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2011年11月 7日 (月)

1998年ブラジル映画「セントラルステーション」は長く記憶に残る名作だった。11年11月7日

ブラジルの文盲率は高い。元教師の初老の女性ドーラはリオデジャネイロ中央駅構内に机一つを置いて、字の書けない人相手の手紙代筆業を営んでいた。

彼女は代筆を通して人間の裏面を見せつけられ失望し、代筆した手紙を投函せずに破棄するようになった。
ある日、そのドーラに9歳の少年ジョズエを連れた母親が夫宛の手紙を代筆してもらった。しかし、彼女はその手紙も投函しなかった。

翌日、少年ジョズエの母親は中央駅前で暴走して来た大型バスに轢かれて即死した。不憫に思ったドーラは後に残されたジョズエを保護した。

ドーラたちの露店を仕切っているヤクザのエピソードは、ブラジルの知られない裏面を端的に描いている。所場代を得ているヤクザは、露店から安物の商品を一つ盗んで逃げた黒人の若者を追いつめ、遠く、乗客たちがホームから眺めている線路上で容赦なく射殺した。

それは、リオではありふれた事件で、警察が来て捜査することはなかった。
当時のブラジルでは、警官も泥棒などを捕まえるとその場で射殺していた。刑務所が満杯で、捕まえても収容できないので黙認されていたようだ。

ジョズエの母親を轢いた大型バスも、警察が来て事故検証をすることはなく、少年ジョズエは公的機関からも保護されずに放置され、その瞬間から浮浪児として生きて行かなければならなかった。

ドーラが保護している少年ジョズエに先のヤクザが目を付けた。彼はドーラから500ドルで少年を買い取り、欧米への養子斡旋業を偽装した業者に1000ドルで売り飛ばした。

その斡旋業者の実態は臓器売買で、少年は臓器移植の病院へ送られ臓器を抜かれて殺されることになっていた。親友からそのことを非難されたドーラは後悔し、仲介業者からジョズエを奪い取り、なり行きで彼の父親探しの旅に同行することになった。


---映画は導入部で、ブラジルの暗部を見事に描いていた。
次期オリンピックの開催国で、治安の安定を図っているようだが、先日も麻薬マフィアと警察隊の銃撃戦があり、防弾チョッキ着用のカメラマンが射殺された。マフィアが貫通能力の高い特殊弾丸を使っていたからだ。その少し前は日系農家の集落が強盗団に襲われ、銃撃戦の末、日系人一人が死亡している。

出稼ぎ日系人が日本にいるのは、そのような本国の治安の悪さがあるようだ。それらの事件を見ると、治安の悪さは映画脚本が書かれた20年前とさして変わらないようだ---


映画は荒んだリオから乾いた高原地帯のバスの旅に変わった。ブラジルと言えば高温多湿のアマゾンを連想するが、首都ブラジリアがある内陸部高原地域は乾燥していて涼しい。しかし、その一帯は水資源が乏しく、ブラジリアを除くと貧しい農村地帯だ。その乾いた荒野とバックに流れる抑制した切ない音楽が実に良い。ブラジルでは陽気なサンバを思い浮かべるが、そのような静かで思索的な曲も多い。

旅で出会った男や、父親と思った人違いの男性たちの大らかさも良かった。
彼らに助けられながら、二人は無一文で、貧しい農村地帯で行われる聖母マリアの祭りに辿り着いた。

ジョズエのアイデアで、祭りで聖母マリアへの手紙の代筆屋を開くとたちまちお金が集まり旅が続けられた。その時、代筆を頼む客役の現地エキストラたちの素朴さは実に良かった。

やがてジョズエは実の兄二人に出会い、ドーラはジョズエを託して去って行った。

早朝の広い空と、荒野を去っていく大型バスの最後のシーン。最初意固地で可愛げがなかったジョズエが、素直な少年に変化していく姿。偏屈な老いを漂わせていたドーラが、優しい本心を滲ませる後半。ブラジルの乾いた高地に繰り広げられたドラマは詩情あふれ、深く心に染み入った。
この映画は間違いなく、生涯、長く記憶に残る名作の一つだ。

下はDVD画面をカメラで撮影した動画。
画面をクリックすると再生が始まる。



マリア堂前の炎は天然ガスが燃えているもの。
ドーラはジョズエに、母親の冥福と父親との再会を願って、形見のハンカチを結ばせた。
群衆は聖母マリアの祭りに集まった近在の人たち。
このエキストラたちの、ゆったりと歩く姿も実にいい。
なぜかこのシーンに、子どもの頃過ごした南九州の漁師町の乾いた風景が重なった。

この映画脚本は1996年、サンダンス・NHK国際映像作家賞を受賞し、その賞金で映画は1998年に制作された。賞はNHKとサンダンス・インスティテュートの共同開催だ。

映画は1998年第48回ベルリン国際映画祭の金熊賞、銀熊賞及びエキュメニカル審査員特別賞を受賞した。また、アメリカで第56回ゴールデングローブ賞で最優秀外国語映画賞を受賞している。その頃にNHKで放映されビデオに録画したが良好ではなく、長い間、同時発売のDVDを探していたが、やっと去年、ネットで未開封の新品を見つけて一万五千円で買った。


下は、映画とは対照的に秋の雨にけむる日本の原風景。
赤羽自然観察公園古民家と稲刈りを終えた田圃。


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古民家では催し物をしていて和太鼓の音が響いていた。


T1T8T7T_6T11T16緑道公園。
最近知り合った若いコーギー。
この後、濡れた前足で飛びつかれて閉口した。

ヌルデの実。赤羽自然観察公園。
この実が分泌する結晶は塩っぱい。
それは塩ではなく、リンゴ酸カルシウムの結晶。昔、塩が貴重品だった山国では塩の増量剤として使った。

 振り向けば ムラサキシキブの 雨しずく

赤羽自然観察公園。
遊歩道は静かだった。

マユミの実。
これから寒くなるにつれ、葉も実もピンク色に変化して、とても可愛い。

古来の伝統建築の中で聞く和太鼓は格別だった。

赤羽台団地から遠く十条方面を眺める。
足元はぶ厚い苔でおおわれ、フワフワしていた。


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Goof

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