« 40年前の白昼の夢 12年5月14日 | トップページ | 上京し挫折していた頃。 "ジムノペティ"の題名で雑誌に書いた。12年5月19日 »

2012年5月16日 (水)

一般的に知られる物語は、伝承された物語の中では極めて特殊なものだ。12年5月16日

 日本にタピオカが登場した40年近く昔だ。幼い姪たちに食べさせようと銀座へ連れて行った。銀座場末のその中華料理店は、カウンター席のあるラーメン屋のような店だった。

料理を食べ終え、最後にカカオミルクに入ったタピオカが出て来た。姪たちが珍しそうに聞くので「これはカエルの卵だ」と教えた。姪たちが「いやだー」と騒ぐと、カウンター内のヒゲの料理人がジロリと見た。慌てて「これはただのお団子だから」と静かにさせた。

「こんなに小ちゃなお団子、どうやって作るの」
早速、姪たちが聞いた。
「ヒゲのおじさんがこちらを見ているだろう。聞こえるとまずいから静かに聞きな、と小声で話した。

・・・夜中、店を閉めた後、大きな鍋でお湯をクツクツ沸かして、小人たちが回りをかこむんだ。
そして、小ちゃな手でお団子を丸めては、次々とお湯の中に放り込むんだ。
作り方が遅い小人は、あのビゲのおじさんが爪楊枝でチクチク突つくから、みんな一生懸命作るんだ。
そして、やっと仕事が終わる明け方に、ジャムの空き箱に入って落花生を枕に泣きながら寝るんだ。

話し終えると、姪たちはタピオカを美味しい美味しいと食べながら、料理人を睨んでいた。
姪たちに睨まれたヒゲの料理人は訳が分からず困惑したことだろう。

 その頃、姪たちは白雪姫のことをリンゴ姫と思い込んでいた。
白雪姫のストーリーをちょっと変えて話してあげたからだ。

・・・意地悪な魔法使いの継母がリンゴをくれたところまでは白雪姫と同じだが後は違う。
毒リンゴを囓ったお姫様は大きなリンゴになってしまった。
大きなリンゴを見つけた小人たちは大喜びして、後でアップルパイを作ろうと新鮮保護パックに包んで冷蔵庫に入れて出かけて行った。
そこに、とってもとってもお腹を空かせた王子が通りかかった。留守の小人の家を見つけて王子はしめしめと忍び込んだ。そして、台所の冷蔵庫を開けると、そこに美味しそうな大きなリンゴがあったので夢中でがぶりと噛みついた。
するとたちまち大きなリンゴは美しいリンゴ姫に戻った。
王子はがっかりして、すがりつくリンゴ姫を振り切って出て行ってしまった・・・

 愛より食欲が強いと教えた姪たちは孫が出来そうな歳になった。私の教訓が悪かったのか、姪たちの離婚率は高く、まっとうに結婚生活を続けている者はいない。

弁解すると、世界各地のおとぎ話は本来そのようなものだ。今年始めNHKの深夜放送で市原悦子が朗読したおとぎ話もそうだった。

 それは各地にある "鶴の恩返し" の別バージョンの一つだ。

・・・ある日、男が蛤を助けてあげると、その夜、美しい女性が訪ねて来た。
男は喜んですぐに嫁にした。
毎朝、嫁は男にこの世のものではないほどに美味しい吸い物を作ってくれた。
ただし、「作る所を絶対に見てはなりませぬ。」と嫁は男に厳命していた。
しかし、男はがまんできず、ある朝、禁を破って嫁が料理する姿を覗き見てしまった。
すると、嫁は鍋にまたがって鍋にオシッコをしていた。
男がビックリして腰を抜かしていると、
「見てはいけないと申しましたのに・・・見られてしまったからには嫁でいる訳にはいきません。」
嫁は家を出て行って元の蛤に戻ってしまった。

 世界各地に語り伝えられて来たおとぎ話の中で、少数のものだけが近代思想のふるいにかけられて残った。だから、我々が知っている物語は、本来の伝承物語の世界では極めて特殊なものだ。

それが良いか悪いか早計には決められない。多くの民衆が語り伝えた物語はそれなりの力強いリアリズムと深い意味がある。だから、闇に消し去ってはならないと思っている。

Pagu_2

画像はパグに変えられた王子さまの物語・・私創作

Ma_3

Ma_4

Ma_5

|

« 40年前の白昼の夢 12年5月14日 | トップページ | 上京し挫折していた頃。 "ジムノペティ"の題名で雑誌に書いた。12年5月19日 »