きびしい猛暑は、思考を麻痺させてくれるのが救いだ。10年7月25日
昨夜はひさしぶりに室温が30度を切った。深夜2時、外へ出て夜景を眺めた。
5時間前まで、川向こうの浮間小学校から盆踊りの歌謡曲がにぎやかに聞こえていた。明かりが消えた盆踊り会場を眺めながら、去年、「盆踊りをしているね。」と、母が話しかけたのを思い出した。
思い返すと、去年秋から危機の連続だった。母を抱えてホームレス寸前まで追いつめられた生活苦。それを皆の支援で切り抜けたら、5月1日に私の緊急胆嚢除去手術。そして、母の急速な体調悪化。更に私の過労。最大の危機は7月1日母の死のショックと喪失感。それは今も続き、間歇泉のように哀しみが噴出する。しかし、立ち止まってはいられない。母の死と引き換えに得た自由を大切にしようと思っている。
辛さは喪失感だけではない。介護の後遺症で腰痛と頑固なかかとの痛みに悩んでいる。かかとの痛みは母の車椅子を2万キロ以上も押したためで、専用の運動靴とインソールで緩和させている。鼠径ヘルニアも悪化したが、これは手術で完治できる。厄介なのは生活苦に伴う極度なストレスで血糖値が上昇したことだ。こちらは気を引き締めないと、老後を悲惨なものにしてしまう。
支援者のご好意で、青山で三日間だけの作品展をした。今日も炭火に手をかざしているような猛暑だったが、多くの方に足を運んでもらえた。母が死んで以来、家に話し相手はいない。だから、お客さんと言葉を交わすだけで安らぐ。人は一人では生きられないと、しみじみ感じた。
日本生命倫理学会学術誌表紙の締め切りが月曜26日に控えていた。無理に今日中に完成させても不満が残る。意を決し、納期を伸ばしてもらった。
写真は昨日の月。
会場から帰ったのは午後6時。夕刻に母を看取ったトラウマが残り、一人でいるとたまらなく寂しくなる。徹夜続きの疲労感がどっと出て、買い物した食品を慌ただしく冷蔵庫へしまい、畳表を張った手作りベットに横になった。足元のガラス戸を開いて、横になったまま夕暮れの空を眺めると満月が見えた。
母はベットから夜空を眺めるのが好きだった。今日のように満月が見えると、「月がきれい。」と、私を呼んでくれた。そのような何気ない会話を、日に何度も思い出す。
早朝、寝る前に仕込んでいた五穀米を炊いた。朝食のおかずは味噌汁と鶏肉の塩焼きとしめさば。昨日までレトルトの白米を食べていたがもの足りなかった。
母が好きだった五穀米としめ鯖は、思い出すのが辛くて避けていた。ようやく、グリーフ・ワークの回復期に入ったのかもしれない。久しぶりの五穀米にしめ鯖は美味しかった。
玄関前通路に蝉が死んでいた。腹を上に向け、流れて行く雲を眺めているように見えた。
小さな死も粗末にできない。蝉はテッシューに包み、ゴミ箱にそっと捨てた。
小さな動物ほど静かに死ぬ。
以前の住まいは自然林に囲まれていて、庭は野良ねこの休み場所になっていた。時折、彼らの最期を看取ることがあった。冬は、彼らはほの暖かいゴミ焼き場の灰に横になって死んだ。死ぬ前になると、ネコたちの瞳は静かな湖のように透明感を増した。近づいても逃げず、その透明な瞳で静かに見上げた。そして、2,3時間後の深夜に息づかいが荒くなり、荒波が収まるように静かに死んだ。
遺体はタオルで包んで、花と一緒に段ボウルに納め、翌朝、清掃局に電話をした。すると、清潔な作業着を着た係員が来て、清潔なバスタオルで段ボウルを包み、丁寧に挨拶をして引き取って行った。個人の敷地内の死体は2千円の費用が必要だが、心のこもった野辺の送りだった。
上写真、会場にて。
疲れた顔をしている。
胆嚢手術から母の死と続いて、5キロ体重が減ったままだ。
回復は秋までかかりそうだ。
下写真、会場近くの赤坂御用地。
Macの調子が悪い。調整してみるが、デジカメのSDカードをどうしても読み取ってくれない。仕方なく、フラッシュメモリーを使っている古いデジカメを騙し騙し使っている。
3月末に絵描き仲間の宮トオル氏が急逝した時、
「春の死別は季節が癒してくれるのが救いだ。秋口の死だったら、寂しさが増すばかりだっただろう。」
未亡人にそんなことを話した。
母の死もそれがそっくり当てはまる。今の猛暑は、ほんの僅かだけ哀しみを麻痺させてくれる。
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