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2013年7月 8日 (月)

あなたは未来をどこまで知りたいですか・運命の遺伝子・遺伝子検査の功罪。13年7月8日

7日のNHKスペシャルのゲストは平岳大と樹木希林。平岳大は遺伝子検査の被験者となって、米国の検査会社へ約1万円の費用で唾液を送って検査した。結果はインターネットで知らされる。彼の遺伝子からは心房細動(不整脈の一種)の発症を高める遺伝子配列が見つかった。その発症率は通常の2倍近い49.6%。ただし、遺伝子異常がなくても4人に1人は発症する。

ネット上のアルツハイマーの結果には鍵がかけてあった。アルツハイマーは遺伝子との関連性が大きく、知ったとしても治療法はない、との注意書き。しかし、結果を見ない人はいないだろう。彼も勇気を出して鍵を外して開くと、アルツハイマーのリスクは通常より少し高かった。

病気のリスクは遺伝子検査で分かったとしても、100%発症する訳ではない。その逆に、不治の病である末期がんでもエイズでも、自然治癒してしまう人が稀にいる。遺伝子検査は万能ではなく、自分の運命を知ることにはならない。

米国女優のアンジェリーナ・ジョリーは、遺伝子検査で乳がんリスクが87%だと知り、健康な乳腺を手術で除去してシリコンを入れた。その手術で乳がんリスクは5%に下ったが、リスクが0になる訳ではない。また、87%の発症リスクがあっても、放射線・発がん物質などを巧く避ければ発症リスクは低くなる。

番組は遺伝子検査の劇的な効果も伝えていた。
今年2月、東大で遺伝子研究に携わっていた間野博行教授は、白血病・肺腺がん・膵臓がん・繊維肉腫・乳がん・悪性黒色腫など6種のガンを発症させるRAC1遺伝子を発見して世界から注目された。RAC1遺伝子に異常があると、それらのガンを暴走させるタンパク質を大量に作り出す。

同じく間野教授が発見したALK遺伝子は去年から治療への応用が始まっている。登場していた進行した肺がんの40代の母親は休むことなく咳をしていた。抗がん剤も無力で、彼女は日に日に衰弱し、最愛の幼い子供たちを抱き上げる力も失くしていた。

彼女の場合、ALK遺伝子の異常により、ガンを暴走させるタンパク質が多量に作られて、肺がんは猛スピードで進行していた。彼女には、ガンを暴走させるタンパク質生成を抑制する内服薬が処方された。服用を始めて1ヶ月後、彼女の肺がんは劇的に縮小し、咳は消え、子供たちを元気に抱き上げることが出来た。この治療のおかげで、すでに日本国内だけで1000人以上のガン患者が劇的に好転している。

ゲストの樹木希林もガンに罹っているが、上記のタイプではなく、治療法はないと話していた。

米国の少年ニコラスの場合は、2歳の頃に腸の免疫異常が起きて、食物を摂取すると腸に穴があく稀な病を発症した。彼は口から何も食べられなくなって、160回もの手術を受けた。医師たちは彼を救うべく、彼の遺伝子を解析して腸の免疫異常を起こすXIAP遺伝子の異常を見つけた。

すぐに対策は取られ、彼は健康な人から骨髄移植を受けて免疫機能は正常化し、今9歳の彼は普通の子供と同じように食べて元気に遊んでいる。

上記二つは遺伝子検査の有効性を示す好例だろう。

人の遺伝子解析・ヒトゲノム計画は米国主導で始まり、12年かけた世界各国の協力で約30億の遺伝子配列を解読した。それを更に、革新的に早めたのは、日本の理化学研究所が開発した装置・次世代シーケンサーだ。その装置の登場後は、12年かかっていた解析が1日でできるようになった。

解析が簡単になった結果、遺伝子検査をして将来のリスクを予測するビジネスが世界中で始まった。着床前の卵子遺伝子検査では、病気のリスクだけでなく、様々な能力や容姿まで判定できる。その結果、人は生まれる前に選別されるようになった。

中国の遺伝子検査企業では、2千人以上の知能指数160以上の人を集め、遺伝子配列を研究している。しかし、遺伝子検査によって、知能指数が高くて健康で容姿の良い子供ばかり選別し始めたら、むしろ、社会の活力を削ぐことになりそうだ。

天才は数々の偶然の重なった結果で、単純には生まれない。優れた研究者や指導者の殆どは知能値数160以下だ。むしろ、知能値数160以上の者の殆どは、彼らから使われる側にいる。

中国では更に、子供の能力を遺伝子解析で判断する企業が生まれ、世界各国から検査依頼が来ている。その検査でスポーツ・芸術の才能が予見されて、子供の職業選別がなされていた。

スポーツ能力については遺伝子検査の効果がありそうだ。しかし、芸術となると疑問が残る。
まともな親なら子供を観察しているだけで、どんな才能があるか分かるはずだ。天才たちは天才教育を受けて生まれた訳ではない。アインシュタインも、ips細胞の山中教授も、エジソンも、ゴッホも、備えていた能力に加え、挫折や偏見などの負の要素が組み合わされて、奇跡的に生まれている。

天才は奇跡の宝石と言われているダイヤに似ている。ダイヤは、マグマに偶然潜り込んだ炭素が、特殊な環境下で高温高圧に晒された時に生まれる。それが太古に起きた大噴火によって地表に出て来たのが、ダイヤモンド鉱石のキンバーライトだ。天才は、ダイヤのように非常に稀な条件が重なって生まれるものだ。

ゴッホは経済的な行き詰まりや、失恋などの挫折によって才能が開花した。もし、彼が豊かだったら、あの作品群は生まれなかった。更に、弟のテオはゴッホの死後、遺作展開催に奔走中に病死して、ゴッホが世に出るきっかけが失われかけた。しかし、テオ夫人がその後20年に渡って奔走して、やっと世に認められた。

それらのどれが欠けてもゴッホは歴史に登場しなかった。もし、認められていなかったら、あの作品群はゴミとして地上から消えていたはずだ。

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梅雨明けの散歩コース。陽射しは強く、いよいよ猛暑が始まった。

私は鉛筆やクレヨンと紙を与えていれば、一日中描き続けていて、手のかからない子供だと、母はよく話していた。

私は1歳の誕生日前、ゴソゴソ這い始めると同時に、クレヨンで家の壁中に落書きを始めた。そこで重要なのは、私が家の壁に落書きしても、両親は好きにさせていたことだ。整理整頓好きで潔癖性の父が、私の落書きを黙って許していたことに驚く。

このケースでは、一般家庭なら叱って落書きを止めさせるか、スケッチブックを与えて、それに描くように指導しただろう。しかし、子供は限られた平面ではなく、自由奔放に、そこらの壁に描きたいものだ。一般家庭では、その段階で規制して子供の才能の芽を摘んでしまう。

子供の才能の基礎は3歳までに形成される。私の両親にその知識は皆無だったが、期せず私は良い才能教育を受けていた。美術の専門教育を受けていない私が絵描きになれたのは、そのような自由な環境があったからだと思っている。

遺伝子検査については慎重な判断が必要だ。殊に出生前の検査で、僅かな欠点のために人の選別が行われるようになったら、社会は多様性を失い、却って活力は削がれることになる。

今、社会を楽しくしている、役者や芸人さんたちも、もの作りの職人さんたちも、多様な人材の中から生まれている。生まれる前に選別されるようになったら、容姿の良い、何処を切っても同じ顔の金太郎あめのような、つまらない人間ばかりの社会になりそうだ。

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