イアホーンを外せば夕日に蝉時雨 10年9月4日

昨日は37度近くまで上昇したが湿度が低く、意外に過ごしやすかった。
散歩は夕暮れに出かけた。紫外線への肌の耐性が弱くなっているので、日射しが陰ってからの外出が楽だ。
最近は外出時にipodを欠かさない。母の車椅子を押している頃は安全を考え、携帯音楽を聞かなかった。風景と音楽がうまくかみ合うと実に心地良い。殊に夕暮れは、心に染み入る。

イアホーンを外せば夕日に蝉時雨

最近の耳栓型イアホーンは外の音が聞こえにくい。夕暮れの緑道公園でイアホーンを外すと、ツクツクホーシが鳴いていた。郷里大堂津での子供の頃、この声を聞くと柿が熟し始めていた。遠くへ遊びに行っての帰り道、夕日に赤く照らされた山の木々を見上げると心細くなった。息せき切って駆けて帰ると、「どこまで遊びに行っていたの。」と、台所から母が迎えてくれた。あの安堵感を、今切なく思い出す。

10年前からのMacユーザーだが、最近のアップル製品は好きではない。携帯音楽プレイヤーの品質はソニーの方が優れている。Mac内蔵音楽ソフトiTunesにソニーは対応していないので諦めているだけだ。

アップルのサポート体制には不満がある。問題が生じた時、質問して解決した事は一度もない。有料なのに担当者は呆れる程のバカ揃いで、独力か詳しい知人と相談しながら解決していた。最近、iシリーズの世界的大ヒットで、アップルは更に鼻息が荒くなった。その所為か無能なくせに慇懃無礼な担当者が増えた。

しかし、ウインドウズに替える気はまったくない。アメリカ発のその分野は、所詮、その程度だと思っている。だから、第三の道を歩く日本メーカーの出現を心待ちしている。

今日の新聞社説で、リスクを恐れず果敢に投資するので韓国企業は躍進している、とあった。
解説者はそのモデルが高度成長期の日本にあることを忘れているようだ。かっての日本も、欧米の優れた製品をキッチアップし、リスクを恐れず集中的に投資して安価な製品を大量生産して世界を席巻した。そのビジネスモデルは発展途上国では通用するが、今の成熟した日本では難しい。

成長路線を復活させるには、まず産業人がプライドを取り戻すことだ。夢を描き、それを実現する為に果敢に研究投資を積み重ねて行く。かっての日本企業は夢達成へのリスクを恐れなかった。その結果生まれたのが、トランジスターラジオ、家庭用ビデオ、ウオークマン、液晶テレビ、デジカメ、巨大タンカー、フラッシュメモリー、などだ。それらは世界文化を大変換させるほどの衝撃があった。もし、日本メーカーがなかったら、今の文化は違った姿になっていたはずだ。
まだ巻き返すチャンスは十分にある。しかし、現行方式の3Dテレビ程度ではだめで、簡単に韓国や中国メーカーにキャッチアップされてしまう。今、一番必要なのは未来を先取りし夢を描ける人材だ。

韓国、中国メーカーは力強いが、文化を変えるほどの製品は一つも生み出していない。主として日本製品を真似し、主として日本人技術者を雇い、ローコストでキャッチアップして成功しているだけだ。アジアの成功は無尽蔵の人材を供給できる日本を近隣に持った地政学的幸運にある。戦前日本は、軍事侵略による偽りの大東亜共栄圏の目論みに失敗したが、くしくも今、理想通りの大東亜共栄圏に成功したようだ。

就職難と言われているが、企業担当者が生き残りをかけ、埋もれた人材を発掘しているとは到底思えない。先日、来春卒業の大学生を抱えた知人と話したが、まったく就職口が決まらずに困り果てていた。街でも、猛暑に関わらずリクルートスーツの若者が目につく。若者に職を与えられないのに、産めよ増やせよの政府の政策は実に虚しい。

円高デフレへの企業の生き残り策は海外進出のみで、国内は空洞化する一方だ。その一方、国内には運用先のない資金が膨大に余っている。それらを適切に活用すれば、一瞬で企業の元気は回復する。しかし、運用先の選定システムが未整備なことが問題だ。非効率な企業が低金利の資金で生き残り、将来性のある企業が資金難に苦しんでいる。本来ならその作業は官僚に期待したい。しかし、現状では無駄な法人作りに悪用されるだけに思える。

国民の多くが政権に期待しているのは、贅沢な豊かさではなく質素でも幸せな生活だ。そのためなら、少々の負担に耐えようと思っているのに、その場しのぎの口当たりの良い政策ばかりで希望を持てない。

デジカメはcanonのキス×4を使っている。
散歩帰りに夜景の設定で撮ると、鮮明に夜の雰囲気が写っていた。

写真の右手は星美学園。
夕暮れは風が涼しく心地良かった。今年の夏には未練がない。早く秋風が吹いて欲しい。