個展4日目。先日シャネル本店へ行った。12年7月19日
室温30度。サラリとして気持ちが良い。人の生理は夏の暑さにも順応できるもののようだ。
クーラーは生まれてから一度も使ったことはない。母が炎天下の自然公園までの車椅子散歩に耐えられたのは、クーラーがなかったからと思っている。ただし、老人は発汗量が少ないので、たえず服の上から霧吹きで湿していた。それだけで、母はとても涼しいと喜んでいた。
クーラーのある老人たちは夏場には自然公園に来なくなっていた。それをきっかけに秋にも顔を見せず、そのまま寝たっきりになってしまったようだ。
母がクーラーなしに耐えられたのは、日頃、私が徹底的に体調管理をしていたからだ。だから、それを人に薦めたことはない。しかし、若者は体を鍛えるべきだ。昨日記入の電車優先席でスマホに熱中していた若者たちには暗い未来しか見えなかった。
先日、遅刻しそうで慌てて家を飛び出し、ローションをつけ忘れたひげ剃り後がヒリヒリした。
ギャラリーに客はいなかったので、ローションを買いに銀座二丁目のシャネルの本店へ行った。
私は40年前から化粧品はシャネルしか使わない。例えば、ロレックスをつけている人が、もし化粧品がマンダムだったら偽物にしか見えないはずだ。
今使っているアンテウスは30年ほど前に登場してから香りが気に入り一貫して使っている。昔、別れた女性から、人混みでその香りがして私を捜してしまったと言われたことがある。それほどに香りには力があるものだ。
シャネル入り口の黒服に聞いて男性化粧品コーナーに行くとモデルみたいな美しい人が丁寧に対応してくれた。
注文から清算を済ませるまで時間がかかるので、その間、奨められて腰かけて待った。
そこは一段と高い場所で、店内が見渡せ面白かった。
意外なのは来客たちの趣味の悪さだった。成金趣味のファッションに身に付いていないセレブぶりが情けなかった。そのような客たちを毎日見せつけられている店員たちは人生観が変わってしまうかもしれない。
領収書はシャネル専用のバラのレリーフが刻印された白い紙ケースに挟まれていた。
「また、是非お出で下さい。」
美しい人の言葉を耳に残して、とてもいい気分で店を出た。
今日は個展4日目。ようやくこれからの方向性が見えて来た。
先日、役者の地井武男が心不全で急死した。享年70才と聞いた時、やっぱり、と思った。私はその70才まで931日と1000日の大台を切った。
70才を過ぎると私の絵のタイプは厳しい。ピカソのようなエネルギーを集約して一瞬で描く絵とか、長い修練の積み重ねで一気に描く北斎タイプなら90才を過ぎても制作は可能だ。しかし、精緻に丹念にイメージを積み重ねて行く私の絵はとても厳しい。
私は70才までの931日は生涯を集約した遺書としての絵を描く時期だと思っている。
それを今回痛感し、描くぞと腹を決めた。
昨夜も録画の映画をみながら、新しいイメージをスケッチしていた。
画像は以前アップしたものを完成させたものだ。
昔、フランス映画の「異邦人」を見た後に描いた。
それからずいぶん時間をかけて手を入れ続け、個展前日に完成した。
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