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2010年10月19日 (火)

おせっかいが増えれば、世の中は明るくなる。10年10月19日

散歩帰りに都営桐ヶ丘団地を抜けた。この団地は巨木が多く心地良い。母が元気な頃、右上の道路に車椅子を待たせて巨木の写真を撮った。
この辺りは、更に秋が深まれば美しく紅葉する。写真を撮り終える頃、いつもの場所で母が笑顔で待っているような気がした。

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秋の花が次々と咲き始めた。
団地でコスモスの写真を撮っていると、下の道を行くおばあさんが立ち止まって話しかけた。
携帯音楽のイアホーンを外し、慌てて聞き直すと「花が綺麗ですね。」と、彼女は言い直した。
道は上り坂で、老人には辛そうだ。
「坂道が大変ですね。」
話しかけると、おばあさんは笑顔になった。それから、少し上にフヨウが咲いていると、花の話しをした。近所が年寄りばかりになって人と話す機会が殆どなく、言葉を交わせて嬉しいとおばあさんは言っていた。

Cosmそれは私も同じで、家に籠っていると話す相手がいない。それで、一日一度は外へ出て誰かと話すようにしている。

エレベーターでも乗り合わせた人に必ず会釈する。皆、挨拶されると嬉しいようで、年かさの人は必ず話しかけて来る。

以前、理由もなく話しかけて来る老人の気持ちが不思議だったが、今、その気持ちがよく分かる。だから私も、おせっかいと思われても気にせず声をかける。たまには失敗することがあるが、それでもめげずに話しかけている。

先日、魚屋でイカを買おうとしていると、中年おばさんが割り込んで来た。彼女はトロ箱に並べられたイカを買おうとしていた。しかし、手前の皿に2杯ずつ並べたイカの方が割安だ。
「お皿の方が安いですよ。」
おせっかいを言うと、彼女はトゲトゲしく「箱の方が新鮮。」と言った。トロ箱のイカは茶色い背中を上にして並べてあるが、皿は乱雑で白い腹が上を向き見た目は悪い。案の定、店員がトロ箱からイカを取り出すと、皿とまったく同じイカだと分かった。おばさんはイカを受け取ると、プリプリしながら去って行った。

私が上京した昭和30年代、下町には私のようなおせっかいが沢山いた。八百屋で買い物していると、そのほうれん草は古いとか、そのトウモロコシは新鮮だとか、知らない小母さんが親切に教えてくれた。それでいて、プライバシーとは絶妙な距離感を心得ていた。

孤独死とか子供の虐待とか陰惨な事件が多いのは、世の中からおせっかいが減ったせいだ。おせっかいが増えれば、世の中は今より明るく住みやすくなるだろう。

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涼しい曇り空だったが、時折日が差した。住まいに入る前、13階の通路から午後の陽を眺めていた。イアホーンの音楽は「カヴァレリア・ルスティカーナ」で、風景にとても合っていた。

私の音楽の好みは節操がなく、フォルダにはイタリア民謡と一緒に日本の「南部牛追唄」。Tom Waits、夏川りみ、美空ひばりの演歌に童謡の「赤とんぼ」。入っていないのは若者向きのポップスくらいのものだ。

最近、一番惹かれるのは日本の伝統的な民謡だ。人生への力強さと適度な哀感がとても良い。聞いていると生きて行く勇気がわいて来る。

最近、母は私に自分が死に逝く姿を見せることで、死について教えてくれたのではと思い始めた。誰もが長生きの方法は熱心に学んでいるが、必ず迎える死を疎かにしているように思えてならない。死を考えない生き方は、トイレのない家に住んでいるようなものだ。

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