少子高齢化社会では老人の休眠している能力と若者とで日本は再飛躍できる。13年2月23日
世界最速で進む日本の超少子高齢化社会。NHK首都圏スペシャル「プロジェクト2030・わが街を守れますか」では超高齢化が現実となっている東京近郊の団地を取り上げていた。
埼玉県の西坂戸団地は都心から1時間。25年前、文化的な一戸建ての立ち並ぶ街は若い家族連れで活気に溢れていた。そして今、スーパーは閉店し商店街はシャッター通りに変わった。車のない老いた住人は買い物すらままならない。遠い病院は老人で溢れ、住人は話す相手もなく孤独に苛まれ、孤立死も急増した。空き家は7パーセントを越え、2030年は30パーセントに増えると予想される。福祉サービスも地域コミュニティーも衰退の一途だ。
買い物袋を下げ、寂れた街を辛そうに歩く老人の後ろ姿の映像が何度も流れた。そのように17年後の2030年の日本は本当に暗いだろうか。いや、対策はある。行政が思い切った規制緩和をして、予算配分に工夫すれば、若者と老人が共存する活気溢れる社会に転換可能だ。
少子高齢化の原因の一つは、若者が貧しさのために家族を持つ意欲をなくしたことにある。
「だから正社員を増やせ」と声高に言っても、深刻な国際競争に晒されている企業には難しい。解決方法は規制緩和により労働者の流動性を増すことだ。
意外に思われているが、正社員の権利が厚く守られ過ぎることで、企業は無駄な部署に人材を多く抱え込み競争力を弱体化させている。それは非正規社員の給与の安さの大きな原因にもなっている。もし、欧米並みにセーフティネットを強化した上で首切りが容易になれば、企業内の無駄な人員を減らせ、非正規社員の給与倍増が可能だ。
欧米の労働者は日本ほどに失業を恐れていない。なぜなら、失業中のセーフティネットが厚く、再就職が容易だからだ。日本では、無駄な正社員が再就職の望みのない失業を恐れて抵抗する。その結果、経営は圧迫され、非正規の優秀な人材が使い捨てにされている。
若者から技術の研鑽の機会を奪っている現実を変えるには、新しい職場の創出が必須だ。一つの案として、退職した高齢者が、豊富な人脈や知識を使って新規事業を立ち上げ若者の職場を創る方法がある。
日本は世界屈指の高技能高齢者の宝庫だ。私は絵描きに転職する前はトップクラスの彫金職人だったが、蓄えた技術と知識は役立つことなく休眠している。私のように高度の技術を休眠させている高齢者は無数にいる。それらを活用すれば、若者の新しい職場が創出できる。
それは個人では行うには難しい。もし行政の力で増大する空き家を活用して、工房や作業所を作れば若者が戻って来る。年々増大する空き家は、安価な住まい、小規模店舗、保育所、介護施設、工房に転用可能だ。高齢者の知識と人脈と若者の労働力を組み合わせた職場を作れば、非正規労働で疲弊している若者たちは活性化する。
介護、保母、農業、清掃、建物保守などの軽作業なら老人でも働くことが出来る。例えば老人に自給700円で1日3時間、1月20日間働いてもらうと4万の月収が得られる。それは年金生活者にはとても大きな収入増で、もし1万の働く老人がいれば月に4億の金が動き地域経済は活性化する。高齢化社会には膨大な良質の労働力が眠っていると発想を転換すべきだ。
年金生活者は高給を必要としない。ボランティアは次善の策と考えるべきだ。労働に対しては安価でも対価を与える。もし給与が不要な老人がいるなら寄付してもらえば良い。買い物弱者には地域住民運営のスーパーで対応。公費で少し援助するだけでそれは可能だ。
今日の朝日で住宅補修の若手営業マンの逸話が紹介されていた。
彼は定年退職した初老の新人の教育を任された。若者は父親程の新人への教育に嫌気を覚え、いい加減に放置して勝手に営業させた。
結果は意外にも、若手営業マンが日に一件も成約できないのに、初老の新人は連日、日に三件も成約して来た。新人は飛び込んだ家で懇切丁寧にセールスし、分からないことはすぐに電話で確かめて客の信頼を得ていた。若手営業マンはその愚直な姿勢に大いに学ぶところがあった。
他にも老人を採用して成功しているファーストフード店がある。若者と同じ体力はなくても、経験で培われた若者にない知識が老人にはある。
東京北社会保険病院下の公園では中国人の親子が遊んでいた。
少子化の一因に子供を取り巻く環境の悪化がある。昔は医療は劣悪で貧乏だったが子供には安全な社会だった。交通事故は滅多に起きず、子供への異常犯罪も殆どなかった。学校でのいじめも今程深刻ではなかった。今は子供を育てるのにコストもストレスもかかり過ぎ、子供を作りたがらない一因になっている。
若者が、豊かな子育て環境を見れば子供を作る意欲が湧く。
都内の公園の利用者は少なく、時には犯罪の温床になったりする。そのような公園に老人を呼び寄せることで、親は子供たちを安心して遊ばせることができる。例えば、公園に東屋を設けて老人を常駐させ、お茶などを有料で提供する。運営は地域の老人会に任せる。寒い冬は風よけのある日向ぼっこできるベンチに、夏は涼しい木陰に老人たちを呼び寄せる。
いつも老人たちの目があれば、子供たちは安心して遊べるはずだ。同時に、閉じこもりがちな老人に生き甲斐が生まれ、健康維持に役立つだろう。
超高齢化した桐ヶ丘団地の看板。老人の買い物袋がカラスに狙われている。
団地一角に自生しているローズマリー。一枝折って肉の香り付け用に持ち帰った。
公園のカエデの新芽。
オオイヌノフグリ。
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