健気なクモの巣に失われた風景。12年8月29日
昨夜の散歩の時、5階の非常階段出入り口にクモが巣を張り始めていた。こんなところに張ってもすぐに壊されるのに、と哀れに思いながら通り過ぎた。
今夜、通ると巣は立派に完成していた。巣の真ん中に薄茶色の丸っこいクモが満足げにとまっている。その、楽しい我が家と言った風情が可愛い。どうやら、5階には非常階段を使う人はいないようだ。しかし、5階では虫が少なく、どう考えても営業は難しそうだ。それに、どんなに通る人が少なくても、やがて壊されてしまうだろう。
クモを嫌う人が多いが、どんな場所でも、一生懸命に巣を張っている健気な姿は好きだ。母もクモを嫌っていなかった。母が元気な頃、朝、散歩に連れ出すと車椅子にクモが巣を張っていた。
「せっかく作ったのに、こわしてごめんね。」
母はしきりにクモに謝っていた。そのクモは捕まえて袋に入れ、公園で逃がした。
クモ好きなのは黄金グモを喧嘩させて楽しむ南九州育ちだからだ。子供の頃、どの家でも数匹の黄金グモを大切に飼っていた。だから私たちは山で強そうな立派な黄金グモを見つけると驚喜していた。
霧の日の蜘蛛の巣は水晶のように水玉が連なって、実に美しい。クモの巣はインデアンにとっても特別なもので、悪夢を捕まえるドリームキッチャーであり、自然のつながりを表すものだった。
夜の散歩は緑道公園まで出かけて虫の声を聞く。先週までは夜も蝉が鳴いていたが、今夜は殆ど鳴いていなかった。確実に秋は近いようだ。
虫の声 月と並んで丘の家
昨夜寝る前、以前録画した「男はつらいよ 寅次郎真実一路」を見た。1984年作品で、渥美清・大原麗子・下條 正巳・三崎千恵子・太宰 久雄・笠智衆・津島 恵子と主要出演者は総て亡くなっている。だからか、喜劇なのにどこか寂しさが残る。良い映画は自分の過去と同じ、と言った人がいる。ロケ地の枕崎や指宿は行ったことがないが、育った日南と共通する風景があった。多くは失われた風景で、とても切なく懐かしくなった。
古い映画を見るとその頃の自分は何をしていたか考えてしまう。
上映されていた頃、私は40歳になったばかりだ。寅さんフアンだった70代の母は上映されると必ず、池袋の映画館に観に行っていた。土産を買って嬉しそうに帰ってくる母の元気な姿が懐かしい。
画像はその頃の同窓会の写真だ。恥ずかしながら、この少し前まで繁華街で酔っぱらって、「何処の高校だ」って補導されたことがあった。当時の繁華街には高校などの補導教官がバトロールしていたが、今はどうなのだろう。
女性は写真から15年後に肝臓がんで死んだ。彼女は子供の頃の予防接種でC型肝炎に感染させられた。当時の予防接種では注射器は回し打ちで、シリンダー内に血液が逆流し運が悪いと感染した。
今の注射は使い捨てなのでその危険はない。
母は20回近く繰り返した手術のどれかで、C型肝炎に感染させられたが自然治癒した。
しかし、肝臓がんを置き土産に残され、90歳で大手術をした。手術は成功したが体力は大きく弱った。それでも97歳まで生きたのは持ち前の体力と私の介護が良かったからと思っている。
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