« 病の起源・がんは人類進化が生んだ病。それが豊かさの代償なら受け入れ克服する他ない-NHKスペシャル。13年5月20日 | トップページ | NHKスペシャル・病の起源-2「脳卒中・早すぎた進化の代償」と脳梗塞発見法。13年5月27日 »

2013年5月23日 (木)

高額希少切手と高額現代アートと特許の共通性。そして老子の言葉。13年5月23日

先日の「なんでも鑑定団」で古切手の鑑定をしていた。画面を眺めながら、昭和36年の切手ブームの頃、切手蒐集に熱中していた自分を想い出した。当時は、にわか切手店があちこちに出現し、記念切手の発売日には、小学生から大人まで郵便局に殺到した。殊に、高額取引された「見返り美人」や「月に雁」などは、皆の憧れだった。

番組での鑑定品は関東大震災直後の海外郵便の封書だった。横浜郵便局の消印が焼失して、消印代用として流麗な筆記体が切手に手書きされていた。手紙はロンドンを経由してライプチヒへ送られたものだ。切手が当時の汎用品だったにもかかわらず、封筒宛名面に欧州の都市の消印が残されていて評価は高く140万円以上だった。関東大震災で横浜郵便局が焼失した歴史的事実に、ロンドン・ライプチヒの消印と歴史ドラマが読み取れることへの評価だろう。

私の切手蒐集はブーム終了とともに終わった。集めた切手に価値のあるものは皆無で、その後、本来の使い道に戻し、手紙に貼って使いきった。それでも、今も手紙に珍しい切手が貼られていると心が踊る。

40年前の紅衛兵による文化大革命の頃、中国から毎月、人民日報社から月刊誌が送られて来ていた。内容は日本語で、写真とマンガを交えて読みやすくできていた。内容はチベット領有の正当化や、孔子老子などの思想家の糾弾など、強引でめちゃくちゃだった。しかし、尖閣は中国領とか、沖縄は中国の属国だとかの妄言も反日キャンペーンもなかった。政府レベルでは、今より対日感情は良かったようだ。

その雑誌は北京に在留していた知人が契約してくれたものだ。当時も今も、右翼から左翼まで知人はいても政治的には中立を堅持している。

送られて来た書籍封筒には中国切手が貼られていた。図柄は革命英雄や革命画や毛沢東の肖像だった。日本の切手と比べると粗末で、取っておく気になれずに、すぐに捨てた。

今は文革時代の切手は中国で大人気で、高値取引されている。番組で紹介していた切手は、赤く塗った中国地図が図柄で、対立していた台湾を白抜きにしてしまったために希少切手になった。台湾は中国領が建前の政府は、台湾を赤く塗り忘れたことに気づいて慌てて回収した。しかし、ごく少量が市中に出てしまい希少価値を生んだ。その希少切手が香港での競売会で4600万円ほどの高値がついた。それも秘められた歴史ドラマに対しての高値だ。

中国の庶民たちに、毛沢東は今も崇拝されている。どうして彼らが、あの厳しく不自由な時代を懐古するのか、昨夜のテレビ東京WBS特集「中国政府が進める都市化の影」を見ていてよく分かった。

中国政府の都市化の押し進め方は日本では考えられない程に荒っぽい。都市化政策を推し進める中央政府に従い、地方政府は農民から農地と住宅を安い保証金で強引に取り上げ、何もない所に新都市を建設する。もし、農民が反抗すれば、建設業者は暴徒を雇い強制的に追い出す。中国では連日、膨大な数のデモが行われているが、その殆どにそのような経緯と、建設業者からの賄賂で肥え太る地方役人の腐敗がある。

番組は、地方政府と建設業者と闘っている村を取材していた。村には焼き討ちされた地方政府の車が転がり、戦場さながらの光景だった。

そのようにして追い出された農民は日雇い労働者として、都市建設に従事する他生きる道はない。その日雇い仕事ですら奪い合いで、安い賃金で長時間労働を終えた元農民たち路上に寝ていた。

元農民たちは病気になっても、怪我をしても保障はない。更に問題なのは、3.2兆円もの巨費を投じて建設されたモデル都市が、機能しないまま廃墟になっていることだ。その都市のマンション群は投機の対象で、住人はほとんどいない。

日本でも使い道のない箱ものが大量に作られ、その無駄が問題になったが、中国では今、それが壮大に行われている。これはバブル崩壊そのものなのだが、そうならないのは、国家が強引に押さえているからだ。それにしても危うい国だ。中国投資は慎重にしないと危ない。

そのように、今の中国の底辺の人たちは老後の保障はなく、病気になっても病院にかかれない。その現実と比べ、旧共産党政権の頃は、内容は貧しく厳しくても病院はタダで老後の保障も一応あった。だから今、中国の底辺の人たちが毛沢東を崇拝し、あの時代を懐かしむのだろう。


昨日、Eテレ100分de名著・老子2回「水のように生きる」の再放送を見た。心に残った老子の言葉は「曲がれば即ち全し」---まがれば すなわち まったし---

・・ある所に、役立たずの木と呼ばれる曲がりくねった木があった。棺桶にしてもすぐに腐るし、道具にしてもすぐに壊れる。柱にするとすぐに虫が湧くし、船にするとすぐに沈む。

その木は皆に役立たずと馬鹿にされて放っておかれた。やがて木は大きく成長して、その涼しい木陰で旅人は休み、豊かな緑に住人は安らいだ・・・

実際にも、役に立たない馬鹿と思われていた人が、後で、本当はとても役に立つ人だと分かることがある。老子が言いたかったのはそれで、なかなか深い言葉だ。

トルストイはその言葉を基に「イワンのバカ」を書いた。そして、対英独立運動のガンジーの無抵抗主義に繋がっている。老子は飄々としてちょっと可笑しな、それでいて、したたかな思想家だったようだ。

M_1

東京北社会保険病院庭のエノキの大木。このエノキもゆったりと大きい。

昔、前身の国立王子病院時代、この傍らに、戦前の陸軍病院時代に建てられた病院の寮があった。40年前、始めて見た時、廃屋と思っていたが、夜は看護学校の生徒さんたちが寝泊まりしていた。今の若い人はそのようなヤブ蚊と虫だらけの寮を嫌うが、当時の若者たちは逞しかった。

S_1当時でも、このエノキは大木だった。

たわわに実ったエノキの実。オレンジ色に熟すと香り高く、羊羹に似た食感は甘くて美味しい。


小さな紙片に印刷しただけの切手に高値がつく仕組みは、現代アートと共通する。

先日、バーネット・ニューマン1953年作の、青い画面に縦一本の白線を描いただけの作品がサザビーズ・オークションで現代アート史上最高値の4380万ドルで落札された。それは現代アート史の重要な通過点にあった歴史的作品としての高値だ。

現代アートは特許制度と似ている。共に、先願性で、早く申請、あるいは発表した方に権利が認められる。例えば、マルセル・デュシャンは市販品の男性用便器にサインして、「泉」と題名を付けて、美術館に飾り、美術とは何かと問いかけて大きく評価された。

彼は、美術が成り立つのは美術という制度にあると言う。だから、そこらに転がっている一般製品でも、サインを入れて美術館に飾れば美術品となる。それには異論があるが、美術の本質を突いている。

彼の作品に、1919年米国のコレクターへのバリ土産として、ガラス製のアンプルにパリの空気を詰めて、「パリの空気50cc」と名付けた作品がある。この作品も「泉」同様現代アートの古典だが、もし、売りに出せば超高値がつくはずだ。

他に、モナリザの複製画に鉛筆で髭を落書きした「L・H・O・O・Q」がある。当時のダダ的な偶像破壊の皮肉が込められた作品だ。

いずれも、評価の高い重要な作品だが、例えば、私がアルミ薬缶にサインをしても、ゴッホのひまわりの複製画にチョウチョを落書きしても、絶対に誰も評価しない。それはデュシャンが最初にやったから歴史的に評価された訳だ。先の青い画面に縦一本の白線を描いただけの作品が史上最高値で売れたのも同じ理由だ。

ちなみに、特許では、コカコーラのビンにくびれを作って容量を多く見せたアイデアなど、現代アートを遥かに越える高値で評価されている。

人民日報から送られていた月刊誌は2年程続いて終わった。封筒に貼られた切手には高額なものが含まれていたかもしれないが、私のように、殆どの人が捨ててしまったので、希少価値が生まれたのだろう。

Ma_3

Ma_4

Ma_5

|

« 病の起源・がんは人類進化が生んだ病。それが豊かさの代償なら受け入れ克服する他ない-NHKスペシャル。13年5月20日 | トップページ | NHKスペシャル・病の起源-2「脳卒中・早すぎた進化の代償」と脳梗塞発見法。13年5月27日 »