正月番組を総括すると、深夜映画「今度は愛妻家」が良かった。13年1月4日
殆どの人は死がどのようなものか理解している。しかし、この世から親しい人がこつ然と消え去り、二度と会うことも会話することも出来ない現実を知ると深い喪失感に捉われる。それは時間をかけて、十分な介護をして看取っても同じだ。もしも突然の事故による別れであったら、その哀しみは更に深い。そのようなストーリーの映画「今度は愛妻家」を見た。原作は中谷まゆみ。監督は行定勲。
主人公は熟年の、元売れっ子カメラマン北見俊介 -- 豊川悦司。彼は突然の事故で妻さくら - 薬師丸ひろ子-を亡くした。
出だしはクリスマス間近な北見とさくらのほのぼのとした家庭風景。夫の健康に気を配る献身的で明るい妻。しかし、夫はだらしなくいつも浮気を試みようとする。しかし、さくらは突然に現れるので実行できないでいる。
本当は妻さくらはその1年前のクリスマスに夫婦で旅した沖縄で事故死していた。だから、劇中の彼女は北見の幻想である。それはドラマの最後に明らかにされることだが、その事実が分かっていたとしても作品のクオリティーは少しも損なわれない。幻覚でもいいから死者の再来を願うのは最愛の人と死別した誰もが抱く願望だ。
さくらの父親、初老のオカマぶんちゃんを演じている石橋蓮司が実に良い味を出している。彼は中年になってから自分に正直に生きようと、家庭を捨てオカマになった。その転進は、同じように43歳から絵描きに転向した私と重なり、妙に共感を覚えた。
夫北見が「なぜ死んだのか」と幻の妻さくらに語りかけるシーンは胸に響いた。幻の妻を前にして、好きなものを食べ自堕落に暮らせる一人暮らしの気楽さを語る彼には、その言葉とは裏腹な悲しさが滲んでいた。彼は妻を失って初めていかに妻を愛していたかを知った。
総てのアートは単独では存在できない。作品を愛してくれる誰かがいて、作家は創作に集中できる。北見もまた同じで、妻と死別以来、仕事の意欲を完全に失ってしまっていた。
この作品は正月にテレビ放映された映画の中で一番の秀作であった。
2002年に舞台で演じられ評価されての映画化である。ぜひ舞台も見てみたい戯曲だ。
この映画を見る前、日本のある映画評論家の論評に日本映画は韓国映画と比べると活力がなくて劣るとあった。「今度は愛妻家」のような繊細でしみじみとしたドラマを見ると、それは実に乱暴な評論だと思った。
本日朝7時の富士。カメラを構えていると風が身を切るように冷たかった。
大晦日の朝まで生テレビでは阿部政権の経済政策を論じていた。円安株高と早くも新政権のアナウンス効果が出ているが、なぜ民主党政権でそれができなかったのか興味があった。
それによると、世間の気分を景気が良くなると持って行くと、そのアナウンス効果でお金の動きが活発になり、本当に景気が良くなる。それは、経済学のノーベル賞受賞者も言っていることだ。私は高度な理論を駆使して景気対策をするものと思っていたが、実際はそのように単純な気分のものらしい。
民主党の失敗は理論に固執して蛮勇をふるわなかったことにある。とは言え、新政権は金融政策で失敗するかもしれないと予測するアナリストはいる。しかし、失敗を恐れずにやってみる蛮勇も経済原則の一つのようだ。世界経済が萎縮し、歴史上経験のないデフレからインフレへの方向転換しなければならない日本には、いずれにせよ蛮勇は必要かもしれない。
民主党のもう一つの大きな失敗は対中外交だった。その原因は民主党首脳たちが自民党以上に右派だったからだ。これもまた、興味深い論旨だ。その点では新政権は現実路線を取りそうだ。それらへの期待を込めて、株価2万円も視野にはいりそうだ。実際に世界の投資家たちが日本を注目しているで、実現可能な数値かもしれない。
赤羽台団地への道。正月は家族風景がよく似合う。
年賀状を減らす努力をしたが、新しい知り合いが増えて150枚ほどに達した。若者のもらう年賀状の数を調査した結果を読んだが、0枚の者が多くて驚いた。若者たちが孤独だからではなく、メールで済ます者が増えたからだろう。
貰った年賀状できちんと見るのは手書き文字が加えてあるものだけだ。宛名まで総てプリントや、幸せ自慢の家族写真入で相手への思いやりがないものはスルーしている。
相変わらず正月番組はつまらなかった。
ひな壇に芸人が並んでいる画面が出たら即テレビを止める。まったく理解できないのはハワイで過ごす芸能人取材だ。憧れのハワイ航路の時代ならともかく、リッチでもなく寒々とした芸能人の休暇取材に経費を使うマスコミの神経が理解できない。
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