1日刻みの幸せと、日本のもの作りの強さはオノマトペにあった。13年9月15日
今朝は台風余波の激しい雨音。窓から吹き込む冷たい風で早く目覚めた。もう、扇風機を使う日はないかもしれない。
昨日はどんよりとした蒸し暑さだった。
散歩しているとタンポポのような穂綿が無数に舞っていた。手を出すと一つに絡んだ穂綿がふわりと掌に乗った。そして、すぐにふわりと飛んで行った。
母は写真の板張りのスロープから車椅子に伝わる柔らかな振動が好きだった。
涼しい木陰で休んでスロープを見上げていると、そこに10年前の母の車椅子を押す私を感じた。私と母は笑顔で今の私を見下ろしていた。あの頃は睡眠不足が続く辛い生活だったが、今の私より笑顔は多かった。
最近、エレベータを待ちながら遠いガラス工場の煙突の煙りを眺めている時、自然公園の椎の古木の陰で休んでいる時、そこに若い私と母を感じる。
その頃はよく将来の自分を考えた。10年後は母は確実に死んで、私は老いて生活に行き詰まっている、と想っていた。予測は当っていたが、この厳しい絵描きの世界で耐え抜いて来たことには我ながら驚く。
その頃の私は、母を在宅で安らかに看取ることに全力を尽くしていた。私の人生予測の殆どは外れたが、この住まいで母を看取ることは寸分違わず予想通りになった。
その頃と今の大きな違いは、10年後の自分を考えなくなったことだ。私の歳になれば、先のことを考える必要はない。裕福な知人は老後の夫婦旅行、民間の高級介護施設への入所から老人病院での死まで先のことを綿密に計画している。しかし、彼は今日一日を楽しんでいるようには見えない。
老いてから大切なのは明日ではなく今日1日の幸せだ。母が70歳を過ぎた頃「明日のことより、今日一日幸せならそれでいい。」とよく口にしていた。最近、その意味が本当に理解できるようになった。
そう思い始めたきっかけは、8月初めに激しい目眩と吐き気に襲われてからだ。激しい吐き気なら船酔いなどで何度も経験している。それは必ず治まる苦痛で、絶望的になることはなかった。しかし、8月に経験したのは病的な激しい目眩と吐き気で、食事を作ったり買い物へ出かけることはできず、対処法を考える思考力も奪われた。
あの時ほど、普通に自分の足で歩き食事とることができる素晴らしさに気づかされたことはない。以来、小さな坂を休み休み疲れた顔で上って行く老人に出会うと、まだ、一気に坂を上って行けることに幸せを感じる。
明日のことは分からない生活をしているが、目覚めた時、今日は普通に過ごすことができると思うと幸せ感に満たされる。明日のこと、数ヶ月先のこと、10年先のことばかり考えていては、大切な今日の幸せを失い寂しい老後になってしまう。
秋の花、水引が至る所満開だった。
3時草の花は散歩の行きがけはつぼんでいたのに、帰りの3時過ぎには律儀に開いていた。
このような植物の撮影はコンパクトカメラの自動フォーカスではピントが合わずピンぼけに写る。
適当にピントを合わせて、花にピントが合うようにカメラを引いたり近づけたりしてシャッターを押している。
それでも、なかなかピントは合わない。
イプシロン発射が成功して嬉しい。中継はネットで見ていた。船舶が危険水域に入りかけて、発射が15分遅れ、やきもきしたが、2時に轟音をたてて無事に成功し不安が吹き飛んだ。
今回の世界初の完全コンピューター制御は快挙だ。更にコスト削減が進めば、国際競争力が生まれそうだ。
イプシロン打ち上げにはパソコン2台と数人の管制員だけで可能だ。イプシロンは世界初の人工知能「ROSE」を搭載し、打ち上げ前に機体を自動的に点検する機能も備えている。
日本のもの作りの強さにオノマトペ-擬音語・擬態語-があると言う。
製品を科学的に評価しようとすると、膨大な項目と数値が必要になる。しかし、オノマトペを使うと一言で表現できて、生産現場への伝達も簡略化できる。
たとえば、肌触りや食感に使われている「もちもち」を、数値と文にまとめると膨大な量になる。例えば・・・新鮮できめ細かく弾力があり、触っていると幸せな気分になるような白肌のもの、などの長文に粘りや弾力の数値を加えたものだ。しかし、「もちもち」なら極めて短く的確な表現で、伝達も容易だ。
脳科学で「もちもち」を調べると、脳の広範囲を総合的に使って複雑な思考を一瞬で行い、しかも、一般的な文脈で考えるより遥かに正確に表現していると言う。
自動車内装メーカーがの金属の肌合いを持つプラスチック素材を開発中、的確な技術評価が得られず、開発が行き詰まったことがあった。そこでメーカーは「つるつる」とか「ピカピカ」のオノマトペを使った技術評価に変えてみた。
具体的には、本物の金属素材と、同じ肌合いのプラスチック素材を伏せてオノマトペで比較評価をしてもらうと、プラスチック素材は「つるつる」が多く、金属素材は「ガチガチ」が多かった。そこで、ガチガチ感のあるプラスチック素材の開発に集中し、目的の素材開発に成功した。
医療の現場でも、痛みや不快さを表現するのにオノマトペはとても有効だ。
心の病では、患者がその辛さを医学用語で説明するのは大変に難しい。しかし、頭の中が「イリイリ」「モヤモヤする」「べちょべちょする」などとオノマトペで表現すると、医師にリアルに伝わる。患者側も、心をオノマトペで正確に表現できたことで、苦しみを客観視できて苦痛が軽くなる利点が生まれた。
海外にもオノマトペはあるが、日本語ではひときわ多彩に使われている。それはマンガの興隆とも関係があるかもしれない。「ギャフン」や「シラーッ」など、日本人にはすぐに理解できる言葉だが、英訳はとても難しい。
昔から使われている「おずおず」と「おどおど」の微妙な違いは、日本人なら誰でも正確に理解できる。しかし、その違いを英語で説明するのは殆ど不可能だ。日本の物作り現場で、オノマトペは繊細な仕上げなどに役立ち、日本のもの作りのパワーの源泉になっているようだ。
もう一つの面白い産業ニュースは精密部品や金型の生産工場の地下化だ。
精密部品製造では温度変化が大敵で厳しい室温調整が必要になる。その点、地下は外気温の影響を受けにくく、室温調整がしやすい。たとえば地下10メートルの環境は20度前後に保たれ、地上工場に比べ、消費電力ははるかに少なくて済む。
これから問題になる大震災でも、地下は揺れが少なく、地震国でエネルギ不安の大きな日本ならではの発想の転換だ。
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