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2012年7月 1日 (日)

原発再稼働の数百倍の危険と一般人の半分が在宅で死を迎える軋轢。12年7月1日

いつも開け放ったままの窓から、クモが入って来て、パソコンに巣を張り始めた。
それは困るので、捕まえてベランダの植木に逃がした。

今日は母の命日だ。花と供物が知人から届き、母を世話してもらっていたヘルパーの二人が花を持って来訪され、いつもは静かな住まいがにぎやかになった。

先日金曜日、ベランダに出ると夏空に白い雲が浮かんでいた。夏日射しを受けたスカイツリーが雲を背景にすっくと立っていたのが心に残っている。気がつかない内に季節は夏に変わっていたようだ。この何でもない風景が心に残っているのは、俯いて絵ばかり描いていたからかもしれない。

その日の夕暮れ、特集番組で独居老人の死を見た。
今、医療制度は後退し長期入院が難しい。番組で取り上げられていた胆管ガンの老人は治療が終わる前に退院させられ、アパートへ戻った。すでに、重篤な病でも長期入院は難しいと覚悟しなければならない時代に入っていたようだ。

老人を世話する家族はなく、7人のヘルパーが交代で時間外も無償サービスで対応していたが、彼は1週間ほどで在宅で死去した。

彼は夜中看取る者なく死去したが不幸ではない。彼は生前、孤独死を覚悟していたはずだから、思いの他、皆が親切にしてくれたと思って死んだだろう。それは、死んで行く我が身を取材に晒した代償で、彼にとっては最期の最高の贈り物だったかもしれない。

2030年には半数の人は自宅で死去する。その体制が整備されるなら、それは良いことだが、その頃は介護保険は破綻寸前で家族は過酷な介護を強いられる。
更に、先の老人が受けたようなサービスは無理で、私は一人でどう死ぬか覚悟している。

どう死ぬかについては、介護する家族と本人が繰り返し話し合わないと、肉親の死を間近にしての決断は難しい。
私は母と何百回となく、在宅で延命治療はせずに私が看取る、と話し合い確認した。それでも延命拒否と入院拒否には大変な決断が必要だった。
もっとも、これからは医療制度自体が延命措置はしない、最期は在宅でが基本方針なので悩むことはない。とても大変なことだが・・・

Rojyo

絵は、昔描いた装丁画。
「老女の聖なる贈り物」プリシラ・コーガン著
背景が気に入らなかったので描き変えた。

・・・離婚を経験したセラピストがインディアンの老女の治療を孫娘から頼まれる。
彼女は自分の死を予感し死ぬ日まで孫娘に語った。
孫娘は祖母の頭がおかしくなったと思いセラピストに相談した。

セラピストは夫と別れ寂しい毎日を送っていた。
対して老女は美しい自然の中で夫を愛し、満ち足りた生涯を送って来た。
そして死は自然なもので、恐怖も不安もなくセラピーなど必要なかった。

「お前は、いつも現状に不満を持ち、生活は満ち足りていないようだ。」
老女はセラピストの心を次々と言い当てた。

本当は、病んでいたのはセラピストの方だった。
いつの間にかセラピーの立場は逆転し、次第にセラピストは老女の言葉に癒されて行った・・・

そのような神話的な不思議な内容だった。

彼らの生き方を見ていると、我々が今抱えている病根の総てが炙り出されてくる。 
敢えて言えば、生活の水準を落す覚悟があれば、反原発も消費税も一瞬で解決する。しかし、残念ながら国民にそれを受け入れる覚悟がない。

科学が進歩すれば安全と豊かさを共に手に入れられるが、今直ぐどころか5年後も無理だ。政府が再稼働を強行した背景にその辺りの国民意識の支えがあったのだろう。

日本は、いや世界は、とんでもない核廃棄物の時限爆弾を抱え込んでいる。
日本だけでも、原発廃炉・核廃棄物の25万年安全保管・汚染地の除染などで国家予算以上の天文学的資金が必要になる。なぜなら、日本では巨大で頑強な保管庫を地上に建設する他ないからだ。日本の国土は地下水が豊富で活断層が多く、アメリカや北欧のように地下に穴を掘って安価に保管することはできない。ドイツ・フランスは何十万年も地下水流入の痕跡のない安定した岩塩層などに廃棄物は保管できる。

ドイツが脱原発に成功したのはユーロ安による経済の絶好調と、ヨーロッパ全体で電力を融通し合っている地政学的な利点があった。

残念ながらドイツと日本は置かれた立場がまるで違う。
もし、日本が財政健全化に失敗して、老朽化した原発と核廃棄物が放置されることになったら、近未来の国民はとんでもない危険に晒されることになる。

このまま財政赤字が増えて行くとしたら・・・原発が廃墟化し、耐用年数を過ぎ強力な放射線による脆性劣化を起こし始めている格納容器と圧力容器が放置され、放射性物質を垂れ流す膨大な廃棄物容器の置き場を目にすることになる。

その時、核汚染対策のために福祉もインフラも放棄され、困窮して行く国民の姿が直ぐ先に見える。
反対運動は大切だが、危機的な未来を押さえ込むために経済・技術の国力増強を図らないと、再稼働の何百倍もの危険を抱え込むことになる。
そして、日本の存続を危うくするほどの危険をすでに抱え込んでいることを自覚しなければならない。

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