再び「老いたら反省も後悔もするな」と自戒 11年9月26日
今日は朝からどんよりと曇り、肌寒いくらいだ。
昨日は晴れ渡り、玄関を開けると夕空が美しく見えた。
夕空に惹かれて、久しぶりに荒川土手へ行った。土手は近く、我が家から10分ほどの距離だ。こちらへ引っ越す前は今より荒川土手は遠かったのに、毎日のように散歩へ出かけていた。しかし、こちらへ引っ越してからは殆ど行かない。いつでも行ける距離が却って意欲を失せさせたようだ。
対岸の川口市側と比べ東京側の荒川土手は野球場が作れるくらいに広い。荒川が氾濫しそうな時、重要な首都を守るために、あえて埼玉側の土手を弱く作ってあると聞いたことがある。非情だが、全体の被害を小さくする方針は仕方がないことだ。
散歩している人は多いが、広いので殆ど気にならない静けさだ。写真撮りを終えてから、帰路に着いた。浮間橋を渡っている時、ふいに、20年前の荒川土手の散歩帰りを思い出した。
当時は赤羽台の台地上の一軒家に住んでいた。
日が落ちてから御諏訪神社の坂道を上り、桜並木を抜けて自宅へ戻ると、母はいつも、台所で後片付けをしていた。
ガラス戸を開け「帰ったよ。」と声をかけると、
「お帰り。楽しかった。」と母は明るく返事をした。
それから、「カボチャ、煮ておいたから、食べなさい。」などと、手料理があることを付け加えた。
「食べない。自分で煮た方が美味しい。」
私はいつも憎まれ口をきいていた。
「また、へそ曲がりなこと言って。誰に似たんでしょうね。」
母は笑っていた。別段、母の手料理を拒否した訳ではない。やがて母が逝けば一人暮らしになる。それに備えて、料理洗濯掃除、自分のことはすべて一人ですることにしていたからだ。そのことは母も気づいていて、それ以上無理強いはしなかった。
当時、私は40代前半でとても元気だった。70代の母も元気だったが、頑張っても10年後辺り、85歳くらいで死ぬだろうと思っていた。それは大袈裟ではなく、母は血圧が高く、心臓の重い不整脈にも悩んでいた。そして、80歳から毎年のようにガンなどの手術をした。だから、当時の私の予測は間違っていない。
母は私の行き届いた介護が功を奏して97歳まで長生きし、私は65才で一人になった。ある意味で、私は人生設計を大きく間違えたことになる。人は一人で生きて生きられない。できることなら、誰かと暮らすのが最善で、その中でも妻や子供は最良なものだ。
しかし、私は早くに一人暮らしを覚悟した。なぜなら絵描きの道を選んだからだ。絵描きには二通りいて、結婚して伴侶に働かせて絵を描き続ける人と、貧乏でも平気なように独り身を選ぶタイプだ。どちらが多いかは、私の印象では半々の気がする。もつと詳細に言うと、伴侶がいて素晴らしい作品を生み出している人は少ない。多くの妻帯者は生活維持のためにアルバイトに忙殺され、制作がおろそかになり、結婚を悔いる者も多い。この選択のどちらが正しいか、誰にも分からない。いずれにせよ結果は受け入れる他ないものだ。
「老いたら反省も後悔もするな」これは自作の座右の銘である。毒を食わば皿まで、絵描きを選んでこの歳に達した以上、振り返ったり反省したりせずに、一直線に前へ進む他ない。しかし、決意したとしても厳しい生き方に変わりはない。もしこの道を選びたいと思っている若者がいたら熟考して、できるなら普通を選んだ方がいい。
荒川土手。広々として気持ちが良い。
散歩している人は多いが、広過ぎて殆ど目に入らない。
荒川河川敷と土手は、東京とは思えない広大さを感じる。絵描きに転身した頃、毎日ここに来て「アメージンググレース」を聞きながら、夕日を眺めていた。そのおかげで、滅入りがちな心の均衡を保つことができた。今もこの風景に感謝している。
東京北社会保険病院庭にて、
ハナミズキの紅葉が始まった。
今年の秋は早い。
実は鳥に食べられて少なくなっていた。
秋から冬へ、
あじさいの花はこの形で過ごす。
この姿からも、花びらに見えるものは萼(がく)であることが分かる。
花の化石のようなこの姿も好きだ。
静かなり黎明の空 椎を炒る
朝、椎の実を炒った。
母が逝ってからの一人の朝は静かで、まだ慣れない。
早く慣れるためにあえてテレビは止めている。
このくらいの量が丁度良い。だから、沢山拾わないようにしている。
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