NHK神の数式・古代ギリシア人が神としてあがめた完全数496は現代物理学のキーワードでもあった。13年9月24日
土日連夜のNHKスペシャル、神の数式1と2は良質のドラマのように面白かった。
神の数式1「この世は何からできているのか天才たちの苦闘」の冒頭は、未発見の最後の素粒子・ヒッグス粒子の巨大加速器での劇的な発見シーンだった。
そして、宇宙創造への役割を担っていたヒッグス粒子についての解説が始まった。
宇宙を解明する数式を、アインシュタイン・日本人ノーベル賞学者・湯川秀樹、朝永振一郎、南部陽一郎などの天才物理学者たちが紙と鉛筆だけで導き出したことに驚く。新しい数式は、既成の概念で動いているコンピューターでは導き出せない。だから今も、新しい数式は天才たちが紙と鉛筆だけで導き出している。
戦中戦後の貧しい日本から物理学の天才が輩出したのは、才能と紙と鉛筆だけでできる費用のかからない研究だからと言われている。湯川秀樹も朝永振一郎も戦時中の海外からの情報が断たれた厳しい環境の中で世界トップの理論を構築し、ノーベル物理学賞を受賞した。
原子を構成するものは電子と2種類のクオークとニュートリノだ。しかし、相対性理論と素粒子の数式で計算して行くと、それぞれの質量が0になってしまう矛盾が生じる。それを解決する方法として、南部陽一郎は「自発的対称性の破れ」を考えた。
番組ではそれを、尖った芯で垂直に立っている鉛筆は必ず倒れ、倒れる時に重さが生じると説明していた。これは、重力の生まれる仕組みを身近な鉛筆で視覚的に分かりやすく例えたもので、鉛筆が倒れる時の物理作用と混同すべきではない。我々は重さは絶対的にそれぞれに備わったものと考えてしまうが、原子物理学での重さは、走っている時感じる風圧みたいなもののようだ。そのような南部の考えは、ワインバーグによって補強され、ヒッグス博士が提起したヒッグス粒子の存在を導き出す重要なきっかけになった。
「自発的対称性の破れ」を起こすものとしてワインバーグもヒッグス粒子を肯定したが、当初、ワインバーグとヒッグス粒子は学会から相手にされなかった。しかし、2012年に欧州原子核研究機構の巨大加速器によってヒッグス粒子が劇的に確認され、ヒッグス博士は2013年度ノーベル物理学賞を受賞した。
そのように記すと、ヒッグス粒子は極めて稀なものに思えるが、実際は人の体にも地球にも真空の宇宙空間にも、そこら中にびっしりと満ちている。例えば、電子などがヒッグス粒子で満たされた空間を移動する時の抵抗が重さになると考えられている。ただし、光子だけは抵抗を受けないので、質量ゼロのまま光速で飛び回っている。
ヒッグス粒子は宇宙の始まりで重要な働きをした。生まれたての宇宙では、質量ゼロの素粒子がバラバラに光速で動き回っていたが、ヒッグス粒子による抵抗によって質量を生じ、互いに引かれ集まって原子が生まれ、今の星々へ成長した。
どこにでも、びっしり詰まっているヒッグス粒子を弾き出して検出するには、強力なエネルギーで陽子同士を衝突させることが必要だった。それで、巨大加速器の完成まで検出はできなかった。ちなみに、その時威力を発揮した高性能の検出機器は日本の浜松ホトニクス社製である。
ヒッグス粒子は膨大な実験を繰り返し、奇跡的に証明された。しかし、それで終わったわけではなく、その先にダークマターやダークエネルギーなど説明が難しい問題が山積している。今回のヒッグス粒子発見は、新たな素粒子物理学のほんの序曲に過ぎない。
神の数式2「宇宙はなぜ生まれたのか最後の難問に挑む天才たち」は、神の数式1以上にドラマチックだった。
アインシュタインの相対性理論は、数式の考察の過程で0次元の点の大きさしかないブラックホールの中心や宇宙の始まりには適応しないと分った。
その問題点に気づき、解決の糸口を掴みかけた一人がロシアの若い天才ブロンスタインだった。彼は貧しい家庭に生まれ、独学で物理を勉強した。彼は19歳で当時の殆どの物理学者が理解していなかった相対性理論と素粒子の数式を完璧に理解した。そして、二つを合わせて計算すると矛盾が生じることに気づいた。
その解決の糸口を掴みかけた31歳の時、突然、ソヴィエトの秘密警察に逮捕された。そして彼は銃殺され、遺体は森の奥に密かに埋められた。その真相は今も謎だが、神の数式の解明はソヴエトに綻びを生じさせる危険思想に繋がると、スターリンに邪推されたからと言われている。物理学の天才はアインシュタインを含め独学が多い。それは教えてくれる教師のいない未知の世界を行く学問だからかもしれない。
相対性理論と素粒子の数式の矛盾の解決へは、長い年月、多くの学者によって続けられ、その中の優秀な物理学者シャークは自殺してしまった。しかし、困難な解明はシュワルツとグリーンによって粘り強く続けられた。
ある日、彼らが相対性理論と素粒子の数式を結びつけようと計算していると、重要な計算結果に突然、完全数496が現れた。完全数496は古代ギリシア人が天地創造の神の数字としてあがめていた神秘的な数字だ。この496が計算結果に現れたその時、実際に雷鳴が響き、そこに神の存在を実感したと彼らは話していた。--完全数とはその数自身を除く約数の和がその数自身と等しい自然数のこと。例えば完全数6は、約数の和は1+2+3=6だから完全数となる。
その完全数496を数式に当てはめてみると相対性理論から素粒子の数式まで矛盾なく氷解して答えが現れ、超弦理論として神の数式に近づいた。
超弦理論とは物理学の仮説の1つ。 物質の基本を小さな0次元の点粒子ではなく、超対称性を持つひものような一次元の弦と想定したもの。別名、超ひも理論と呼ばれている。もし、最小の点粒子として計算すると、有限な質量が無限大になる矛盾が生じる。しかし、ヒモ状だと仮定すると、この矛盾は解決する。
これ以上分割できない最小の物質、素粒子は多く発見されている。しかし、一つだけだから最小なのであって、複数はありえない。そこで、最小のものはヒモ状ではないかと考えられた。形状は短いヒモと輪ゴムみたいに両端が繋がったヒモだ。輪ゴムみたいな方が重力子と考えられている。ヒモは弦楽器の弦のように振動していて、その波形が素粒子の種類を決めているようだ。
この理論形成にも南部陽一郎は重要な役割を果たしている。この仮説の解明には、多くの天才たちのひらめきや共同作業が必要で、その努力は終わることなく続きそうだ。
なぜ、古代ギリシア人は完全数496を宇宙創造の数と直感したのか。先端物理学が、古代ギリシアの神々と繋がることに神の意志のような深い真理を感じる。湯川秀樹が仏教に帰依していたように、なぜか物理学者の多くが、研究を極めるにつれ宗教に帰依する。完全数496が象徴するように、宗教や哲学と物理学の間には人の根源に関わる深い関係があるのかもしれない。
天才たちが導き出した理論はどれも、常人の理解を遥かに超越している。
50年前、テルアビブ大の天才物理学者ヤキール・アハラノフと量子力学の祖ボームが共に予言した「アハラノフ・ボーム効果」など、とてつもなく不思議な世界だ。それによると、時間は遠い未来の宇宙の終末から現在へ逆に流れて、今の宇宙を形作っているらしい。過去から未来へだけでなく、未来から現代へも時間が流れているとは、実にロマンチックだ。
現代物理学が神の数式を見つけた、と拍手したのは、我々凡人の早とちりかもしれない。すでに天才物理学者たちは、その先に更に広大な未知の世界を予感していたはずだ。物理学の天才たちが宗教的になるのは、人の小ささと限界を直感しているからかもしれない。
驚くのは、宇宙の誕生のビッグバンの始まりは原子より小さな極小の点であったことだ。想像を絶する広大な宇宙が一点から始まるとは、いくら考えても理解し難い。
それは、我々が認識できる4次元の思考で考えているから1点に見えるだけのことで、宇宙は10次元に時間を加えた11次元の世界だと説明されている。次元が無数にあること以上に驚くのは、マルチバース=多元宇宙論の概念では、我々が属しているような宇宙が少なくとも10の500乗個は生まれたと想定されていることだ。それら膨大な宇宙の殆どはダークエネルギーが大きすぎて、ビックバン直後、急速に膨張して星は生まれなかった。
反対にダークエネルギーがほとんどなく引力を持つダークマターが多すぎると、宇宙は収縮しブラックホールになった。
我々が属する宇宙は膨張エネルギーのダークエネルギーが程よく少なくてゆっくりと膨張し、物質を集めるダークマターが程よくあったので星が生まれた。その貴重な我々の宇宙もやがて全ての星が燃え尽きて冷たく凍りつくか、あるいは、粉々に素粒子までに分解されてしまう。だとすると我々の属する今の宇宙は、広大無辺な大宇宙から見れば砂粒ほどに小さく貴重な存在となる。
確かなことは、大宇宙は人の思惑のために存在しているのではない。
人としては宇宙は再生を繰り返す、永遠な存在であってほしい。
しかし、宇宙は人の痕跡を完璧に消し去り、暗黒の闇のまま永遠に眠り続けるかもしれない。
いずれにせよ、我々はとてつもなく貴重な一瞬に生きているわけだ。
日本生命倫理学会冊子、2013年の表紙。
パンと水とリンゴは命を、
虹と空に浮かぶ卵は智慧を象徴するものとして描いた。
宇宙から見れば限りなく0に近い存在の人が壮大な宇宙を考える。
そして、宇宙を認識している自分が消えれば宇宙も消える。
この矛盾を解決する方法として、人は神を想定したのかもしれない。
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爽やかな風が吹き、路傍で立ち話している老人たちに、田舎の光景のようなのどかさを感じた。
昨日は友人から誘われて仕事を休んだ。池袋の待ち合わせ場所に早く着いたので、目の前を過ぎる女の子たちを眺めていた。綺麗な子、そうでもないけど優しそうな子、つき合う男の子を困らせそうな子、様々だが、どの子も若くて可愛い。見とれている内に、約束時間までの30分はあっと言う間に過ぎてしまった。
友人と場末の中華料理屋に入った。私は家で食べて来たので、前菜を肴に台湾ビールを飲んだ。最近、家に籠って絵ばかり描いているので、人と話すのは久しぶりだ。会話は仕事のことから日中・日韓問題において、中国・韓国は日本人の気質を見誤っていると言った話しになった。
長く反日政策を続けている中韓両国には、強引な外交姿勢しか出せないのかもしれない。今の両国の外交政策は、結果的に日本国内のリベラル勢力を弱体化させ、出口が見えない外交へ硬直化させてしまっている。
殊に日中関係では尖閣問題をきっかけに、従来の政冷経熱が政冷経冷へ悪化してしまった。反日はこれからも長く続くだろうが、大衆は移り気だ。最近の中国からは、時折、反日疲れが垣間見える。
その一つがTBSドラマ「半沢直樹」の中国での人気かもしれない。当然、反日国家で放映されるはずはなく、字幕をつけた海賊版が、DVD販売店で補充が間に合わないほど売れている。決め台詞の「倍返しだ!」は「加倍奉還」と訳され、すでに定着しているようだ。
ネット上では「日本人の粘り強い精神力を見た」との称賛もあり、有力経済紙は「日本企業の仕事のやり方や、日本人と企業の密接なつながりが描かれている」と紹介していると言う。この辺りに関係修復のヒントがあるのかもしれない。
紫式部
紫式部の白い実。こちらも好きだ。
帰宅してからも仕事は止め、iTuneからディズニー映画2013年公開「オズ はじまりの戦い」を500円で借りた。
新作映画を見るのは久しぶりで本当に楽しい。
1939年のカラー映画「オズの魔法使い」は小学生の頃に隣町の油津で観た。
テーマ曲の「虹の彼方に」は今も好きな曲だ。
「オズ はじまりの戦い」のストーリーはそれとは違い、大人の恋をテーマにしたファンタジーだった。
南の魔女グリンダが実に可愛い。誰かに似ていると思って考えていたら、グラマーにした中川翔子の笑顔に似ていた。
悪役の東の魔女エヴァノラ と西の魔女セオドラも、陶器の女の子も、とても可愛かった。やはり、ファンタジーの主役は可愛い女の子でないと楽しくない。
「オズ はじまりの戦い」の光景に登場する宝石の花を見ていて、日本で最初に公開されたカラー映画、ソヴィエトの「石の花」を想い出した。これは前記の「オズの魔法使い」の前に母に連れられて油津の映画館で観た。ストーリーは覚えていないが、宝石の花を夢のように覚えている。
「オズ はじまりの戦い」を観ているとディズニーランドへ行ったような楽しい気分になった。一人で行ってしまうほどの私のディズニーランド好きは、子供の頃に多くのファンタジーを観て醸成されたようだ。
近況・・・絵本「おじいちゃんのバス停」を完成させて、Amazon Kindleの電子図書 にてアップした。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0B79LKXVF
Kindle Unlimited 会員は0円で購読できる。
上記ページへのリンクは常時左サイドに表示。画像をクリックすればKindleへ飛ぶ。
絵本の内容・・おじいちゃんのバス停・篠崎正喜・絵と文。老人と孫のファンタジックな交流を描いた絵本。
おじいちゃんは死別した妻と暮らした家に帰ろうとバス停へ出かけた。しかし、家は取り壊され、バス路線も廃止されていた。この物語は、20年前に聞いた知人の父親の実話を基にしている。対象は全年代、子供から老人まで特定しない。物語を発想した時、50代の私には77歳の父親の心情を描けなかった。今、彼と同じ77歳。ようやく老いを描写できるようになった。
概要・・初めての夏休みを迎えた小学一年生と、軽度の認知症が始まったおじいちゃんとの間に起きた不思議な出来事。どんなに大切なものでも、いつかは終りをむかえる。終わりは新たな始まりでもある。おじいちゃんと山の動物たちとの、ほのぼのとした交流によって「終わること」「死ぬこと」の意味を少年は学んだ。
描き始めた20年前に母の介護を始めた・・このブログを書く8年前だ。絵は彩色していたが、介護の合間に描くには画材の支度と後片付けに時間を取られた。それで途中から、鉛筆画に変えた。鉛筆画なら、介護の合間に気楽に描けた。さらに、水墨画に通じる味わいもあり、意外にもカラーページより読者に評価されている。それはモノクローム表示端末で正確に表現される利点がある。
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