督促状は気味が悪いほどに無愛想なデザインだ。10年3月26日
深夜、顔に何かが触れたような気がして目覚めた。電灯を点けると、巨大なゴキブリが枕元をヨタヨタと逃げて行く。どうやらゴキブリの長い髭が顔を撫でたようだ。すぐに殺虫剤を吹き付けて仕留め、ゴミ箱に捨てた。
この住まいは、入居当時はゴキブリがまったくいなかったが、暖かくなると窓を開けたままにしているので、他所から侵入されてしまった。それで、誘引剤入りの殺虫剤をあちこちに置いた。設置式の殺虫剤はゴキブリホイホイと違い、効き目がわからなかったが、始めて効果を確認できた。
今日も公団から家賃の督促状が届いていた。威圧的な文面だが、支払いのめどがついた今は平気だ。督促状を知らずに過ごす人は幸せだ。私は父が失敗ばかりしていたので、借金に関して、差し押さえの赤札まで多彩に経験している。しかし、私自身への督促状は今回が生まれて始めてだ。
督促状には共通の特徴がある。まず、無愛想で心地悪いデザインの文面だ。書体も通常使われているのとまるで違い、一目で不安をあおるように工夫されている。
印象に強く残っている督促状は、父が最後の事業で失敗した時のものだ。毎日、緑インクの謄写版刷りの異様な書体の督促葉書が届いた。当時は謄写版はすでに使われていなかったので、債権者は異様さを強調するために謄写版を使ったようだ。
父に葉書を渡すと、「解決済みだから心配ない。」と平気だった。解決済みなら督促状が届く訳がない。やがて督促状はピタリと止み、いつの間にか債権は闇金へ移譲された。闇金は支払い能力のない父の代わりに、私へ苛烈な取り立てを始めた。父はそれがショックで寝込み、80歳で死去して解決した。
上写真。母の背景は桜並木。
桜は3分咲きだ。
寒い日が続くので、来週末辺りが満開だろう。
それでも、東京北社会保険病院下の公園で数組が花見をしていた。
この時期になると、公園に近隣の多くの老人介護施設から老人達が引率されて訪れる。
今日も、ユキヤナギや大根の花を背景に記念撮影をしていた。
職員は老人達を並ばせては、「はい、笑って下さい。」とシャッターを押していた。
疲れた顔で歩いて来た老人たちは、カメラを向けられると反射的に笑顔に変わった。老人施設は老人達にのんびり花見を楽しませるために連れて来た訳ではない。老人たちは何カ所かで記念写真を撮ると、追い立てられるようにバスに戻り、そそくさと帰って行った。
この写真を見せられた老人たちの家族は、楽しく過ごしていると誤解するだろう。偽りかどうかは、写真の時間表示の間隔で推測できるので確かめると良い。
下写真。東京北社会保険病院下公園。
粘土質の地面に苔が覆い始めた。私は地衣類が好きだ。とても環境の変化に弱い植物で、踏まれたり汚染がひどいと直ぐに枯れて消える。
駅前商店街の八百屋にアメリカ産ラズベリーがあったので買った。帰り、公園のベンチで母と食べていると、突然、子供の頃の記憶が蘇った。4,5歳の頃、母に連れられて博多へ行った時、赤いシロップがかかったババロアらしきお菓子を食べた。そのシロップの豊潤な甘い香りは、今も鮮明に記憶している。今日、その香りはラズベーリだったと、始めて記憶と合致した。
香りの記憶は特殊で、頭の中に香りを思い描く事はできないが、嗅ぐと鮮明に記憶が蘇る。終戦直後に出会ったあのラズベリーシロップは国産ではなく、米軍横流しの品だったのだろう。
今は深夜1時半。昨夜は久しぶりに6時間寝た。おかげで、今も眠気が起きない。困ったものだ。
母の部屋から咳き込むのが聞こえたので、様子を見に行った。母が死ねば、そのように気遣うことはなくなる。しかし、母の気配が消えた喪失感に悩まされるのだろう。
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