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2013年11月16日 (土)

老コレクターの悩みと、お金なしで酔生夢死に暮らすヤップの男たち。13年11月16日

先日、古い知人に会った。彼は私より二つ年下の芸大の油絵出身で、会えばいつも絵の情報交換をしている。

彼の知り合いに芸大生の頃から親しくしている老コレクターがいる。親族はいないその人は、膨大なコレクションを相続してくれないかと彼に相談した。資産家である彼はコレクションの資産価値には興味がない。彼は老コレクターに相続するのは気が重いから、売却して有意義に使ったらと薦めた。しかし、老コレクターは愛着があるから嫌だと答えた。

老コレクターが処分しない理由は他にもあった。例えば、2千万で買った日本画の大家の作品でも、売却しようとすると10分の1にもならない。今、人気が落ちている作家だと買った値の100分の1でも売れないようだ。

そのように日本の有名画家の資産価値は殆どないに等しい。対して江戸時代までの北斎を始めとする浮世絵作家なら、国際価格がつくので安定した高値で売れる。明治以降の具象作家で国際価格がつくのはレオナール藤田くらいだと彼は話していた。

そのあとテレビ番組の「何でも鑑定団」の話になった。番組中で素人が出品した絵画に鑑定家が高額な値をつけるのは絵市場維持の為のようだ。鑑定家が高値をつけたあと「素晴らしい作品です。売らずに家の宝として大切にされてはいかがですか」と決まって言う。それは、前記のような二束三文の値しかつかないことを熟知しているからだった。

海外で認められなければ絵の資産価値はない。国際的に認められているのは、モダンアートなら、村上隆・奈良美智・草間弥生などいるが、現代日本画や具象の洋画では全滅状態だ。むしろ、ネット取引が盛んなアニメ原画や、昔から海外評価の高い工芸品の方が資産価値は確かだ。

その点、私の作品は元々安くて資産価値がないので、このような話とは無縁だ。私の作品のコレクターは、会社に飾ると仕事場の雰囲気が良くなり、来客の印象が良くなるから買うと話していた。私の絵は長く飾れば減価償却するので資産価値は必要ないようだ。

最後に、彼から生活はどうしていると聞かれたので、相変わらず自転車操業で大変だと答えた。それならペットの肖像画はどうかと彼は薦めた。彼の絵描き仲間にペットショップや動物病院経由でA4サイズほどの肖像を5万ほどで受注して描いている人がいるようだ。写真を見ながら描き写すだけだから簡単で、私なら月に10枚はこなせるだろうと彼は話した。

しかし、俗世に疎い金持ちの彼から出た話しでは、既に多く画家が参入して過当競争が起きているはずだ。
「今までペットの絵を5回ほど受注したが、一応ファインアートのつもりで情熱を注いでいるので、そのような絵は難しい」と答えた

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以前受注したゴールデンレトリバーの肖像画。「ラッキー」
大型犬としては長命で、18歳まで生きた。

先日、主婦に絵の褒め方を話した。彼女は私の絵を見て印象派のスーラの絵に似ている、と褒めた。私の絵の点描部分だけを捉えてそう言った訳で悪意はない。それは女優の誰それに似ていると言って褒める感覚に近い。

「絵描きはオリジナリティを大切にするので、似ていると言われて喜ぶ者はいません。綺麗ですねもだめで、綺麗なだけで心がないと取られかねません。単純に、いいですね、とか、気に入らなければ黙っているのが一番です」
そんなことを話すと「絵描きさんから聞く機会はありませんでしたので、勉強になりました」と感心していた。

昔ならそんな褒められ方をしたら激怒した。しかし今は、歳を重ねとても温厚になった。
30代の頃、アートフェスティバルへ行った時、ブースにいた年上の作家が自分たちの企画のパンフレットを渡した。掲載作品が嫌いなタイプだったので「嫌いだからいらない」と返した。「嫌いとは何だ」その作家は激怒してくってかかった。「嫌いだから嫌いと言って何が悪い」私は言い返した。
30年以上過ぎても覚えているのは後悔しているからだ。今思うと随分失礼な言い方をしてしまった。長い介護生活で我慢強くなって、今は外見も中身も極めて温厚になっている。

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昨日は午後まで小雨の寒い天候だった。

先日、国産大手メーカーの掃除機が壊れた。3年前に買ってから、大掃除専用に使っているだけで、いつもは押し入れにしまってある。だから、使った回数は30回ほどで新品同様だ。日常の掃除は、ほうきとちり取りと充電式の軽いコードレス掃除機が断然使いやすい。

壊れた国産掃除機は静音設計だったので買った。その時、売り場で試した少し値のはるダイソンの方が性能は良かったが、音が大き過ぎるので止めた。

先日、その掃除機のゴミ取り出し口の蓋を開いたら、蝶番にロックがかかったようにびくとも動かなくなった。昔なら絶対に壊れない箇所だ。最初からの設計ミスか部品の不良だ。ジョイント中に電気配線が入っているので、自分では修理できない。ぼやきながら蓋の開いた掃除機を抱えて、池袋のヤマダ電機の修理部へ持ち込んだ。

後日、連絡があった。プラスチック製の蝶番部分にヒビが入っていてそこに埃が詰まり動かなくなった。蓋ごと取り替えるから4200円かかると言う。想定内の額だが釈然としない。

その掃除機は4代目だが、それまでの3機種はどれも壊れて廃棄した訳ではない。どれも10年ほど使って汚れ、古くなったので破棄した。買った当初から力の加わる蝶番部分が華奢なプラスチックなのが気になっていた。使わない掃除機なので、メーカーに送って、じっくり時間をかけて原因究明をしてくれと頼んでおいた。


売り上げ日本一のヤマダ電機が23億の初赤字になった。原因はショールーミングだ。これは店頭で商品を確かめて、最安のネット通販する購買行動のことだ。これでは店頭販売の売り上げが落ちるのは当然だ。ショールーミングでは、メーカーと型番が分かれば、どこでも同じ製品が購入できる。規格品ではない野菜、鮮魚、工芸品では難しいが、これから工業製品の総てで進行しそうな購買行動だ。

これが定着したら、一般小売店だけでなく、量販店も成り立たなくなる。最終的に店頭販売がなくなれば、量販店は通販に特化することで生き残るだろう。しかし、販売員の大量失業は避けられず、製品確認や説明を求められなくなった消費者も困ることになる。

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雨は3時過ぎには止んで、美しい夕日になった。

インフルエンザの予防接種をした。65歳以上は都の補助があり2200円の負担。他に睡眠導入剤の処方を頼んだので医療費は4000円以上かかった。

そのように冬は総てに出費が多い。暖房だけでなく、明かり、風呂などの光熱費も多い。一番気が重いのは、年末年始の出費の多さだ。冬に備えなければならない北国で貯蓄や生産システムが発達したのは理解できる。

その点南国は気楽だ。先日の地球イチバン「世界で一番 大きなお金・ヤップ島」に出て来る島民はその日に食べるだけ魚を釣り、畑でヤムイモを掘り、のんびり暮らしていた。

ヤップ島は世界一大きなお金「石貨」で知られている。大きなものは直径4メートル。石貨の価値はその石が歩んで来た歴史で決まる。例えば、争いで死んだ人の命などお金で換算できないものへのつぐない。あるいは和解の証として使われた。その考えは貨幣経済にどっぷりと漬かった我々には哲学的過ぎて理解しにくい。体感で理解している現地の人も、あまりにも感覚的過ぎて説明に苦慮していた。だからお金と言うより、もっと精神的なものだった。

石貨の素材石灰岩は500キロ離れたパラオから運ばれたものだ。鉄器が入ってくるまではそれをシャコガイで作ったノミでコツコツ何年も削り続けて作った。それで大変貴重なものとされた。

ヤップは豊な島で、お金なしでも暮らして行ける。それでも教育にお金が必要なので、特産のビンロウジの実を輸出して現金を得ている。ビンロウジはヤシ科で、その実をキンマの葉と石灰と一緒に噛むと軽い酩酊感が得られる。ヤップの男たちはビンロウジを噛んで赤く口内を染めながらのんびりと、酔生夢死の生活をしていた。いつも生活に追い回されている身には、実に羨ましい島だった。

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