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2013年8月18日 (日)

新富裕層 vs 国家・富をめぐる攻防・NHKスペシャル、それは利己的に世界を崩壊させる。13年8月18日

冒頭シーンは、シンガポールの高速道路を疾走するフェラーリ群だった。
それらに、虚栄へ向かってひたすら疾走する現代の病弊を感じた。

そのフェラリークラブに属している日本人は投機家のA氏一人だけだ。
メンバーはフェラーリを飛ばして、マレーシアに数百円の麺を食べに行った。その安っぽい露天のテーブルで、A氏はクラブメンバーの不動産業の中国人と金儲けの情報交換をしていた。フェラリークラブの仲間意識は強く、情報に従ってシンガポールの不動産を買えば、5年で倍になる。

シンガポールでは今、かって見たバブル期のシーンが繰り返されていた。高級ワイン・高級ブランド・超高額装身具のオンパレードのパーティーで、飛び交う会話はお金のことばかりだ。それは上質な文化の香りにはほど遠く、浅くて寂しい虚栄の光景だった。

文化や福祉などの社会事業に還元する為に稼ぐのは理解できる。しかし、新富裕層の多くはお金を稼ぎ独占することのみが人生の目標だ。彼らは豊かな人生を数十回繰り返せるほどの資産を得ても、永遠に満足しない。糖尿病になると満腹中枢が壊れ、血糖値が高くなっても甘いものを際限なく食べ続けたくなる。同様に彼らはお金の満腹中枢が壊れ、お金への飢餓感が永遠に拡大し続けているように見えた。

30代のA氏は、ディーリングルームの四つのディスプレーを終日眺める生活をしている。彼が語るのはお金だけで若者らしい夢は語られず、その優秀な知能を社会に役立てようと考えていない。
彼は20代の頃、投資会社で億以上の年収を得て、その富みを元手に、もっと大きな利益をとシンガポールに移住した。日本では株で1億稼げば1千万強が課税される。しかし、シンガポールでは金融商品の売却益に対する課税はない。

世界中の新富裕層は経済のグローバル化や金融の高度化により短期間で富を築いた。その新富裕層の所得や金融取引にかかる税金を安くすることで、自国に移住させようとする国は多い。

その代表のシンガポールは日本を含む世界の新富裕層に人気がある。
シンガポールには日本人コミュニティーがあり、その気になれば日本語だけで生活できる。

彼らがなぜ、自分を育て資産を生むチャンスを与えてくれたた祖国を捨てるのか理解できない。知人にも日本を捨てた者がいる。彼は郊外の殺風景な新興住宅地の両親共稼ぎの裕福な家庭で育った。食べ物はインスタント食品ばかりで、日本の繊細な食文化や美しさをまったく知らずに育った。だから、彼は祖国を捨てることができたと、私は思っている。

日本なら1億の所得に半分近くが税金として取られるが、シンガポールなら日本の課税の4割以下だ。日本からの移住は年間1000人近い。日本には米国に次いで100万ドル以上の投資資産がある者がいて、彼らの海外移住を助けるセミナーが頻繁に開催されている。

本来、投資や金融は起業を助け、商品価格の安定のために生まれた。しかし、多くの新富裕層がやっているのは金儲けゲームで、ネジ1本米1粒、生み出さない。彼らは社会の富みを利己的に吸い上げ還元しようとしない奇怪なモンスターだ。彼らを放置したら確実に未来は滅びる。

彼らを最初に作り出したのは80年代米国のレーガン政権だ。日本などの追い上げで危機に陥った製造業の代わりになるものとして、IT・金融ビジネスへの規制緩和と大型減税を実現して急拡大させた。

レーガン政策は成功したが大きな雇用は生まれず、所得格差が開き貧困層が拡大した。そして、米国の富みを吸い上げた新富裕層は優遇措置のあるプエルトリコやシンガポールなどに移住し、彼らの利益の大部分は米国に還元されなかった。

「どうしてこんなに働いているのに2割も税金を払って、働かない貧乏人を助けなければならないのだ」
それは米国の新富裕層の不満だ。
しかし、そこには大きな誤認がある。彼の富みは独力で稼いだものではなく、米国や他国民の働きの上前をはねて得られたものだ。
更に、リーマンショックで損失した金融マンたちは国税で救われたのに、復活した彼らの多くは、新たに得た富みを国外へ持ち去る背信行為をした。

日本の新富裕層にも、富みは独力で稼いだとの強烈な思いがある。失敗するリスクを取って、人の何倍も働いて積み上げた富みなのだから、1円たりと国へ支払いたくないと彼らは思っている。

はたして本当に彼らは独力で資産を築いたのだろうか。先進国で育てば、知らない間に国家のシステムで教育を受け、支えられて成長し、国家の豊かさを元手に資産を生み出している。
そのことを一番理解しているのは、最貧国から米国や日本などへ出稼ぎに来て成功した人たちだ。彼らは、チャンスを与えてくれたその国に感謝している。なぜなら、どんなに能力があっても貧しい国にはチャンスがないことを熟知しているからだ。

移住する者たちに対して、祖国に留まり税金を払っている新富裕層にも不公平感がある。それに応えるべく、海外移住の新富裕層にも課税できるように、世界各国の税務当局は検討している。
もし、このまま納税忌避を放置したら社会は崩壊する。

国外移住による日本の税収の減益は390億だが、実態はそれより遥かに多い。それを是正するためには税金を正しく使って、節税理由を封じなければならない。補足すると、節税意識の強い新富裕層は日本にいても収入ほどに税金は払っていない。日本の税収の大部分を支えているのは、日本に留まっている膨大な中間所得層たちだ。


しかし、優遇措置や豊富な出資家を求めて、起業のためにシンガポールへ向かう若者たちは別次元で考えるべきだ。日本にはベンチャーを潰す気風があり、脱出する人たちには合理的な理由がある。シンガポールでできることなら日本でもできるはずだ。有効な手を打てない日本政府の閉鎖性には苛立ちを感じる。

シンガポールの住人は裕福な者たちだけではない。一般人には不動産高騰で年々住みにくくなっている。その状況は日本のバブル期に酷似している。当時の日本の、投機に参加できない一般人は閉塞感に包まれていた。

関連ページへリンク。
NHK・沸騰都市シンガポールは魅力がない国だ。09年2月15日


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近所の児童プール跡。この辺りは都内でも突出して子供が多い地域だが、このプールは10年以上前に閉鎖され、廃墟に近づいている。写真はコンクリート床の割れ目に生えたセイヨウヤマゴボウ。

アートを支えているのは富裕層だが、新富裕層が買う作品は将来値上がりしそうな投資価値がある有名作家の作品だけだ。彼らの多くは、買った作品を美術倉庫に保管しておき値上がりを待つ。芸術や文化を育て来た伝統的富裕層とはまったく違う人種だ。

私はバブルの頃に一瞬だけ番組にあったような豊かさを経験した。その当時、一晩で使った金で、今なら1ヶ月楽に生活できた。今、当時を思い返すと、恥ずかしさで一杯になる。当時はただ虚しいだけで生きている満足感は皆無だった。当時と比べ、今はその日暮らしだが、生きている実感は強烈にある。ちなみに、世界の調査結果では、年収600万辺りの人が生活への満足感が一番大きい。

新富裕層の虚飾の生活と対比するように、南米ボリビア西部の村で、先住民アイマラ族の123歳の男性が見つかった。注目したのは、至れり尽くせりに飼育された日本の長寿とは正反対の、医療も栄養も環境も格段に厳しい貧しさの中で、彼は力強く123年間生きて来たことだ。今も日常生活をこなしている老人の日に焼けた表情に、大地に生きて来た強さを突きつけられた。

ちなみに、現在公認されている世界最高齢者は大阪市に住む115歳の女性。最高齢記録は1997年に122歳164日で死去したフランス人女性。上記が事実なら世界最高齢記録を更新することになる。

1940年以前のボリビアには戸籍がないが、神父が書いた洗礼証明書に1890年7月16日生まれと記載されていた。彼はティティカカ湖に近い標高4千メートル地帯の寒村に居住し、3人の子どものうち2人と妻は既に死亡し、40人の孫と19人のひ孫がいる。彼の長寿の秘訣は歩くことと大麦中心の粗食にある。

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