貧乏の良い点と、相変わらずストリートビューの旅。13年3月5日
朝は冷たかったが好天で、散歩に出る頃には春の暖かさになった。床屋さんの前を通ると主人は手持ち無沙汰だ。
「暇そうだね。刈ってくれる」
声をかけると「ありがたい」と主人は笑顔で迎え入れた。散髪は1ヶ月に一度のペースだが、今回は10日早い。その気になったのはこの暖かさのせいかもしれない。
「仕事はどうなの」
頭をあたりながら聞かれたので「相変わらず、自転車操業。ギリギリで生き残っている」と答えた。追いつめられても、何とかしのいでいるのは母の介護がなくなり、余分な出費が抑えられているからだ。
床屋さんは昔は株で稼いでいたが、バブル崩壊で大損した。おまけに町の理髪業は不況業種で、若者離れに千円床屋の台頭と二重苦だ。最近、客は私みたいな昔からの年寄りばかりになった。この5年、店で子供と若者の姿を見たことがない。
そんな現実から貧乏話しになった。
「貧乏の良い点は長生きに拘らないことだね」
床屋さんが言った。それには私も同感だ。
将来の福祉サービス低下を思うと、貧乏しての長生きは大変だ。その点、金持ちの知人たちは違う。金に糸目をつけず最新医療を受けて長生きに励んでいる。しかし、それまでしても、貧乏だった母程に長生きできないのが不思議だが・・・
「苦労して積み上げた財産を使い切ることなく死ぬのは悔しいだろうな」
そのようにぼやいていた金持ちを想い出しながら言うと、
「最後には、神様はうまくバランスを取ってくれます」
と主人は応えた。彼は経験なクリスチャンだ。
帰りの散歩道にマンサクが咲いていた。この株の花はチリチリとまばらな花弁で、最初に見つけた時は子供のいたずらみたいに情けない花だと思った。しかし、毎年、早春に出会っているうちに、けなげで可愛くなった。マンサクの語源は春一番に「まず咲く」が訛ったものだ。
ユキヤナギの若葉も一斉に芽吹いていた。春はすぐそこまで来ているようだ。
桐ヶ丘生協で食材を買って、桐ヶ丘都営団地を抜けていると、顔なじみのおばあさんが前を歩いていた。以前は健脚で、いつも早足で歩いていたのに、のろのろと遅い。顔を合わせると母の思い出話しをされて長くなるので、私は脇道にそれ、回り道をした。それで5分程は彼女に遅れたはずだったが、本道に戻るとまだ彼女はゆっくりと前を歩いていた。仕方がない。追い抜きながら挨拶して「ごめんなさい。急ぎますので」と先に行った。
この分では、夏にはバス利用になりそうだ。75歳辺りからの老いのスピードは早く、私たちの10年の衰えが1年で起きてしまう。
毎日、小一時間、ストリートビューを見るのが習慣になった。適当にGoogleの世界地図を出して、当たりを付けて画像を出す。今日は米国コロラド州リオ・グランド国立森林公園の149号線を辿った。山の中は針葉樹を主体としたなだらかで雄大な山容が続いた。路傍の清流はマス釣りが盛んで、所々、釣り客用の看板が立っていた。
山間を抜けると牧場が広がる、やや乾燥した草原だ。写真は森林鉄道との交差点だが、線路には草が生い茂り、長く使われた形跡がない。
更に10キロほど進むと、鉄道終点の小さな集落クリード。終着点まで辿ったが鉄道は完全に草に覆われ廃線になっていた。ツーリングの二台のハーレーがいい。前の車の下に斜めに交差する線路。
ストリートビューは北アメリカ・ヨーロッパ・日本が充実している。
アラスカ極北の石油基地を訪ねた時は、行けども行けども平坦で荒涼としたツンドラが続いた。最北端の石油基地はコンテナを雑然と集めた感じで、こんな殺風景な所で1年も働いたら気がめいりそうに思えた。基地労働者の給与が破格に高給なのは理解できる。
ノルウエー北部は一車線の狭い砂利道にもストリートビューがある。撮影は秋の紅葉時期で、フィヨルドとの対比が実に美しい。道路脇の草花。漁具置き場の小さな小屋。まるで車で旅をしている気分になった。
スウェーデンの湖沼地帯の白夜も良かった。その寂しい地方にも必ず人家があって、生活の気配があるのに感動した。
南米の田舎町も面白い。日本人の感覚にはない派手に塗装された住居がとても良い。ただ、治安は悪いようで、どの家も高い塀に囲まれ、窓には頑丈な鉄格子が入っていた。その点、北米やヨーロッパの住宅は開放的だ。
注意点は、2009年以降の撮影は画質が格段に良いが、それ以前は不鮮明で色も悪い。風景の狙い目は海岸沿いや橋の上の眺望が良い。殊にバンクーバー近辺の海岸線の眺望は息をのむほどに美しい。
毎日、ストリートビューの旅をしていて感じたのは日本の自然のきめ細かな美しさだった。ただし、ガードレールと道路標識が不必要に多く風景を損なっているのが残念。そこには国交省天下りの利権が絡んでいるのかもしれない。その点、米国やカナダの田舎道は素っ気ないくらい標識は少なく、すっきりしている。
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