母の体調は日替わりで激変する。終末期の特徴で一喜一憂はしない。10年5月31日
30日朝は、母の体調は極度に悪かった。
「とても疲れているから、このまま死ぬまで寝かせていてほしい。」
母が死ぬと言うのは久しぶりだ。理由は思い当たる。前夜午前3時に朝になったと勘違いして私を起こした。私が寝たのは2時近くだ。
「外は真っ暗だよ。朝か夜か分からないの。」
寝入りばなを起こされて機嫌が悪く、つい厳しく言ってしまった。
その後、私はすぐに2度寝したが、母は朝と間違えたことがショックで眠れなかったようだ。それで、脳細胞がかなり死滅し、ボケが進んだのだろう。
「このまま寝ていても辛いだけで、すぐには死なないよ。起きてご飯を食べて散歩しよう。そうしていれば自然に死ぬから。」
優しく説得すると母は渋々起き上がった。しかし、朝食を済ますと、すぐに死んだように寝入った。声をかけてもピクリとも動かない。以前は慌てたが、これも終末期の特徴で、4,5時間寝ると回復する。
10時過ぎ、Yさん夫妻が絵を取りに来た。横浜に運び、Yさんの人脈で売ってもらえる。絵描きは人の善意で生きて行ける。
絵の在庫はたっぷりあるが、売れる絵と売れない絵がある。芸術性の高い絵は概して売れないので、絵描きの手元に残り、死後、係累が潤う。売れる絵は明るい色調で楽しい絵だ。私は、売れ残った暗く沈んだ絵の方が心に染み入る。
Yさんの車に絵を積み込んでいると姉が来た。できるだけ来てもらいたいが、60代後半で一人で自活している生活は厳しく、週一回が限度だ。
車を見送って部屋へ戻ると、母の枕元で姉はテレビを見ていた。たいして役には立たないが、母を任せて他のことができるので助かる。
我が家は離婚率が高い。その姉も、死んだ長姉も、その子供たちも、殆どが離婚している。協調性はあるが、世間体を考えず、がまんしない性格が原因だろう。
一番我慢強く、結婚に向いているはずの私が一人なのは不思議だ。多分それは職業病で、絵描き仲間も独り身が多い。絵以外のことを疎かにして、相手に愛想を尽かされるのかもしれない。
昔、何度か結婚を迫られたが踏み切れなかった。絵描きは殆ど食えない職業だ。無収入が続いた時、「これからどうするの。」と伴侶に言われると辛くなる。昔なら「お前が何とかしろ。」と威張って言えたが今は無理だ。結局、職探しに奔走して絵描きを諦めてしまう。知人にも、才能がありながら諦めた者が沢山いる。そのせいか、最近、絵描きの才能は思い込みを貫く頑固さだと思うようになった。
昼食後、母を近所に連れ出した。
緑道公園の人目につかない場所にグミが熟し始めた。
酸味が強く甘くはないが、ルビーのような実を見つけると、つい摘んで食べてしまう。
球形で小粒のグミは甘い。
以前、桐ヶ丘団地に一株あったが、園芸業者が刈り取ってしまった。
下写真。住まいから浮間方面。
散歩後は頭がしっかりしたが、夕食後から母の頭は狂い始め、15分ごとに呼びつけて意味不明のことを訴えた。
母は肝臓ガンの病歴があるので肝臓に弱点がある。
さらに加齢で肝機能が弱り、解毒されない毒素が脳に影響しているのだろう。
しばらくすると疲れ、死んだように寝入って静かになった。
31日
朝は元気に起きてくれたが、朝食後はベットに戻り死んだように寝入った。介護する身としては、静かに寝ていてくれると楽だ。その間に家事や仕事を片付け、買い物へ出た。
昼食後再度、母は死んだように寝入った。
午後3時半に、上野歯科医院に予約が取ってある。どこも悪くはないが、メンテナンスを半年していない。
久しぶりに訪ねると治療台が新しくなっていた。ドイツ製の高度な滅菌器も設置してあり、治療器具は完全滅菌されるので安心だ。
昔、行っていた歯科医院は、治療器具に血液が付着したままで、ぞっとしたことがある。幸い、その器具は私の治療に使われなかったが、即刻、その医院は止めた。
歯科衛生士が前処理に歯を磨いて、院長の診察を待つ間にテレビを薦めた。治療台にディスプレーが付いていて、マウスで番組が選べる。昨日、歯科医院の数がコンビニより多くなって競争が激しい、とNHKで特集していた。上野歯科医院は二代目で殆どは親の代で減価償却している。それでも営業努力は怠らないようだ。
悪い箇所はなかったが、予防治療が必要な箇所は見つかった。治療が終わったら噛み締め予防のマウスピースを新しくする予定。
駅前で買い物をした。日本酒と安物の赤ワインが重い。母の散歩帰りなら、買い物は総て車椅子に下げるので楽だ。
5時過ぎに帰宅すると、母は目覚めていた。十分に寝たので、頭はしっかりしていて普通に会話ができた。母の体調は激しく上下するが、全体では緩やかに下がっているだけだ。
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