久しぶりの春日射しに思う。12年2月20日
生活は厳しく、生き残れるか不安になる。しかし、母の介護をしている頃ほどの追いつめられた気持ちはない。ゆとりがあるのは、この日射しのせいかもしれない。
東電の脅しに屈しまいと暖房は使わなかった。国民が節約すれば、原発を再開しなくても電力不足は起きない。
私たちはもっと寒い冬を過ごしていた世代だ。このくらいの寒さは何ともない。不思議なことに、暖房なしの今冬はまったく風邪を引かなかった。
母の部屋へ入ると日当りが良く、母の香りがした。太陽と白檀の香りが母の香りだ。白檀は仏壇の線香、太陽は日射しで膨らんだ布団の香りだ。
外出すると暖かい日射しが懐かしい。駅前への何気ない通りにデジャブを感じた。50年近く昔、彫金の修行をしている頃、使いに出た時の日射しがふいに蘇った。
バス停の 人待つ椅子は眠た気に
誰かが置いた白木に生成りのキャンバス張りの新しい椅子だ。まるで、素敵な人に腰かけてもらうのを待っているように見える。しかし、腰かけるのは桐ヶ丘都営団地の老人ばかりだ。素敵な人が腰かけてくれるのを待つ内に、古ぼけてゴミにされてしまうのだろう。
赤羽自然観察公園へ行った。相変わらず喪失感を覚える。様々な植生があった下生は里山再生の名目で芝生のように刈り取られた。腐葉土になる枯れ葉は熊手で集められ、樹木は不自然に剪定されている。
手入れしている草刈りボランティアたちは、人手が入らないと自然は滅びると思っている。そうだとしたら、太古からの原生林は存在しないことになるのだが・・・
暖かくて、先日の雪が嘘のようだった。
ハンの木の 莟膨らむ冬日射し
枯れているように見えるが、莟の奥は瑞々しい緑だった。
雪溶けて 芝生に影引く冬木立
深々と 雪舞う闇に父母の顔
先日の深夜、玄関を開くと夢のように雪が舞っていた。それは死んだ父母や兄姉たちが別れを告げに来たように見えた。
寅さんの団子屋のおばちゃん役三崎千恵子が死んだ。90歳になっていたとは思いもしなかった。下町のおばちゃんの雰囲気は他の役者では出せず、「男はつらいよ」シリーズでは終始レギュラーだった。寅さんの渥美清もタコ社長役の太宰久雄も鬼籍に入り昭和はますます遠くへ去ってしまった。
以前なら、
「さびしいね」と、母に話しかけただろう。
それに、母はきまって「さびしいよ」と、ちょっと語尾を上げながら答えていた
芸能人だけでなく、親しくしていた人が次々と去って行く。そのつど「さびしいね」と独り言をつぶやいている。
母との死別後、1年半くらいはいつも母のことが頭にあった。今は、春めいた女の子の姿が目にとまる。そして、バカバカしいこと、不道徳なことを妄想している。やっと頭が正常化したようだ。
1月の貿易収支は大赤字。しかし、株価は9500円に達した。赤字が続けば円安に振れ、輸出企業の業績が回復するのと読みだろう。直下型地震・残留放射線・少子高齢化・福祉、年金、健康保険の崩壊と世間には不安が淀んでいる。それでも、この日射しの中を歩いているとのんびりした気持ちになる。
昨日の夕暮れの御諏訪神社下。新しい宮司は木を切るのが好きで、深い木立を丸坊主にしてしまった。母の車椅子を押している頃、真夏の炎天からこの木陰に入ると涼しい風が斜面を吹き下ろし、とても気持ちが良かった。もし、母が生きていたら落胆したことだろう。
星美学園への師団坂を上り切ると東京北社会保険病院。その少し手前にこの肉屋がある。各種の食肉が置いてあるが、最近は鶏の唐揚げが人気で、揚げる端から売り切れる。
唐揚げで 頭満杯ワンコの尾
ワンコの左前足の仕草が、我慢しているようで可愛い。
飼い主はのんびり待っているが、クゥーン、と我慢している声が聞こえそうな風情だ。一生懸命、早く早くと、よそ見もせずに待っていた。
天皇陛下の心臓手術は成功した。国家で管理される命は辛いかもしれない。私は最期が来たら、何も治療を受けずさっさと行ってしまいたい。
しかし、さいたま市北区のアパートで餓死した親子三人は悲惨だ。その一方、働く能力があるのに生活保護を受け、低家賃の公営住宅で温々と暮らす若者もいる。なんという落差だ。
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