性欲もあれば妄想もする。酒池肉林の中で生命を浪費させ、快楽の中で逝かせてこそ、人権を守ったことになる。酒池肉林が無理なら、死ぬまで、薬物刺激で脳内麻薬エンフェドリを放出させ、多幸感を味合わせるべきだ。
近い将来、脳波による会話方法が必ず生み出されるだろう。さらに、病気そのものの治療方法が見つかるはずだ。だからこそ、患者は楽しく生き続けて欲しい。
この問題の恐ろしさは、「意思を伝えられなくても、生きていれば、それで良いではないか。」と考える医療従事者がいることだ。一般にもTLS(閉じ込め 症候群)の怖さを理解できず、無関心な人が数多くいる。いずれも想像力の欠如によるもので、まず、それから啓蒙しなければならない。
日本国憲法第13条・基本的人権。
「すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。」
東京北社会保険病院下のユキヤナギ。
母は番組の前半を見た。
TLS患者に比べ、97歳の今も春の訪れを味わえ、言葉で表現できる幸せを強く感じていたようだ。
普通に死ぬことができる幸せを、強く感じさせる番組だった。
私は母が死にかけても、絶対に延命治療はしないことにしている。
どんなに科学が進んでも人は必ず死ぬ。
死がそのような存在なら、楽しい死を追求する権利もあるはずだ。
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