ペットロスの手記を、母の死と重ねながら読んだ。10年7月27日
あいかわらず猛暑。家から話し相手がいなくなって、言葉を忘れそうになる。
今日は、近くのお寺へ出かけて、住職見習いの若者と少し話した。栃木のお寺の息子で、修行に来ている。東京のお寺はまだ安定しているが、田舎は檀家が減る一方で、経営が大変なようだ。彼は帰るのは止め、東京のお寺に留まるかどうか悩んでいると話した。その後、お堂で線香を上げるのを薦められ、傍らで少し読経してくれた。線香の白檀の香りを嗅ぎながら安ぎを覚えた。
夜、博多の兄から突然電話があった。
「どうしているか。」と聞く。「まだ、一人暮らしになれない」と答えると、「体を大事にしな」と兄はめずらしく優しかった。母の動画があるので、「DVDに編集して送る」と言うと喜んでいた。母の死で、兄も寂しいのかもしれない。
その後、版画の菊池氏に電話をした。彼からは香典を貰っている。その返礼を兼ねて母の死を直接報告した。彼とは、涼しくなったらディズニーランドへナンパしに行く約束をしている。その前に一度飲もうと言った話しになった。
彼の父親は酒好きで、70代で食道がんで亡くなっている。酒にタバコが加わると、喉頭、咽頭、食道のガンのリスクが増大する。最近、周辺にガンによる訃報が多い。「気を付けたがいいよ。」と言うと、酒好きの彼も気にしている様子だった。
話しの最中に、彼の電話にキャッチが入った。切って待っていると彼から電話がかかった。
「明日、息子が孫を連れて遊びに来る」
彼は嬉しそうに話した。
そのように家族がいれば、辛い時に支えてくれる。
深夜、メールとブログのチェックをしていると、ペットロスの手記が目にとまった。
「もう一度会って、名前を呼んで遊びたい」「いつも散歩させていた道へ行くと、悲しさが込み上げてくる」「いつも傍らに寝ていたのに、いなくなった空間が寂しい」「いつも遊んでいた玩具が捨てられない」「5年過ぎたのに、掃除をしているとあの子の白い毛が見つかる。思わず、会いたくなって泣き崩れてしまう」「自分だけ楽しめなくて、美味しいものが食べられなくなった」
筆者は主婦が多く、切々と哀しみが書いてあった。人の死では、こうも素直に書けない。
毎日、ワンコを散歩させていると、ワンコ繋がりで人間関係ができあがる。それがペットの死によって、一夜で消えてしまう。一人で歩いていても、誰も気づいてくれない。ペットの死は二重の喪失感をもたらしてしまう。母との死別は、そんなペットロスの心境にとても似ている。
新河岸川と浮間地区。
橋上は埼京線北赤羽駅。
夕暮れ、突然雨足が近づき、すぐに去って行った。
その後は、気温が2,3度下がった。
母の死に対する罪の意識は少しずつ解消している。しかし、母と言い争った場面ばかり思い出すのは相変わらずだ。あの時、どうして優しく接してあげられなかったのだろうか、と、日に何度も後悔が過る。
祖母も父も在宅で私が看取った。哀しみはあったが冷静に対処できた。だから、母も同じように看取れると思っていたが違っていた。父と祖母の時は傍らに母や姉たちがいた。しかし、母の時は私一人だった。
呼吸が止まり、心音が消え、母が私の手の届かない所へ行ってしまったと感じた時、息苦しい程の孤独感と哀しみが私を捉えた。今もそれはトラウマになって、夕暮れになると蘇る。お隣のご夫婦から、いつでも声をかけてくれと言われていたのに、どうして一人で見送ってしまったのだろうか、今も反省している。もし、肉親を在宅で看取ろうと思っている人がいるなら、誰かに付き添ってもらうのを薦める。
母の死後、自分の死が垣間見えるようになった。それは子供の頃の予防注射の列に似ている。ドキドキしながら並んでいると、先の子が三人、二人、一人、と減って行き、いよいよ自分の番が来る。その心境は兄や姉たちも同じようだ。言葉の端々に後がない寂しさを感じるようになった。
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