若者へ媚びる可愛い年寄りにはなりたくない。12年10月13日
20年前に大量に買って置いた鉛筆の残りが少なくなったので池袋の画材店へ出かけた。久しぶりに鉛筆の棚を見ると、海外製品が多種充実していた。ヨーロッパの製品はカラフルでつい買いたくなる。愛用していた濃いブラックのstaedtlerのEBはなかったが、10種類ほど買った。
スケッチブックも買った。
中性紙の表示がないのでレジの女性店員に聞くと、その意味が理解できず目が点になっていた。
「ごめんごめん、難しいこと聞いちゃったね。帰ってから試薬でチェックするからいいよ」
気の毒なのでそれ以上は聞かなかった。この店は美大出身が多く、通常は打てば響くように答えが返って来る。
池袋駅でお茶を買ったがIMF世銀総会の余波で、テロ防止にゴミ箱が総て封がされていた。飲みかけのペットボトルの捨て場に困っていたので、その女性店員に処分を頼んでみた。
「申し訳ありません。中身が残っているペットボトルは処分しかねます」
彼女は丁重に断った。それで私は残りを一気に飲み干し、はいと差し出した。すると彼女は更に困り果てていた。
「冗談だよ、忘れていいからね」
私は空のペットボトルを持って画材店を後にした。
帰宅してから、買って来た鉛筆を全部を試し描きしてみた。
結果は国産の三菱Hi-uniが濃淡の諧調と滑らかさで図抜けて良かった。
ちなみに、中性紙とは経年変化をしない高品質の紙だ。以前は酸性紙が多く、年月が過ぎると印刷インクの滲み止めに使われた硫酸アルミニウムの硫酸分がセルロースを加水分解してボロボロになってしまう。
日本画のドーサ引きに使う明礬も同じ作用があり問題視されている。今はペンタイプの試薬が市販されていて、それでチェックするとすぐに色の変化で中性紙の判定ができる。
最近の紙は雑誌用も含めて殆どが中性紙に代わった。買って来たスケッチブックも中性紙だった。
画像は「里の秋」
いつも行っていた赤羽自然観察公園の古民家をモデルにした。
先日の夏日、久しぶりにその古民家を訪ね、誰もいない座敷に上がっていつものように畳に横になった。
畳の冷たい感触を背中に感じながら、天井のシミを見上げていると安らいだ。開け放った障子の向こうに自然林が見え、吹き抜ける涼風が心地よかった。
アベ・マリアの1番を聞き終えた頃、新人の係員が飛んで来て横にならないでくれと起こした。
8年間、毎日、母の車椅子を押して来て、畳の上で横になって休息していたがそんな注意は一度もなかった。係員に聞くと、先日親子連れが1時間ほど寝ていて、他の客が大迷惑していたからと答えた。
古民家はいつも閑散としていて、そのように文句を言っている客など一度も出会ったことはない。以前の顔なじみの係員たちからは「どおぞ上がって横になって休んで下さい」といつも勧められていたくらいだ。
この古民家は日本の伝統的な生活の良さを体験する為に公園に移築された。上からの指示で言っている新人係員に文句をいっても仕方がないので、後日、北区の公園課に手紙を送っておいた。内容は以下のようなものだ。
・・・現在来園者に課せられている管理指針を以下に記しました。その指針と古民家設立の趣旨との間に矛盾ない合理的な説明があるなら従います。
*古民家は体験を空想する所で、実際にくつろいではならない。
*両眼は常に見開らいて覚醒し、一定時間以上、畳に下半身と掌以外を付けてはならない。
*疲れていても、一定時間以上、胴体と頭部と上腕部を畳に付けてはならない。
もし合理的な説明がなく、極めて少数の来園者の讒言に従って規則が改悪されたのなら抗議します・・・
抗議のパロディとして書いたが、それに対して小役人たちがどのような回答を返して来るか、彼らの返事はいつも無理のごり押しだらけで面白い。益々、可愛げない年寄りになりつつある自分に少々困りながら、返事を楽しみにしている。
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