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2012年3月 7日 (水)

NHK"東北Z・被災地の目線で児玉龍彦"の低被曝警告に思う。12年3月7日

去年見た児玉龍彦氏の国会での発言は力があり感動した。東大の人にしては実行力のある尊敬できる学者だと思っている。しかし、この番組の氏の発言には疑問が残った。彼が言うように低線量被曝でも発ガンがあるのは事実だが、問題は何%がん発症が高まるかだ。0,1%と1%では10倍違う。番組中で数字をあげないと、若い母親たちに、いたずらに恐怖心を煽るだけになる。

氏は "チェルノブイリで主として未成年者6000人に甲状腺がんが発症している、同じように福島でも" と言ったニュアンスで発言していた。それは事実だが、具体的な比較が加わらないのは問題だ。

チェルノブイリで多発したのは、大気中の放射性ヨウ素の量が多かったこと、放射性ヨウ素を含む食品、主として牛乳を子供たちが飲み続けたから、と聞いている。対して福島では汚染食品の摂取は制限されていた。加えて奥地でもヨウ素不足にならない海洋国家の日本と内陸部のチェルノブイリでは、事故前に子供たちが甲状腺に保持していたヨウ素量の違いもあるはずだ。甲状腺がすでにヨウ素で満たされていると放射性ヨウ素は蓄積しない。その仕組みを利用したものが被曝防止のヨウ素剤だ。だからチェルノブイリと福島を同列で語るには問題がある。ぜひにその根拠と、具体的な数値の違いを聞きたかった。

放射性セシウムで尿路系にガン発症も発言にあった。こちらも、発症率を述べていない。チェルノブイリでの放射性セシウムによるガン発症率は極めて低かったように記憶している。氏は言わなかったが、放射性セシウムの体内移行を防ぐ方法は開発可能だと思っている。可能な除染は総て行うべきだが、移行防止で内部被曝を防ぐ方が現実的だ。幸いなことに、セシウムは粘土などに強固に結びつき、体内に吸収しにくく、吸収してもすぐに尿と共に排出されて体内に留まりにくい。がん発症が小さいのはそのような理由によるものだ。

どんなに嫌いでも我々はこのおぞましい放射性物質と生涯付き合わなければならない。すべてを除染できれば最善だが、今の国力では広大な山野までは不可能だ。学者である氏が厳格な発言をするのは正論だ。しかし、一般向けの発言としてはそぐわない部分がある。日本の現状を考慮すると、一定ラインから向こうは気にしない姿勢が必要になると思っている。学者は理想を語るが、一般国民は現実に沿った生き方を選択する他ない。

自然放射線量が元々高い地域は世界には沢山ある。日本でも大昔からホットスポットがあり、そこで暮らして来た住人がいる。職業的に高レベルの自然放射線に晒されるパイロットや客室乗務員もいる。彼らを調査した低線量被曝の影響は既に数字に出ているはずだ。学者として危険性を問う姿勢は正しいが、社会的には数値を言わないとただの煽動家になってしまう。煽動によって心を病み自殺に追い込まれるケースがあることを考慮して欲しい。

私の周辺にも、一個の細胞ががん化したらそのままがん発症に至る、と信じている若い主婦がいる。別のNHK番組で免疫学の学者が、1日5000個のガン細胞が生まれているが、免疫細胞の修復によって通常はがん発症に至らない、と話していた。児玉氏は専門の遺伝子損傷については詳しく話していたが、むしろ、具体的な危険性を数値で話して欲しかった。国民はその数値を承知した上で住み続けるか避難移住を決断するはずだ。

付け加えると、原発反対と被曝はリンクさせてはならないと思っている。低線量被曝を不必要に恐れるな、と言うと原発賛成派と決めつける図式はきわめて危険だ。私は原発反対だが、低線量被曝を不必要に恐れない派だ。

参考に、被曝を限りなく0にすると、免疫機構が不活発になり、却ってがん発症率が高まるとした研究がある。

注-実際は食物にも必ず自然放射性物質を含んでいるので放射線0は現実には不可能である。放射線の毒性は自然も人工も同じ。体内被曝は体内に留まりやすい物質ほど毒性は強い。ストロンチウムが恐れられているのは骨に取り込まれ殆ど排出されないまま放射線を出し続けるからだ。

1979年東京での国際放射線研究会議で「自然放射線の非常に高い地区に住んでいる住民の肺癌の発生率が低い」と中国代表が発表した。それにスリーマイル島事故の調査委員会が注目し、中国に調査団が派遣され、それ以降、放射線ホルミシス研究が盛んになった。

放射線ホルミシス---大きな被曝は明らかに有害だが、小さな被曝では免疫細胞を刺激し、以後の高被曝への抵抗性をもたらす効果。

世界の平均自然放射線被曝量は、ブラジル(ガラパリ)10ミリシーベルト/年。インド(ケララ)5〜10ミリシーベルト/年。中国(陽江)6ミリシーベルト/年。アメリカ(デンバー)4ミリシーベルト/年。イタリーとイギリス2.2ミリシーベルト/年。今の東京1.5ミリシーベルト/年。
以上でガンが多発している地域はない。どれも世界平均と同等だ。それらにたいする反論も、児玉氏からぜひに聞きたかった。被曝を恐れる人たちは恐怖を煽る部分だけを選択し、心配していない人たちは安全面だけを選択する。専門家はその傾向を念頭に慎重に話して欲しい。

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 夕みぞれ 黙して歩く鉛道

午前2時。闇の中冷たい雨が落ちている。去年は辛夷が咲いていたのに、今年は大きく遅れそうだ。

画像-3月4日赤羽台。

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 さよならを 告げれど醒めぬ 血ぞ悲し

3月は別れの季節だ。そう言えば、蛍の光りを聞かなくなった。別れは人生の大切な一瞬なのに、震災以来、深い哀しみを伴うようになった。

画像-3月4日、桐ヶ丘都営団地。

青色申告の季節だ。払う程に稼いではいないが、一応、領収書の整理をした。

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