フラットパネルの覇権は何処へ、FPDI International 2010。10年11月12日
幕張メッセで、液晶、有機ELなどのフラットパネルと、太陽電池、LED照明などの展示が開幕した。目立つのは韓国メーカと台湾メーカーの躍進だ。Samsungの印刷製造の19型有機ELテレビ、台湾メーカーの裸眼3Dテレビなど気になる展示が多い。対して日本メーカは存在感が薄く寂しい限りだ。それでも、不思議なことに日本産業界に危機感は感じられない。
それについて今年夏、韓国銀行から興味深い発表があった。
今年、韓国の日本からの輸入は過去最高を記録した。上半期の日本からの輸入は、電子部品など309億米ドル。韓国から日本への輸出は128億米ドル。その差は181億米ドルと韓国は大幅な輸入超過だ。それは日韓貿易が始まって以来、最大の赤字で、韓国の輸出が増えれば、それ以上に日本からの部品材料輸入が増える。その構造はこれからも深刻化し、この1年内に韓国輸出は33%増加するが、同時に日本からの輸入が39%増加する、と危機感をあらわにしている。
発表から、韓国、台湾メーカーの製造工場の姿が読み取れる。工場に並ぶ設備の大半は外国製で、その多くは日本製。素材も日本製で、ノウハウを指導するのも日本人技術者たちだ。
しかし、それは単純に喜べる状況ではない。製品で一番儲かるのは発売メーカーだ。たとえば、大ヒットしているアップル社のiPadなどの部品は韓国と台湾製で中国で組み立てている。だが利益の大半はアップル社が得ている。テレビ産業でも同じで、今の状況が続けば、やがては日本の製造メーカーは資金力のある韓台中に飲み込まれてしまう。
だが、負けてばかりではない。最近、日本メーカーは安物テレビの分野で韓国メーカーの牙城を崩し始めた。円高と世界一の法人税率の二重苦にめげず、日本メーカーは意外にしぶとい。もし円安に戻ったら、一気に競争力を回復しそうだ。一見、韓国メーカーの独走状態に見えるが、しばらくは群雄割拠が続くと見た。
液晶や有機ELは過渡的なディスプレーにすぎない。究極のフラットパネルは、反射型表示媒体を使ったものになるはずだ。極めて初期的なものが電子書籍のE Ink 電子ペーパーで消費電力は極めて少ない。しかも紙印刷物のように周囲が明るいほど鮮明に見えて目が疲れない。
液晶や有機ELの欠点は白と黒の表現が不完全なことだ。周囲より明るくすることで、白黒に見えるように感じさせている。液晶のバックライトに替えて反射板を用いる方法があるが、純白を得るには限界がある。
自然物の殆どは反射型表示媒体で出来ている。それに自発光を加えたフラットパネルができれば、3D以上のリアル感を表現できる。反射型表示媒体の研究は始まったばかりで、10年後か15年後に干渉色を自在に作り出す画期的な反射型表示媒体が現われそうだ。それまで長生きしてぜひ眺めてみたい。
今日も夕日が美しかった。
最近、絶望に明暗二種あることを知った。他から押しつぶされて起きる闇のような絶望。自ら望みを絶って到達する光に溢れた絶望。後者に達すれば死も病苦も怖くなくなる。それが仏教上の無であり悟りなのだろう。
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