権力者は制御不能な、アメ横、秋葉原、築地、などの混沌を嫌う。11年3月4日

一週間、睡眠4時間で「介護日記」をまとめていて、最後は体がふらつくような疲労を覚えた。
しかし、母の介護では、それ以上の過酷な毎日を八年以上続けた。途中、限界を越えて、倒れたことが3度あったが、おおむね何とか頑張っていた。あれは慣れだったのか、それともただの頑張りだったのか、いずれにせよ、介護生活に戻るのは体力的に無理だと分かった。

昨日は真冬に戻り、朝から冷たかった。疲労が取れたので、御徒町にシアバターとピュア・オリーブ油とスリゴマを買いに行った。シアバターは友人夫人に頼まれたものだ。オリーブ油はスペイン・イバラ社の1リットル3本で1900円を。ごま油は1キロ1350円。それに電車往復運賃420円を加わるので、まとめ買いをしないと安く買った意味はなくなる。

スリゴマとイバラ社のオリーブ油は前回買って味を確かめた。共に申し分ないので買った。
前回買った未精製のシアバターは、半分を姉にやった。姉は水仕事で指に割れが入って長年辛い思いをして来た。それがこれで改善し始めた。
私は絵を描く時、たえず右中指の腹で有毒な絵の具を伸ばしていた。それで汗腺をやられ中指の腹が痛くなった。それが、未精製のシアバターを塗っていたらいつの間にか治っていた。
特有の匂いはすぐに気にならなくなった。更に良いのは190グラム1500円の安さだ。姉に分けて残った分だけでも、使い切るのに1年はかかりそうだ。

たまたま帰宅する知人と時間が合ったので、のんびりアメ横を歩いて上野駅でお茶をした。
アメ横は相変わらずエネルギッシュで、ますます多国籍になっていた。食べ物市場は生命感が溢れ、歩いているだけで元気が満ちて来る。
似た場所に食の築地がある。こちらもアメ横と共通した活気がある。
秋葉原は食ではないが、アメ横や築地と似た猥雑さと、うさん臭さがある。
そのような混沌としたエネルギッシュな街は万国共通の魅力があり、東京の重要な観光地として海外からの観光客にも人気がある。

しかし、政治家はこの猥雑な混沌を毛嫌いする。それらある制御できないエネルギーを権力者は恐れるのただろう。だから、石原慎太郎は築地を移転させ、シンガポールのような衛生的な街にしようとしている。
隅々まで管理された衛生的な街はおぞましい。日本はこれから観光立国を目指しているのに、東京一の観光地を僻地へ移転させて近代化しようとしている。慎太郎は作家として、迷路や闇の魅力の理解者だったはずだが、権力の座に長く居たことで、そのような愚を犯すようになったのだろう。

妖し気な迷宮のような街は魅力がある。下北沢もそうだったが、やがて近代化され没個性のつまらない街に変貌しそうだ。救急車や消防車が入らないから近代化は止もう得ないとの考えがある。しかし、リヤカー型の搬送車や消防車で対応している地方の歴史的街並がある。東京都ならもっと進化した方法がいくらでも開発できるはずだが、そのような計画を聞いたことがない。蛍光灯で明るく照らされた病院のような街はつまらない。ランプが灯るような街こそ楽しい。

上野駅駅舎が改装された頃に母の介護が始まった。この駅舎は80年前に完成したクラシックな建物で、実に魅力的だ。改装されたクラシックな内装の下に増設された喫茶室で知人とお茶をした。桜の香りのする紅茶が美味かった。

帰りの京浜東北線の車窓から夕日に照らされたスカイツリーが見えた。この電波塔を見ると、母の終末期を思い出す。丁度、展望台ができた頃に母は死んだ。おそらく死ぬまで、この塔を眺めるとその時を思い出すだろう。

沈丁花が満開になった。冷気のせいか、香りが例年より清々しく感じる。
例年はもっと甘い香りだった。
温度に対応した揮発性分の差によるものだろう。

下の花はアセビ。
東京北社会保険病院下の公園。

草食動物が食べると苦しむところから、馬酔木とも書く。
奈良では鹿たちが千年以上かけて選択的に食べ残して来たためにアセビが増えた。昔、奈良を旅した時、アセビの白い花のトンネルを歩いたことがある。

夕暮れ、桐ヶ丘生協に豆乳を買いに行った。
さまざまなメーカーのを飲んで、生協が一番癖がなくて飽きが来ない。
豆乳はコレステロールを下げるためと、動脈硬化防止に1日400ml飲んでいる。

暗くなった都営桐ヶ丘団地を抜けた。
老人世帯が殆どで、暗くなると人通りが絶えた。

桐ヶ丘の授産所上空でスケルトン型UFOに遭遇した。透き通った機内の光が美しい。
UFO研究家橋本氏によると、高齢化社会を先取りした桐ヶ丘団地の偵察にやって来たようだ。何れの星でも高齢化は共通の問題なのだろう。