"ロミオとジュリエット"は何故に激しく人生を駆け抜けたのか。12年2月16日
映画は iTuns Store でダウンロードして見ている。タイトル数が少ないのは不満だが、画質と音は素晴らしい。先日は"ロミオとジュリエット" 伊フランコ・ゼフィレッリ監督1968年を見た。ロミオ:レナード・ホワイティング、ジュリエット:オリビア・ハッセー 音楽:ニーノ・ロータ。"ロミオとジュリエット"シリーズの中で一番の傑作と言われている。
劇中での年齢はジュリエット14歳、ロミオはそれより少し上だろう。役のオリビア・ハッセーの実際の歳は17歳、レナード・ホワイティングは18歳で、数多い"ロミオとジュリエット"作品の中で一番設定年齢に近い作品だ。それだけに二人の初々しい清純さや情熱が際立っていた。
シェイクスピアがこの戯曲を書いた16世紀末は乳児死亡率も高く、普通の人は40歳くらいまでに簡単に死んでいた。劇中でのジュリエットの母親は28歳。父親はせいぜい30代前半だろう。それでも二人は劇中では成熟しきった大人の風貌をしいた。もし、現代でその年齢設定なら、若者劇の範疇にはいる。
それでも、当時、絢爛たる文化が完成しているのは驚くべきことだ。建築でも工芸でも芸術でも、作っていた職人はせいぜい30歳前後のはずだ。そのように早く成熟できたのは、十歳くらいから修行を始め、二十歳くらいで一人前になり、二十七、八で親方になっていたからだ。
だから、14歳のジュリエットの青春は残り2,3年で終わり、後は子育てと家事で死ぬのを待つばかりの人生だったはずだ。ロメオの置かれた状況もそれと殆ど変わらないだろう。
"ロミオとジュリエット"の二人の出会いから死に至る期間は1週間程だ。その短い間に濃密に愛し合い、結婚し、手違いで死んでいる。
当時は、時間を惜しみ、懸命に恋をして生きないと人生はあっという間に終わってしまっていた。今のように40歳過ぎての初婚など想像もできない。40歳では孫がいるのが普通で、死が目前の年齢だ。だからこそ、若い二人は必死になって熱い恋に突き進んだのだろう。
今から見ると不幸な時代に見えるが、それは少し違う。
当時に比べ、現代人は長い人生を無駄に怠惰に過ごしているように思えてならない。たとえ、90歳まで長生きできたとしても、一度でも激しい恋いに燃え上がったことがあるだろうか。背水の陣で、真剣に人生に立ち向かったことがあるだろうか。殆どの人は可もなく不可もなく老いて、生きているのを嘆きながら緩慢な死を待つばかりだ。
抑圧された恋が燃え上がるのは今も同じで、それが作品の魅力になっている。
しかし、それだけではない。見終わって、残された時間がどんなに短くても、熱く生きることができる、という確信を持てた。
もし、日常がつまらなかったら、もう一度この作品を見ると良い。もしかすると、忘れていた情熱が蘇るかもしれない。
参考に・・
1996年米バズ・ラーマン監督作品、ロミオ:レオナルド・ディカプリオ、ジュリエット:クレア・デインズも見た。こちらはジュリエット役が角張った男顔で清純ではなく、作品を台無しにしていた。しかし、女性達には人気があったようだ。
こちらの舞台は現代の架空都市ヴェローナ・ビーチ。二つの家の争いのために作られた小道具の銃が大変に美しかったことが印象に深い。
現代置き換えの名作に"ウエスト・サイド物語" 米ロバート・ワイズ&ジェローム・ロビンス監督1961年がある。見たのは高校生でナタリーウッドの魅力が鮮烈に残っている。この映画でジョージ・チャキリスがプエルトリコ系不良グループのリーダーを演じ、衝撃的にデビューした。
下の画像をクリックすると出会いの場面と大ヒットした主題歌がyoutubeで開く。
参考に上の動画で歌われていた歌詞を下に記す。
若さとは 激しく燃える炎
乙女とは 冷たく熱い花
いつの世も バラは咲き やがて朽ちる
若さも同じ
そして 乙女の美しさも
あの甘い微笑みは 時が来れば消える
心を焦がす愛も
恋を陽気に楽しむ者 ただ苦しみ悩む者
キューピットは 万人に愛をささやく
踊り歌う恋人たちを 黙らせるのは死
愛は蜜より甘く 飽くことのない喜び
愛は胆汁より苦い 愛の使者の気まぐれ
オリビア・ハッセーは1980年歌手の布施明と結婚した。一男児をもうけたが1989年に離婚し、アメリカ人ミュージシャンのデヴィッド・アイズレーと結婚して一女をもうけた。現在は61歳で、当然ながら17歳の清純さはどこにもない。
雨止みて 馬泥濘の丘駆け上がる
写真は赤羽自然観察公園の古民家と田圃。
亡姉の夫は北海道出身だ。早春の黒土に春を感じると、よく話していた。
緑道公園の濡れた土に義兄の言葉を思い出し、北の大地を想って詠んだ。
赤羽自然観察公園のネコヤナギ。
銀色の産毛に着いた雨粒がキラキラと美しい。
寒い雨の公園には誰もいなかった。
緑道公園
冬の道 母は月日と遠く去り
毎日、車椅子を押して、この道を赤羽自然観察公園へ向かった。
病葉を労るように寒椿
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