昔はどの土地にも、寡黙で強く優しい無名の老人がいた。12年4月22日
仕事が無くても遊びに行く。それが危機を乗り切る活力に繋がるからだ。そのように、繰り返し絶体絶命の危機を乗り越える私を友人たちは悪運が強いと言う。しかし、本当に悪運が強いのなら、危機に陥る前に避けているはず、と思っている。
たとえ、悪運が強くても、仕事が不調な時は順調な人が羨ましくなる。健康を損なっている時は、健康な人ばかり目に入る。失恋した時は、仲のいい男女が気になる。凡人はいつも何かを羨むようだ。
今、成功を願っているが、もし成功を手に入れたら、次は健康を悩み始めるはずだ。健康に問題がなければ、災害とか、孤独とか、次々と悩みを見いだす。そんなことをくだくだ考えていたら、子どもの頃可愛がってくれた隣家のお貞さんを思い出した。
彼女は当時六十代だった。漁師だった夫を早くになくし、女手一つで男の子を育て、家の裏で小さな畑を耕し、天秤棒で魚を担って遠い農村部まで売りに行っていた。勤勉で寡黙で、母は彼女ほどに優しく強い人はいないと話していた。
敗戦直後の食糧難の時代で、その小さな漁師町にも食料を求める人たちが町からやって来た。
ある日、お貞さんが作っていたカボチャが盗られ、代わりにお金が結びつけられていた。お貞さんは、お金なんか気にしないで、黙って持って行けば良いのに、と持って行った人に同情していた。
後年、お貞さんに体の不自由な孫が生まれた。しかし、愚痴一つ言わず、いつも背負って可愛がっていた。
今、思い返すと、お貞さんの運命を決然と受け止める姿が眩しく見える。
昔はどの土地にも、そのような無名の老人がいた。
東京北社会保険病院庭の新緑。
春は素晴らしいのに、何処か寂しい。それは、溢れる生命がはかなさを際立たせるからかもしれない。
雨上がり 涼しき梢 空仰ぐ
驟雨去り スズメの腹の 水しずく
同じ雲でも、春の雲は瑞々しい音楽を感じる。
ハナズオウ 住まい近く。
シャガ 赤羽駅近く。
繊細に編まれたレースのように美しい。
自然の造形の妙に感動する。
サトザクラ。
赤羽台団地。
長大な並木があるが人気はなく、花見をしている人は希だ。
この桜は一本だと良いが、集団だと可愛くない。この派手さが嫌われているようだ。
ツワブキを 摘みし山野の 日々遠し
赤羽駅近く。
九州ではフキと言うとツワブキを指す。
子供の頃は産毛に覆われた若い茎だけを摘んで来た。帰るとみんなで指先をアクで茶色に染めながら皮むきをした。そのあと母は大鍋てカツオのナマリと甘辛く煮てくれた。
昔はツワ摘みは子供の仕事だったが、今の子供はしないようだ。売っているのは畑で栽培されたもので、堅くて不味い。
成長して堅いのは オンジョ -おじいさん-と呼び、採らなかった。
なまりは鰹節の産地だったので、大変安い食品だった。
春雷に 鬼火きらめく キランソウ
ジゴクノカマノフタの別名。
東京北社会保険病院庭。
可哀想な命名だが、紫の花が鬼火に見えなくもない。
薬効、鎮咳、去淡、解熱、健胃、下痢止。
友人の祖母が胃を病んでいて、一緒によく採りに行った。
コスミレに 足止められて もの思う
東京北社会保険病院庭。
コスミレはとても小さく、クローバーと同じくらいの高さだ。
だから、気を付けないと踏んでしまう。
見かけによらず強い野草で、生き残った可憐な花を見るとホッとする。
夜桜の 少女の声に 胸騒ぎ
新河岸川の船着き場のしだれ桜。
しだれ桜は、桜の中でも突出して和風だ。
夜の散歩はこの桜を一回りして引っ返す。
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